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新しいドラマの扉開けた翻訳ドラマ『モンテ・クリスト伯』次回はシェークスピアかドストエフスキーで?

■留美が母親だと知り嘔吐する安藤

 不倫の末に産んですぐ一度は捨てた息子・安藤(葉山奨之)との日々を刹那的に楽しむ神楽の妻・留美(稲森いずみ)。真海は公平を苦しめるために留美を安藤に出会わせたのだが、もはや彼女の生きる糧となっている。

 だが、留美が母親だと知り、いきなり嘔吐。しかも父親である警察官僚の公平は自分の保身のことしか考えてないから、どんなことしても助けてくれるはずだと留美に言われ「お前ら(留美と公平)、最高やべーわ!」と吐き捨てて笑う。確かに笑うしかないくらいクソな状況。

 公平は過去を詫びて、外国へ逃がし助けるフリをして2人きりの時に安藤を撲殺、またしても赤子の時のように生き埋めにする。高橋の腐りきった極悪な演技が光る。

 しかし、こちらも赤子の時以来、またしても埋めた直後に真海の執事・土屋(三浦誠己)が助け出し、一命をとり留める。もはや、ある種の父性が土屋の中に生まれていたように感じる。今回は描かれていないが、きっと土屋は安藤の面倒を見る気がしてならない。

 公平を許せない留美は、安藤が殺人犯だと公表する記者会見の場に乗り込み、公平の悪事を全て暴露。公平は取り乱し帰宅、逃げようと妻・瑛理奈に弱音を吐く。

「どこで間違えた……俺はただ立派な人間になりたかっただけだ」

「家族っていうのはなんだ、そう思ってきた、だが、それすらも自分のためだったのかもしれん」

 だが必死に慰めてくれる瑛理奈に感謝し抱きしめた瞬間、瑛理奈は口から血を吐いて壮絶に死ぬ。公平に過去の殺人を咎められたことで毒を飲んでいたのだ。息子の瑛人も死んだと真海に言われた公平は、全てを失い気が狂ってしまう。

 だが瑛人は生きており(原作では母子ともに死亡)、死んだ母が倒れている現場で真海を睨みつける。復讐の芽を感じさせる終わり方だ。

■焼身自殺を図る真海

 真海は最後に神楽、南條、すみれというかつての仲間を集めて晩餐会を開く。

 家中に灯油をまき、神楽と南條を椅子に縛り付けた狂った部屋に招かれたすみれ。

「もうやめて、こんなの馬鹿げてる」

 おかまいなしに「余興」として、第1話で流されたすみれにプロポーズした時のサプライズ動画を流す真海。画面内、「愛は勝つ」に合わせ踊る神楽に、はしゃぐ南條。

 真海は若い自分を指差し「誰です、この頭の悪そうな男は?」「人に騙されるのが目に見えている」と皮肉を言いつつ「でも本当に幸せそうだ」とこぼす。

 真海に誘導され、当時の気持ちを正直に語る2人。

神楽「お前が街にきた時からずっと目障りだったし、お前が船長に決まった時すげーむかついたよ」

南條「(暖が警察に連行されて)焦ったけど、正直ほっとしたよ。これですみれを取られないで済むって」

 初めて当人が認めた本音。真海はこれを聞きたかっただけなのかもしれない。

 そして少し前に、「全てを捨てて自分と結婚するなら、もう復讐はやめる」とすみれに「踏み絵」を迫っていた真海は、15年前と同じように改めてすみれにプロポーズする。

「はい、私は『真海さんと』結婚します」涙を流しながら答えたすみれの言葉を聞き、「やっぱり最後に『愛は勝つ』んだ」とつぶやき全員を解放、退去させる真海。

 すみれは暖とは呼ばなかった。抜け殻のように「楽しかった」とつぶやき、火に包まれる真海。

 信一朗が未蘭の件で激怒して訪ねて来た時「いずれ私は罰を受けるでしょう」と真海は言っていた。「絶対に許さない」と言った信一朗に対し「許しなど求めていない」とも。この時から真海は死ぬことを決意していたのでしょう。

■強い原作リスペクト

 すべてが明るみに出たため、公平、南條、神楽はそれぞれ逮捕されたが、真海の遺体は見つからなかった。南條は飛び込んで助けに入り、大やけどを負ったが、実際は土屋やエデルヴァが助けたのかもしれない。

 真海が残した「希望」である信一朗へあてた手紙には「待て、しかして希望せよ」とあった。このへんは原作と同じだが、これは最初に日本語訳した岩波版(山内義雄)の言葉で、脚本家の黒岩勉の原作へのリスペクトを感じた。

 最後、海辺を歩く紫門暖とエデルヴァっぽい人影。原作ではエデ(エデルヴァ)の愛によりエドモン(紫門)は救われ、結ばれるのだが、それを示唆するエンディング。しかしあえて多くを語らず、原作を読ませ補完させようとする意図を感じた。

 ドラマとして完結しているかは別として、やはり原作へのリスペクトなのだろう。

 2時間、詰め込みに詰め込んだ濃い内容をうまくまとめ上げた最終回。しかし気になる点もあった。

 殺人を犯すなど、その罪の重さはもちろんあるものの、真海的に恨みがあるわけでもない瑛理奈があそこまで壮絶に死に絶えながら、結局メインの復讐相手のうち2人が「救われたような」形となったエンディングには、やや疑問が残る。「小物」の寺角(渋川清彦)を目の前で生き埋めにしたほどの真海なのに、やはりすみれに正体がばれていたのが効いているのか。

 原作では、瑛理香が瑛人とともに心中したことを公平(ヴィルフォール)から聞かされ、その意図しなかった「巻き込み」具合にショックを受け、真海(モンテ・クリスト伯)が罪の意識に苛まれるシーンがある。

 しかし、このドラマでは瑛理香の死は真海も想定済みといった感じで、その死に対して罪悪感を感じている様子もなかった。それだけに、なぜ原作に背き南條を殺さなかったのかが気になる。

 最後、真海を助けようと火の海に飛び込んで全身大やけどを負ったのも、少し「改心」したことによる中途半端な「罰」に見えてしまった(幼い瑛人を殺さなかったのはテレビ的にわかるが)。

 今作は母親が特に「強く」描かれていた。

 第6話で、留美が実の子(安藤)と近親相姦をしていることを知っても、ショックを受けるよりも安藤が生きていた喜びが上回る様子を見て「母親というのは偉大だな」と真海は言っている。

 息子のために殺人を繰り返す瑛理奈。息子の嫁を守るため餓死を選んだ恵(風吹ジュン)。そして、安藤が殺した死体(寺角)を埋めてやった留美。もっと丁寧に掘り下げてほしかった部分だ。

 まじめに原作を追ったため1クールでは内容を詰め込みすぎで、もったいなくも駆け足で描ききれていない部分が多かった。だが珍しい手法の意欲作で、この手の翻訳ものとして、ある種の扉を開いた気がする。

 ぜひ黒岩勉はシェークスピアやドストエフスキーなどで再挑戦していただきたい。
(文=どらまっ子HARUちゃん)

最終更新:2018/06/15 20:00
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