『イッテQ!』捏造疑惑への日テレ対応に重大な問題点
11月8日発売の「週刊文春」(文藝春秋)記事をきっかけに明るみとなった『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)のやらせ疑惑。
ラオス政府が今後の対応を協議するような事態にもなっているが、この問題を生み出し、そして、深刻化させている根幹に「面白ければ他者を愚弄しても構わない」というメディア側の増長した態度があるだろう。
「週刊文春」がやらせを糾弾したのは、5月20日に放送された同番組の人気コーナー、「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」という企画だ。ラオスの首都・ビエンチャンで行われた「橋祭り」に、宮川大輔が参加するという内容だったが、現地日本人による告発を受けて同誌記者が3週間にわたって現地取材を行ったところ、ラオスの情報文化観光省観光部、情報文化観光省マスメディア局など、複数人が「ラオスに橋祭りなんて聞いたことがない」と証言したという。「橋祭り」は番組側がセットを組み、地元の人々に協力を仰いででっち上げた、虚偽の祭りだというのだ。
この報道を受け、8日午後、日本テレビは見解を公表。<今回の企画は、現地からの提案を受けて成立したもので、番組サイドで企画したり、セットなどを設置した事実はなく、番組から参加者に賞金を渡した事実もございません>と強く否定。また、<ラオスの情報文化観光省には、番組の趣旨を十分に説明し、正式な手続きを経て当局の許可をいただき、撮影にもご協力をいただきました>として、行政のお墨付きも得ている点を強調した。
そして、今回のような疑惑が生まれている背景には、コーディネート会社からの説明不足ゆえに、この会場では初めての開催であった橋祭りを毎年開催しているかのように放送してしまったことにあるとして、<会場での開催実績を十分に確認しないまま作業を進めてしまいました。結果、この会場で初めての開催であった「橋祭り」を、放送では毎年行われているかのような、誤解を招く表現となりました。この点については、番組として真摯に反省すべき点があったと考えております>と弁明した。
FNNの取材によれば、こういった声明に対し、ラオス政府は怒りを表明したという。2018年11月9日付「FNN.jpプライムオンライン」では、ラオス情報文化観光省の関係者が「“祭り”を紹介する企画だと事前に知っていたら、許可は出さなかった。なぜなら、このイベントは本当の祭りではないからだ」とのコメントをしたと報じている。またさらに、関係者が「日本人は誠実な人たちだと思っていた」と失望感をあらわにしているという。
「日本人は誠実な人たちだと思っていた」という言葉は重く響く。というのも、確かにこの件に対するテレビメディアの対応は「誠実」とは言い難いものだからだ。
11日には、騒動以降初めての『世界の果てまでイッテQ!』の放送があったが、番組内でやらせ疑惑に関する説明はいっさいなし。何事もなかったかのように通常の放送を行う姿には違和感を拭えなかった。
『ワイドナショー』は日本テレビの問題を追及せず
では、この件に対して他のテレビ番組の反応はどうなのか? 同じテレビメディアが犯した愚行に対してきちんと意見するかと思えば、まったくそんなことはなかった。
たとえば、11日放送『ワイドナショー』(フジテレビ)で松本人志は<祭りの定義って難しくない? 家でおかんがメッチャたこ焼き焼いているときに、『今日はたこ焼き祭りやで!』って言うてたからね。でも、まあ、その国の人にしたら、そんな祭りやってないのに、毎年やっていると言われるのは、日本人がもしそれをやられたらって考えたら、多少、うーん、気持ちがあまりよくないっていうのはわかりますけど>と語ったうえで、<フジテレビと日テレ、天秤にかけたら日テレで仕事したいわけですからね。そんなには言えない>などと冗談めかしてコメントを終えた。
また、ゲストコメンテーターの泉谷しげるは<人気番組は叩かれるんだよな>と、まるで『世界の果てまでイッテQ!』が被害者であるかのような口ぶりで語り、松本もそれを否定するどころか、<そうですね。それはもう仕方がないですよね>と、泉谷のコメントを肯定する始末だった。
ラオス政府が怒りをあらわにするのは当然のことである。自国の文化が他の国のメディアによって捏造されたのだ。
しかし、日本テレビ側の出した声明は疑惑を全否定して現地コーディネーターに罪を着せることに終始し、ラオス政府への謝罪の言葉は一言もない。
『世界の果てまでイッテQ!』は視聴率20%越えを記録することもある日本テレビの看板番組。やらせを認めれば大事なドル箱コンテンツを失うことになってしまうからこそ、ここまで苦しい抵抗しているのだろうが、日本テレビは問題の本質を見誤っているのではないか。
ラオスの人々を愚弄するような捏造がまかり通ったのも、釈明のための声明で現地のコーディネート会社に罪を着せてトカゲの尻尾切りのようなことをしているのも、いまだにラオスの人々に対して謝りの言葉のひとつもないのも、すべてその背景には、第三世界の国々に対して圧倒的な上から目線で見下ろす視線が関係しているだろう。この相手がアメリカやフランスであったら、現地のコーディネート会社にすべての責任を押し付けるような声明は出せなかったはずだ。その態度には、いまだ消えぬ宗主国根性が見え隠れする。
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は日本テレビに対し、番組制作の経緯に関する報告書と映像の提出を求めている。今後、第三者による客観的な目線で判断がくだされるかもしれない。
(倉野尾 実)
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