BTS騒動で知った、親世代の「嫌韓」 積み重なる不信感と誤解
BTS(防弾少年団)をめぐり、日韓双方の嫌悪感情が高まっていることを、否が応にも感じる。韓国のヒップホップグループであり、世界的に人気のBTS。そのBTSメンバーであるジミンが昨年、「原爆投下後のきのこ雲」のイメージをプリントしたTシャツを着ていたことを、10月から日本の一部メディアが批判し、やがて多くの人がこのことを知るに至った。
BTSは11月9日に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演予定だったが、番組はBTSサイドにこのTシャツ着用の理由を問い、明確な回答が得られないとして直前に出演を取り止めにしたと発表。日本国内のテレビニュースのみならず、アメリカやイギリスでもこの問題は報じられた。
BTSはこの通称「原爆Tシャツ」問題だけでなく、ナチスを想起させるファッションやパフォーマンスをしていたとして、サイモン・ウィーゼンタール・センターが正式に抗議の意を表明。その国際感覚や人権感覚を問題視し非難する声が、少なくとも日本のインターネット上には溢れた。
しかしBTSは13日夜、公式な説明と謝罪を発表。戦争には明確に反対するとして、原爆イメージのTシャツ着用は日本を侮辱する意図はなかったが、誤解を招くものだったと謝罪。ナチス問題についても、ナチス風ファッションの着用はスタイリストの用意したものであったが、それを着てしまったことは軽率だったと謝罪した。また、ナチスを想起させるパフォーマンスはしておらず、むしろ全体主義を批判する意図のパフォーマンスであると説明している。
この説明は誠実なものだと筆者は感じたが、その夜、離れて暮らす実家の母と他愛のないLINEのやりとりをしている中で、「BTSってなんなの?」と唐突に言われた。「あの人たち、気持ち悪いね」と。
私の母は60代前半だ。母はスマートフォンを利用しているが、日常的にネットニュースに触れてはいない。いわゆる「ネトウヨ」というわけではない。BTSのことはテレビのニュースやワイドショー、新聞報道などで知ったという。「反日」という言葉は使わなかったが、一連の騒動を受けて露骨な嫌悪感を抱いたようだ。母がBTSの公式サイトに掲示された謝罪文を読むことはないだろう。
BTSの騒動を拡大させたのは「ネット民」「ネトウヨ」であり、ネットが騒いでいるだけだとの見方もあるけれど、果たして本当にそうだろうか。実家に帰ると『文藝春秋』(文藝春秋)は置いてあっても、『正論』(日本工業新聞社)や『Hanada』(飛鳥新社)はない。両親はネットに接続して情報を得る習慣もない。でも今回の件に限らず、テレビニュースやワイドショーを見ただけの層も、その内容次第では「何この人たち?」というモヤモヤだけを受け取り、韓国への不信感につなげてしまっている節があるのではないだろうか。
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テレビのストレートニュースで充分な情報を伝えきることはおそらく難しい。ワイドショーは演出の意向が入るだろう。BTSの釈明を知らないまま、「この人たちは、原爆を揶揄したひどい人たちだ」と思ったまま、「韓国は怖い」との被害者意識を深めていく人たちがいる。繰り返しになるが、それは今回の件に限ったことではない。慰安婦問題にしろ徴用工問題にしろ、韓国側の歴史背景や事情を考慮せず、自分たちの歴史を振り返ることもなく、「この人たちは怖い」で済ませてしまう。
母は韓国ドラマ『冬のソナタ』や『宮廷女官チャングムの誓い』が日本で放送されていた第一次反流ブームの際、それらのドラマを楽しんで視聴していた。けれどエンタメコンテンツの消費とは別で、母や父が韓国への不信感を持っていることは、当時から少し感じていた。いや、不信感だけでなく、この人たちは韓国を対等な国として見ておらず、見下しているのではないかとも思っていた。そんな中で育った私自身がフラットな見方を出来ている自信もないが、ともかく家族とテレビニュースなどを見ながら話していると、無条件に日本はアジアで一番であり、他のアジアの国々は劣っているとの価値観が、会話のどこかからにじむ。
それは私の母や父が特殊なわけではないと思う。友人や仕事関係者にこの話をすると、「うちもそうだよ」「その世代の人はそうだよね」といった相槌が返ってくる。親世代は、日本の好景気を知っている世代だ。日本が一番すごくて、他のアジアの国々は劣っているという感覚を無意識に持っている可能性もある。
私の両親に限っていえば、海外に住む人びととの交流は少ない。いつからか、韓国に対して「あの人たちはマナーが悪い、言いがかりをつけてくる、おかしなことばかりする……」と、言うようになった。慰安婦問題が大きく騒がれていた時期には、「今さらそんなことを言うなんて、非常識な人たちだ」と純粋に怯え、憤っているようにも思えた
BTSはNHK紅白歌合戦に出場しないことが決定した。その他にも、年末に多く放送を予定している日本の大型音楽番組への出演がすべてキャンセルになったという。もし彼らが出演していたら、両親のように彼らへの誤解を持ったままの人たちは不愉快を覚えるだろう。そして「嫌い」という感情を強めてしまうのかもしれない。ひたすら悲しく愚かなことだが、そうした感情が発露している場面で、「この人たちはこういうふうに説明と謝罪をしてたよ」と伝えても、効果をなさないだろうと思う。「どうして味方をするの? この人たちのファンなの?」と言われるだけだと目に見えている。
徴用工や慰安婦をめぐる問題からも明らかだが、韓国側から日本に対しての被害者感情に基づく憎しみは確かにあるだろう。けれど、私たちにできることはそれをほどくべく努力することじゃないのか。国交断絶を求めることじゃなくて、折り合いをつけることじゃないのか。そんなのはただの綺麗事と一蹴されてしまうのだろうが、綺麗な理想を掲げた状態で現実的な解決を模索する外交を望みたい。そして私自身もやっぱり、会話を流してしまわずに「私は違うと思う」と母に言おうと思う。
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