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安倍政権、読売新聞グループのトップを駐スイス大使に起用でメディア業界に波紋広がる

イメージ画像:Luke,Ma

 メディア業界を騒がせている政府人事をご存じだろうか。

 安倍政権は8月30日、読売新聞グループ本社会長の白石興二郎氏を駐スイス大使に起用すると閣議決定した。白石氏は速やかに会長退任を発表。報道機関の現職トップから大使への起用は極めて異例のことで、政権と読売の近すぎる関係が、メディア業界で波紋を呼んでいるのだ。

「白石? 読売のトップはナベツネさんじゃないの?」と疑問をお持ちの方のために、読売新聞グループについて説明しておこう。

 読売新聞グループとは、読売新聞を中心に文化、スポーツ、レジャーなど約150の会社や団体で構成されている。グループ全体を束ねているのが、持ち株会社である「読売新聞グループ本社」。ここには代表権を持つ役員が3人いる。

●代表取締役主筆 渡邉恒雄
●代表取締役会長 白石興二郎(読売新聞東京本社会長・編集主幹)※8月30日付で退任
●代表取締役社長 山口壽一(読売新聞東京本社社長)

 要するに、読売新聞グループは渡邉恒雄氏ら3人による集団指導体制「トロイカ体制」を敷いており、その1人が白石氏というわけだ。

 さて、白石氏が政府人事の対象になった背景には、4月の新元号決定に重要な役割を演じたためとの指摘がある。舞台裏を取材した全国紙の政治部記者の話。

「4月1日に『元号に関する懇談会』が首相官邸で開かれたんですが、進行役の菅義偉官房長官が最初に指名したのが白石さんだったんです。白石さんはこのとき、『令和が望ましい』と発言。続いて発言した有識者8人のうち7人が令和を推しています。官邸内では『白石さんの一言で令和決定の流れが決まった』と評価されていました。ですから、今回のスイス大使起用は白石さんと読売新聞に対する最大限の〝論功行賞〟とささやかれています」

 もっとも、スイスは伝統的な親日国として知られ、大きな懸案はない。これまでにも、警察庁長官銃撃事件の被害者となった国松孝次氏元長官をはじめ、安倍首相の経済ブレーンである財務省出身の本田悦朗氏が大使を務めている。外交に通じていない人物でも大使が務まるというのがもっぱらの見方だ。

 とはいえ、メディアに詳しい大学の専門家たちは今回の人事に厳しい注文を付けている。

「権力監視の役割を担うメディア出身者が権力側に回るのはおかしい。政権と一体化したと国民から思われても仕方がないじゃないか」

 こうした声を一部のメディアが伝えているのだが、どういうわけか、一向に批判の声は高まらない。それもそうだろう。メディア出身者が大使に就任したケースは白石氏が5人目で、読売新聞だけに限らないからだ。外務省OBの話。

「過去には朝日新聞で環境問題の専門記者だった石弘之氏が大学教授を経て駐ザンビア大使に起用されています。元毎日新聞記者の高原須美子氏も経済評論家から駐フィンランド大使に就いた例もある。いわゆるアンチ読売の立場にあるメディアも、今回の白石さんの起用を批判すれば、天に唾することになりますね。それに大使を外務省出身者で独占させず、民間から人材を登用する考え方は諸外国では一般的で、望ましいことですから、批判するに当たらないと思います」

 いや、ちょっと待ってほしい。外交官に民間から起用されるケースは諸外国でも一般的だからといって、政府人事にメディア幹部を安易に起用することを問題なしとするわけにはいかないのだ。というのも、最も深刻なケースがあるからだ。大手新聞社の記者が話す。

「全国の警察を管理する立場にある政府機関『国家公安委員会』をみてほしい。各社持ち回りのマスコミ枠があり、いまは読売新聞出身者が委員を務めている。過去にはNHK会長や日経新聞会長から転じたケースがあるし、最近では、共同通信社の元編集局長も起用されている。本来、マスコミは、警察による人権侵害を告発する立場にあるはず。それなのに政府機関入りしてしまっては、警察の不祥事など筆が鈍ることにもなる」

 マスコミと政権の近すぎる関係によって、政権への批判記事を手控えるようなことが起きてしまっては本末転倒だろう。マスコミの”忖度”は働いていないかどうか、本サイトも監視していきたい。

最終更新:2019/09/26 00:00
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