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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

脚本家・野木亜紀子が『獣になれない私たち』で肯定する、等身大の新垣結衣

『逃げ恥』のみくりも、ただかわいいだけのお嫁さんではなく、昔の恋人から「小賢しい」と言われてしまうようなところがあるのだが、その小賢しさこそが彼女の魅力となっていた。

『けもなれ』では、精神的に疲弊した晶が地下鉄のホームから電車に飛び込むのではないか、恒星に誘われて一夜の関係を持ってしまうのではないか、と思わせる場面があるが、いずれも晶は踏みとどまる。そして次の日、社長に対して労働条件の改善を要求する。

 その時の晶の格好が、黒のライダース・ジャケットに、サングラス。そして呉羽がデザインしたアンクルブーツというのがおかしい。劇中で晶が言うように、夏休み明けに不良になった中学生みたいだ。ヒールの高いアンクルブーツを履かせるというのは、長身の新垣のスタイルの良さを見せると同時に、晶の意思表示を示す見事なアプローチである。

 かわいい優等生的なイメージが強く、長身であることがドラマでは生かされていなかった新垣に、晶のような女性を演じさせることに、このドラマの優しさを感じる。

 とはいえ、ここで晶が獣になったかというと、そんなことはない。改善要求もおっかなびっくり。社長から何を言われても「いたしません」と言うのだが、その声もおどおどしている。

 この「いたしません」は、人気医療ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)の大門未知子(米倉涼子)がよく言うセリフで、フリーランスの医師として、手術以外の雑用は一切やらないという大門の強さを表現したものだ。

 しかし、米倉が言うと勇ましい「いたしません」も、新垣が言うと弱々しく、気の優しい女の子が精いっぱい自分の意志を見せようとしている、けなげさのほうが際立つ。

 その後、晶は特別チーフクリエイターの役職を与えられる。晶に仕事をさせるための社長の策略だが、少しだけ状況が動いたようにも見える。こういった条件闘争の積み重ねを描けるのは、本作最大の魅力だろう。

 本作は、新垣が持っている優等生的なかわいらしさを否定はしない。むしろその背景にある、理知的な側面を踏まえた上で、彼女の生き方を肯定しようとしているのだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2018/10/25 10:13
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