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『下町ロケット』第9話 変人・軽部に父性を目覚めさせた意外な相手は!? 時代劇とSFとが融合

■親子鷹の夢は、遥か火星を目指すことに

 第9話は佃利菜(土屋太鳳)と佃航平との父子関係もクローズアップされました。祖母(倍賞美津子)が詩吟の練習に使っている古いカセットレコーダーを利菜が修理していたところ、会社から帰ってきた父・航平も手伝うことに。父子で一緒に修理に取り組む姿は往年の「日曜劇場」を思わせるものがありました。幼い頃の利菜は、航平が映らなくなったテレビやラジオを直してしまう様子を見て「パパは魔法が使えるんだ」と感動し、彼女自身も理系の道へと進むことになったのです。仕事に追われる佃航平にとっては、娘と話す思い出話は格別なものがありました。

「帝国重工」のロケット用バルブの開発リーダーに抜擢された今の利菜にとって、「佃製作所」の社長である佃航平はライバルでもあります。利菜がありったけの情熱を注いで開発した自社バルブは性能試験の結果、見事に合格ラインをクリアしますが、「佃製作所」の改良バルブはさらにそれを上回る数値を記録します。利菜は完敗を喫します。でも、利菜がエンジニアとしての成長を諦めない限り、いつかは父・佃航平に引導を渡す日が訪れることでしょう。

 バルブ対決を終えた佃父子は自宅前の川の堤防に横になり、頭上に広がる夜空を眺めます。淀んだ東京の夜空でも、火星は赤く輝いています。いつの日か利菜が開発した新型バルブを搭載したロケットが、火星まで到着することになるかもしれません。理系親子ならではの、大きな大きな夢を共有する佃航平と利菜でした。

 いつもはストーリー展開が早すぎて、ドラマの描き方が雑な『下町ロケット』ですが、第9話はかなり上質な出来だったと思います。杉良太郎と吉川晃司が登場する「帝国重工」の場面は完全に時代劇の世界ですし、変人・軽部が農業用ロボットに愛情の眼差しを注ぐシーンはSFドラマの要素を感じさせます。さらに第9話では、理系親子が夢をバトンリレーしていくエピソードが描かれました。池井戸潤原作の企業ドラマ『下町ロケット』ですが、ひとつの作品の中に時代劇、SFドラマ、ホームドラマと実にいろんなレイヤーが重なって構成されていることが分かります。「日曜劇場」という伝統ある放送枠を使って、TBSドラマ班は新しい試みに挑戦していると言えるのではないでしょうか。挑戦なくして、伝統を育んでいくことはできません。

 気になる第9話の視聴率は12.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。第7話は12.0%、第8話は11.5%とワースト記録を更新していましたが、クライマックスを控えてようやく持ち直すことができました。企業ドラマ、時代劇、SF、ホームドラマと多彩な側面を持った『下町ロケット』は残り2話で、果たしてどんな領域にまで進むことができるのでしょう。軽部の活躍ともども期待したいと思います。

(文=長野辰次)

最終更新:2018/12/10 19:30
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