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岩田剛典『崖っぷちホテル!』“いい話ドラマ”に生じた綻びと「メタ視点」の功罪

日本テレビ系ドラマ『崖っぷちホテル!』公式サイトより

 岩ちゃんこと岩田剛典主演の毎度ほっこりなシチュエーションコメディ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も第6話。視聴率は7.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、それなりです。もっとも、2015年4月から始まった日曜22時30分の「日曜ドラマ」枠で全話平均2ケタに届いたのは、同7月期で放送された『デスノート』だけなので、この『崖っぷちホテル!』も、特別にコケてるというわけではありません。でもまあ、低空飛行ではあるよね。寂しいね。

 さて、このドラマの特徴は、とにかく「いい話」であること。平和で健全で、性根の腐った奴が一人も出てこない、気持ちのいい作品です。そういうところが安心ですし、また物足りないところでもあります。

 そんな安心ドラマに、ちょっとだけ綻びが生じ始めた今回。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

■今回はいよいよ時貞さんを洗脳します

 経営が傾いたホテル「グランデ・インヴルサ」の副支配人に就任し、総支配人の佐那(戸田恵梨香)とともに再生を目指している宇海くん(岩田)。これまで、従業員1人ひとりに対して丁寧にエピソードを重ねながら意識改革を促し、ホテルを「いい方向」に導いてきました。

 そんなこんなで、いまだに問題分子っぽい雰囲気を出しているのは元副支配人で、宇海くんによって宿泊部主任に降格させられた時貞さん(渡辺いっけい)だけに。この時貞さんさえ“転んで”しまえば、宇海くんの洗脳計画……もとい、意識改革計画は完了となります。

 今回は、そんな時貞さんが「暴力事件を起こしていた」という告発状がホテルに届くところから。

 この告発状と時を同じくして、なんだか言葉使いの荒い中年男性・後藤さん(でんでん)が、娘を連れてホテルにやってきます。

「だから時貞だよ時貞! 時貞を出せ!」
「いるじゃねえか、約束通り来てやったぞ!」

 ロビーで大声を出す後藤さんのおでこには、大きな絆創膏。この告発状と絆創膏により、「どうやら時貞さんは後藤さんに暴力を振るったようだ」「告発状は後藤さんが送ったもののようだ」という空気がホテルに広がります。総支配人・佐那が直接、時貞さんを問いただすと否定こそするものの、どこか煮え切らない様子です。

 聞けば後藤さんは地元の自治会長で、かつてはこのホテルの常連だったそうです。久しぶりに来て、「泊めろ」と言っている。ガラも悪いし、ランチには文句ばっかり言ってたそうですし、従業員一同は「断ろう」と提案します。しかしニコニコ宇海くんは、いつものニコニコ顔で泊めちゃうことにしました。佐那も「お客様なので、お断りするのは違うかと」と殊勝なお返事。後藤さんと、後藤さん以上に不機嫌な娘を泊めることにしました。

 宇海くんによって、後藤さんの担当を任された時貞さんは、ずっと奥歯にものが詰まったような顔をしています。

■美しい“中締め”はメタ的な視点で

 結論から言って、告発状は後藤さんによるものではありませんでした。絆創膏は自分で転んでケガをしただけでしたし、時貞さんの献身的な接客により、後藤さんは大いに満足して帰っていきました。

 今回は、このドラマの、とりあえず総決算となりました。第1回に提示された「みんなの心が変わればホテルが変わる」というテーマに沿って1人ひとり改心させてきた宇海くんのプロジェクトが、最後のひとりである時貞さんを丸め込んだことで、完遂となったのです。

 いわゆる中盤のクライマックスを迎え、面白かったシークエンスがあります。

 後藤さんの曖昧な要求を測りきれない時貞さんが、宇海くんに土下座をして、こう頼むのです。

「お願いです! 教えてください! ほんとはわかってるんですよね、後藤さんが何を求めてるのか……」

 そして宇海くんが「わかりません」とあっさり返すと、

「だっておまえ、のらりくらりしながら、全部お見通しみたいな感じでやってきたじゃねえかよ!」

 と怒鳴りつけるのです。

 この時貞さんの視点は、そのまま視聴者の視点です。このドラマは宇海くんの巧みな策略によって、誰も彼もが「改心」に導かれてきました。まさに時貞さんのおっしゃる通り、宇海くんは「全部お見通しみたいな感じでやってきた」のです。

 そういうパターンに満ちた脚本が安心感につながってきたし、物足りなさにもなっていた。ここで宇海くんがラスボスである時貞さんを攻略するに当たり、今までのパターンの種明かしというか、メタ的なセリフを採用することで、「とりあえず、パターンはこれで使えないよ(使わないよ)」というドラマとしての宣言を行ったわけです。

 このシークエンスによって『崖っぷちホテル!』は美しい“中締め”を迎え、次回以降の新たな展開を期待させることに成功しています。


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