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【町中華】毎日食べても飽きない醤油ラーメン/船堀・とんぼ亭(東京)

 そこは僅かに二軒だけの店がある地元の繁華街だった。

 駅前の区民ホールに展望台がある船堀。東京タワーやスカイツリーと違って入場無料。江戸川区内唯一の映画館も入っている。どこが中心かいまいち判然としない江戸川区内だが、もっとも賑わっているのは船堀だと思う。でも、船堀駅の周りでも賑わっている範囲は極めて狭い。駅から四方にチェーン店やコンビニが並んでいるが半径数百メートル程度の枠にぎっちりと詰め込まれている。あとは、静かな住宅地やマンションがあるだけだ。夕方、都営新宿線を下りた人たちは家路を急いで早足である。なるほど、そんな人たちを相手にする店ばかりだから、一人でも多くの客をつかむために駅前に集中するのは当然か。
 
 東京23区でも江戸川区や葛飾区、足立区は同じ特別区でも都心とはまったく雰囲気の違うエリアである。そうした街の住宅街を歩いていて、ふと目に入ってくるのが住宅地の中にポツンとある店。多いのは居酒屋・パン屋・街中華あたりか。まだ十数年前までは、ここに文房具店というジャンルもあったけれども、それはほとんど消滅した。でも、なぜかなくならないのが居酒屋と街中華。店のある町内を除けば、よそから客が足を運んでくることはなさそうな店構え。文字通り「街場の店」というものである。

 今回訪ねた、この店はその定番だ。

 船堀駅からは徒歩10分ほど。途中、新川にかかる橋を渡れば人通りはぐんと少なくなる。

 西葛西方面へと向かう道路から、一本裏に入れば、すれ違う人もいない。ほとんどが一軒家、たまにアパートと町工場がある程度。こんなところに、店なんてあるのだろうか。道を間違っているんじゃないかと不安になった頃に、ようやく店の灯りが見えた。

「地元密着」な雰囲気を醸し出す手書きの案内

 

とんぼ亭
東京都江戸川区宇喜田町1364-11-103
営業時間:11:00~14:50、17:00~20:50
定休日:月曜日

 今回訪れた、とんぼ亭は住宅地の中に居酒屋と並んで建っている。きっと「今日は、ちょっとご飯をつくるのが面倒くさいから」なんて時に「じゃあ、とんぼ亭だな」という風な使われ方をしているのだろう。となりの居酒屋は「毎日、家で晩酌ばかりじゃつまんないな」という気分の時に向かう、お父さんのパラダイスといったところか。

 さて、とんぼ亭。店の前で目立つのが味のある手書きの案内。メニューに加えてお得なセット。そして常連客に向けたであろう案内もある。

 

申し訳ありません。
現在配達スタッフはおりません。
お待ちしております。
ご不便をおかけしてすみません

 はたまた、こんな案内も。

クーポン・学割
必ず先に!! 声がけ下さい

 なるほど、いつもやってくるお客さんが戸惑うことなく、僅かな食事の時間をゆっくりと過ごせるように配慮をしてくれているのだろう。

 そうした店の前の案内で気になったのは「おかげさまで28周年」と「29周年」という言葉が並んでいること。よくよく見ると29周年のほうには小さく「今年11月で」とある。するとオープンは平成のはじめ頃。30年あまりを近所の人たちと一緒に過ごしてきたのは、どんな味だろう。

「ミニ」ではない量のミニスタミナ丼に満足

 

 期待しながら店内に入ると「いらっしゃいませ」と明るい声。ご夫婦だろうか、二人で一番奥の客席を使ってなにか作業をしていた。

 目を凝らすと皮むきをしていたのか、ニンニクが山のように積まれている。ずっと夫婦で店を営み、下ごしらえから調理まで共同作業を続けて来たのだろうか作業の手を止めると、驚くほどの連係プレイでご主人は厨房に入り、女将さんは水を運んで来る。

 店の中にも、これまた案内は様々。壁に貼られたメニューには一部のメニューは消費税10%になっても値上げしてないという一文も。これもまた、地元と共に歩んできた店ならではの経営努力であろう。

 そんな壁の案内を見ていて気になったのは、やたらと推されているスタミナ丼。いったいどんなものなのかと気になって、ラーメンとミニスタミナ丼を注文する。

 厨房で、無駄のない美味しさを醸し出す調理の音がして数分。お盆に乗ったラーメンとミニスタミナ丼が運ばれてくる。

 

 まず驚いたのが、ミニスタミナ丼。「ミニ」というのは器が大きい。平べったい器なので見た目ほど量がないかと思いきや普通の茶碗でたっぷり一膳分はある。おまけに、盛られた豚のバラ肉は完全にご飯を覆い隠している。

 その上には生卵が一個。これだけで、相当カロリーがありそうだ。そしてラーメン。こっちもチャーシューは大きい。さらに、ちょこんとウズラの卵。わずかに一個だが得をした気分になるではないか。

 

 まず手を付けたラーメンは、スタンダードな東京風の醤油味。絶妙にあっさりとした味付けは、毎日食べても飽きることのないものだ。対するミニスタミナ丼は少々、ガツンと来る。バラ肉に絡む甘辛いタレは強烈な美味さを口いっぱいに拡げてくれるのだ。

「これは、近所にあったら週一で来たくなる店だ……」

 そんな感動を味わいながら、改めて店の中に目を凝らす。カウンターには、一人客が暇をつぶすための定番アイテムであるマンガがいっぱい。並んでるマンガのラインナップは『頭文字D』『グラップラー刃牙』『湘南純愛組』そんなタイトルが、この店を普段遣いしている客の姿を想像させる。

 そして、壁にはこんな一文も。

周辺も増々静かな場所となり、不便な所にご座いますが、ご来店頂けて心より感謝申し上げます。
ずっと変わらず、流行も行列もインスタ映えもしない昭和な町中華ですが、今後とも宜しくお願い致します。

 なるほど、インスタ映えしそうな雰囲気はどこにもない。わざわざ、船堀まで電車賃をかけて出かけたくなるような味ではない。でも、そんな究極の普通さ。そして、文章から間もし出される謙虚さが「地元の味」になった理由なのか。

 満足し一服していると、ジャージ姿の男女が入ってきた。慣れた調子で席に座りながら「生姜焼き、ご飯少なめ」と水が来るのも待たずに注文を。足元をみると、ピンクのクロックス。ああ、この家から着替えなくても。別に寝間着でも行けるフツーさがたまらない。

 ご馳走様でした。

最終更新:2020/03/08 05:30
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