日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『ぎぼむす』上白石萌歌の将来性
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

上白石萌歌『義母と娘のブルース』で見せた“素朴な味わい”と“豊かな表情”の将来性

TBSテレビ『義母と娘のブルース』より

 高視聴率で大団円を迎えた『義母と娘のブルース』(TBS系、以下『ぎぼむす』)は、がんで余命わずかの宮本良一(竹野内豊)と契約結婚をすることになったキャリアウーマンの亜希子(綾瀬はるか)と、彼女に育てられることになった娘・みゆきの10年間の日々を描いたドラマだ。

 物語は二部構成となっており、小学3年生のみゆきが父親と死別するまでを描いた1~6話と、高校3年生になったみゆきと亜希子の日々を描く6話~10話に分かれている。

 脚本を担当した森下佳子は、連続テレビ小説『ごちそうさん』や大河ドラマ『おんな城主 直虎』といった、NHKの長尺歴史モノで高い評価を受けている。『白夜行』や『わたしを離さないで』(ともにTBS系)といった1クールのドラマでも、10~20年といった長いスパンのドラマを書いており、たとえ現代が舞台でも、彼女のドラマには大河ドラマ的な歴史性が存在する。

 今回の『ぎぼむす』も、劇中で10年の歳月がたっている。

 この時間経過を見せるに当たって、まず描かれたのが、亜希子の変化だ。

 キャリアウーマンだった亜希子は最初、感情を見せないロボットのような女性として現れる。ビジネスパートナーと接するように子どものみゆきと話す亜希子のとんちんかんぶりが本作のユーモアとなっているのだが、彼女は『女王の教室』や『家政婦のミタ』(ともに日本テレビ系)といった遊川和彦・脚本のドラマによく登場する機械のようなヒロインだ。ちなみに森下は遊川の弟子筋に当たる脚本家なのだが、こういう機械のようなヒロインが職場や家庭をひっかき回すパターンは、日本テレビ系の作品ではよく使われる手法で、それがTBSドラマに登場したのは新鮮だった。

 また、良一と亜希子がお互いの目的のために契約結婚をするという展開は、同じ放送枠で大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』を思わせる。そのため、当初はヒット作のパターンを流用した作品だと思い、冷めた目で見ていたのだが、後半になると、亜希子に人間味が少しずつ生まれ、クールに見えるが、娘のみゆきのことを心配している不器用な姿が見え隠れするようになる。そんな亜希子の変化に、時間の流れが現れているのだ。

 一方、娘役となるみゆきは、女優の交代で変化を見せたのだが、これは実に大胆な試みだった。

 幼少期のみゆきは横溝菜帆という10歳の子役が演じた。後半のみゆきを演じたのが、今回紹介する上白石萌歌だ。

 横溝が演じた幼少期のみゆきは、母親を亡くし父と二人暮らしだったため、年の割にはしっかりしたところがある女の子だった。それが、高校3年生になると、おバカさんで、おっとりしてはいるが、性根が優しい女の子に成長している。

 上白石が演じる高校生のみゆきは、子ども時代のみゆきと似ているといえば似ているのだが、微妙な変わり方をしている。

 特に幼少期に仲がよかった太った男の子・黒田大樹が、イケメン高校生として再登場する時のギャップが描かれていたため、成長したみゆきのもっさり感が際立っている。

 そんな、みゆきを演じる上白石の仕草がいちいち面白くて仕方がない。

 彼女の表情は本当に豊かだ。もともと本作は顔の演技が極端なのだが、上白石の顔はキリっとシリアスな表情になったかと思うと、すぐに表情がゆるんでだらんと崩れる。

 子役時代のみゆきの固い表情とくらべると、すごく柔らかくてマシュマロみたいである。時にだらしなく崩れる彼女の表情を見ていると、亜希子と過ごした10年間が本当に幸せだったんだなぁと、実感させられる。

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