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カラテカ・矢部、ピース・又吉、オードリー・若林……“芸人本”が出版界を救う日

『大家さんと僕』(新潮社)

 お笑い芸人の矢部太郎が執筆したマンガ『大家さんと僕』(新潮社)が手塚治虫文化賞短編賞を受賞、人気が爆発している。ほのぼのとした日常の風景やほっとする間合い、ゆったりとした会話が心に響き、累計発行部数50万部を超えるメガヒットを記録。

 受賞式典で矢部は「僕はいま40歳で、38歳のときに漫画を描き始めました。38歳で漫画家になると言ったら、普通は周囲が全力で止めると思うのですが、大家さんがいつも、『矢部さんはいいわね、まだまだお若くて何でもできて。これからが楽しみですね』と言ってくださっていた。ずっと言ってくださるので、本当に若いような気がしてきて、本当に何でもできるような気がしてきた」と感謝し「これまで全力で漫画を読んでいたこととか、芸人として仕事をして創作に関わってきたこととか、なんだかすべては無駄ではなく、繋がっている気がしています」としみじみと語った。

 そんな矢部の才能について、芸能関係者は「作り手としての感性が鋭いですね。『カラテカ』として、ネタをつくり、演じるという部分で、人々に受けるものは何か、どういうところに訴えていけばいいのかという嗅覚が磨かれています。これは他の芸人にも言えることですが、お笑いをやるということは、人に受ける感性を鍛える勉強になっていると思いますよ」と解説する。

 矢部に限らず、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹は『火花』(文藝春秋)で2015年に芥川賞を受賞したほか、ピン芸人・劇団ひとりは06年に『陰日向に咲く』(幻冬舎)を出版し発行部数100万部を超えるミリオンヒットを飛ばした。そのほかにも、オードリー・若林正恭はエッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(KADOKAWA)で斎藤茂太賞を受賞、インパルスの板倉俊之も小説を書くなど、続々と芸人が文筆業に進出している。

「お笑い界を生き抜くにあたり、磨かれたスキルが、文筆業にも生きてきているようです。これからも、芸人が生み出す個性あふれる作品が次々出てくると思いますよ」(同)

 出版不況といわれて久しいが、それを救うのは、激しい競争の世界で鍛え抜かれた芸人たちなのかもしれない。

最終更新:2018/08/13 06:00
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