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熱血!”文化系”スポーツ部

TBS『ノーサイド・ゲーム』の盛り上がりとラグビーW杯の扱いから見える「テレビ局の論理」

TBSにはラグビー愛があふれている

 ここで重要になるのが、番組のトップとTBSのトップに共通するラグビー愛であり、「日本ラグビーが盛り上がるのなら、局の論理なんて気にするな」という気概だ。

 まずは番組トップ。総監督的な立場にいる演出の福澤克雄は慶應大学ラグビー部出身。だからこそ、ラグビー描写に妥協がないし、キャスティングにもラグビー経験者ばかりを揃えるこだわりがある。

 チームのキャプテン岸和田徹を演じる高橋光臣は大阪の強豪校・啓光学園ラグビー部出身。ドラマ初挑戦とは思えない存在感を放つ浜畑譲役の廣瀬俊朗は元日本代表キャプテン。そのほかにも、主要キャストはほぼ全員がラグビー経験者であるため、スポーツドラマでありがちな“スポーツ描写でのがっかり感”が見当たらないのだ。

 8日放送回ではあまりにもさりげなく濱田岳がゲスト出演していたが、濱田もまた元ラグビー少年。「こんなにも熱いドラマにラガーマンとして少しでも役に立てるなら協力したい」と、自ら番組側に逆オファーしたという。

 これほどまでの「ラグビーど直球」、おそらくTBS局内でも「日テレの宣伝になる」と眉をひそめる人物はいるだろう。そんな声を押しのけ、ラグビーを前面に押し出した企画を突き通せたのは、局のトップであるTBS社長の佐々木卓もまた早稲田大学ラグビー部出身、ということも大きな要因のはずだ。

 佐々木社長は、ラグビーと経営をテーマにしたインタビューで、こんなコメントを残している。

《負けることよりも怖いのは、アンフェアだという烙印を押されることです。1回や2回の負けはやり直しが利いても、アンフェアだという烙印は一生付いて回る》(「週刊ダイヤモンド」8月31日号より)

 この言葉から、佐々木社長には、目の前の視聴率競争以上に、放送局としての大義、そしてラグビーを愛する者としての矜持があるように思えてならない。

 ここから先、実際にW杯の試合が始まれば、日テレ以外の局であっても、日本戦の試合結果や活躍した選手を取り上げてくれるはず。つまりは、日本代表の結果次第では、まだまだ盛り上がる可能性は大きい。もし、それでもW杯の扱いがおざなりなスポーツ番組があったとしたら、その番組の良心とスポーツ愛を疑ったほうがいいと思う。

『ノーサイド・ゲーム』の中では、主演の大泉洋がラグビー部の廃部を主張する上司に対して、こんなセリフで対抗するシーンがあった。

《日本のラグビーは必ず変わります。きっと強くなります。お願いします。ラグビーの未来を、必死に戦っている選手たちの将来を閉ざさないでください》

 なんだかこれ、日本のメディアに向けて言われたような気がしたのは、筆者だけだろうか。

(文=オグマナオト)

最終更新:2019/09/26 10:10
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