TBS『クレイジージャーニー』でもおなじみ!

北極点目指して、たったひとりで……日本で唯一の北極冒険家・荻田泰永の冒険録『考える脚』

2019/04/24 21:00

考える脚 北極冒険家が考える、リスクとカネと歩くこと』(KADOKAWA)

 北極点を目指して、たったひとりで歩く。しかも、食料、テント、必要な道具など、約100kgの荷物をソリに乗せて。

 国内外で注目を集め、『クレイジージャーニー』(TBS系)でもおなじみの北極冒険家・荻田泰永氏が『考える脚 北極冒険家が考える、リスクとカネと歩くこと』(KADOKAWA)を上梓した。本書は、2度にわたる「北極点無補給単独徒歩」への挑戦をはじめ、「カナダ〜グリーンランドにある、最北端の集落をつないだ単独徒行」、そして、2018年に日本人として初成功した「南極点無補給単独徒歩」の三大冒険録だ。

 中でも、やはり「北極点無補給単独徒歩」の記録がとにかく濃い。初挑戦は12年のこと。北極での冒険を始めて12年、何度も徒歩遠征を重ねてからの挑戦だった。しかし、結果は惨敗だった。

 北極海の揺れ動く氷の上を歩くので、いつ死んでもおかしくない。言葉で言い尽くせないほどの恐怖感があった。

「氷上に張ったテントで寝ていると、遠くで海氷が動いた重低音が響き、その音で目を覚ます。(中略)爆音が恐ろしく、安心して寝てもいられない。ドドドド、グググゥ、バキバキ、ガラガラ……寝袋の中で身を起こし、まさか自分のテントが海氷破壊に巻き込まれないかという恐怖心を抑えながら、祈るような気持ちで周囲の音が収まるのをただ待つ」(本文より) 

 冒険の第一歩目を踏んだのは、22歳のとき。特に目的意識も持たずに通っていた大学に面白みを感じられず、中退。テレビに登場していた、北極を横断する冒険家・大場満郎氏の存在に魅了され、初海外でいきなり北極を訪れた。

 それ以来、荻田氏は30代前半まで、日本にいるときはいくつものアルバイトを掛け持ちし、100~200万円たまったら北極への徒歩冒険に出るという日々を繰り返してきた。

 2010年頃には北極点を狙い始める。ところが、北極点ともなると、スタート地点までも飛行機のチャーターが必要になり、予算が1,000~2,000万円と桁違いにはね上がってしまう。自分ひとりの稼ぎでは、どうにもならない。

 スポンサーを集めたいが、一度も就職したことがなく、知っているのはアルバイトや北極の世界だけ。どんな企業の誰にどうやって話をすればいいのかわからない。その結果、とった行動が「よし、まずは会社へ行ってみよう」と、いきなり飛び込み営業を始めることだった。

「すいません、北極を歩いて冒険家している、荻田という者なのですが、協力していただける企業を探しています。どなたかお話を聞いていただけないでしょうか?」

 そんなふうに。

 何かに挑戦している人に対して、「あんなことやって、なんの意味があるんだ?」とか、「自己満足でしかない」と陰口を叩く人がいる。けれど、世の中はそんな世知辛いわけではなく、スポンサーになってくれている大きな企業の担当者の中には、まるで、自分ごととして応援してくれる人もいる。

  ある担当者は、荻田氏にこんな言葉をかけた。

「私もこれまで、いろいろな広告のキャンペーン企画でたくさんチャレンジしてきたので、できないことに挑戦する苦労は理解しているつもりですし、私もその中でたくさんの人に救われました。そんな意味でも、新しいチャレンジをしたいし、一緒にやりたいなと思いました。でも、最後は荻田さんの人間力に惹かれた訳ですよ!」(本文より)

 あとがきで、荻田氏は「私にできることは、若者たちに広い世界へ飛び出るきっかけをつくることぐらいだ」と語っている。今年4月7日からは、素人の若者たちを連れて、カナダ北極圏・バフィン島をおのおの1台のソリを引き、600km踏破に挑んでいる。何かをやりたいけれど、持て余している――。そんな渇望感を抱えた若い人に、ぜひ読んでもらいたい1冊だ。

(文=上浦未来)

●おぎた・やすなが

北極冒険家として世界有数のキャリアを持ち、国内外のメディアからも注目される。カナダ北極圏やグリーンランド、北極海を中心に、主に単独徒歩による冒険行を実施。2000年より17年までの18年間に15回の北極行を経験し、北極圏各地を9,000km以上移動する。16年、カナダ最北端の村グリスフィヨルド〜グリーンランド最北のシオラパルクをつなぐ1,000kmの単独徒行(世界初踏破)。18年1月、日本人初の南極点無補給単独徒歩到達に成功する。第22回植村直己冒険賞受賞。日本国内では夏休みに小学生たちと160kmを踏破する「100milesAdventure」を2012年より主宰。北極で学んだ経験を、旅を通して子供たちに伝える。海洋研究開発機構、国立極地研究所、大学等の研究者とも交流を持ち、共同研究も実施。北極にまつわる多方面で活動中。著書に『北極男』(講談社)。

最終更新:2019/04/24 21:00

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