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儲かるのは本人より窓口になる会社?――1案件で100万円以上! YouTuberのPR(裏)案件

――YouTubeの世界で「企業案件」もしくは単に「案件」と呼ばれる企業タイアップ動画。有名YouTuberになると、そのギャランティは1案件あたり数百万円になるとされている。今回YouTuberやインスタグラマーを使った商品PRを手がける人物に、その裏側や、商品PRにおけるYouTubeの立ち位置の変化などを聞いた。

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『改訂 YouTube 成功の実践法則60』(ソーテック社)

 YouTuberが企業の依頼を受けて制作・公開するタイアップ動画。「家電などの商品の特徴を使用レポートとして紹介するもの」「化粧品を使ってメイク方法を教えるもの」「商品を使って『○○してみた』などのネタ動画に仕上げるもの」など種類はさまざまだ。こうしたタイアップ動画の存在は、YouTubeを熱心に視聴する若い世代にも認知されており、タイアップ動画を指す「企業案件」という言葉はネット上で広く使われている。

 そうしたタイアップ動画のギャラは、当然のことながら一般に公開されていない。人気YouTuberのシバターが、『誰も言わないなら俺がYouTuberのギャラ相場を教えます』という動画で「相場はチャンネル登録者数の1・5倍」「某大手事務所の場合はさらに金額が上がる」と話していたが、詳細は不明な点が多かった。

 編集部では今回、大手YouTuber事務所のタイアップ動画の見積もり資料を入手。その資料では、チャンネル登録者数が約150万人の某有名YouTuberの場合は、制作費用が350万円と記載。そのほか約180万人のYouTuberは280万円、約50万人のYouTuberは60万円といった金額が列挙されていた。個人によりバラツキは見られたが、「1案件の費用はチャンネル登録者数の1~2倍強程度の金額」という相場が存在すると考えてよさそうだ。この金額については、YouTuberを使った企業タイアップ案件を手掛けるPR会社社員も「実際の相場感と同じ印象です」と話す。

「有名なYouTuberだと100万円、200万円という金額が提示されることはごく普通です。特に大手事務所のUUUMなどは金額が高い印象ですね。美容系YouTuberの相場も驚くほど高く、世間的にはさほど有名ではない人でも、依頼をしたら『350万円』という金額を提示されたことがありました」

 その金額に見合う宣伝効果があるのか……と聞くと、PR会社の社員は首をひねる。

「再生回数や公式サイトのリンク等への流入は計測可能ですが、そこで費用対効果に見合う数字が出ることは少ないでしょう。ただ、『若い子はYouTubeばかり見ている』とよくいわれるように、テレビや雑誌、新聞を見ない層にもリーチできるのは大きな魅力。化粧品やファッション等のプチプラアイテムのPRは、そうした視聴者層にハマります。また企業側としても『今っぽい施策に取り組んだ感』が得られる点が魅力なのでしょう」

 映像で商品の魅力を訴求できる点もYouTubeタイアップのメリットだという。

「例えば化粧品の動画では、『つけ心地』『肌にのせた時の質感』などの情報も静止画以上に細かく伝えられます。『○○を使ってみた』というハウツー形式の動画なら、視聴者の役に立つお化粧のテクニックに交えて、商品の魅力も効果的に訴求できます。レシピ動画も同様でしょうね」

 なお最近の有名YouTuberはUUUMのような事務所に所属しているケースが目立つ。そのためのタイアップ案件の依頼はそうした事務所を通して行うことが多い。

「事務所を通すことのメリットは、予算に合わせたYouTuberを探してくれること。『本来なら2人のYouTuberで120万円ですが、今回は予算に合わせて100万円で』といった配慮をしてもらえるケースもありますね」

 デメリットは、事務所側がYouTuberの出演意向を把握できておらず、案件が途中でストップするケースがあることだという。

「事務所側が提示したリストをもとに依頼をしたのに、『本人に確認したらダメでした』というトラブルは過去に何度もありました。UUUMのようにYouTuberを所属させる形式をとっておらず、本当に窓口業務だけを行っている事務所の中には、『間に入るだけで何の仕事もしてないんじゃない?』と感じる会社も多いです。直接YouTuber本人と連絡を取ると、しっかりしたメールが返ってくることも多いので、問題なのは事務所の管理体制だと感じます」

 商品のコンセプトがうまくYouTuberに伝わっていないケースもあるようで、筆者が確認した有名YouTuberのタイアップ動画では、最初から最後まで商品名の読み方を間違っているという動画もあった。YouTuberは事務所に所属をしても“クリエイター”として動画制作の自由を尊重されているケースが多く、タイアップ動画でも「訴求ポイントを伝えるのみで細かな内容は先方に任せるのが基本」。そのため、そうしたトラブルも起こってしまうのだろう。

 また、事務所やPR会社を経由することで、「YouTuber本人に渡る金額は実はかなり目減りしているのでは?」とPR会社社員は話す。

「我々のようなPR会社はクライアントの提示した予算から2割程度の利益を抜き、UUUMのような事務所にタイアップ案件の依頼をします。その事務所もさらに2~3割の利益を抜いているでしょうからね。最近は女性誌などのウェブメディアがYouTuberやインスタグラマーを束ねる窓口になっているケースもあり、そこから依頼をすれば本人の取り分はさらに減ってしまうでしょう」

 あらゆる業種で見られるような、孫受け、ひ孫受けでタイアップ案件を受けているYouTuberもいるわけだ。それだけYouTuberのタイアップ案件は、現在はオイシイ仕事なのだろう。

「我々のようなPR会社もYouTuberの直接の窓口になり、より多くの利益を得られる方法を探っているところです。最近はタイアップ案件を受ける際も、『人気YouTuberを起用したPRが可能』と積極的にアピールしていますし、新製品のPR発表会でも、YouTuberやインスタグラマーを呼ぶことは多いですから」

 そうした発表会ではトラブルもあるという。

「YouTuberやインスタグラマーの多くは、芸能人でもメディア関係者でもない素人なので、自分勝手な動きをするんです。途中で来て途中で帰る人は多いですし、ドタキャンも日常茶飯事。家族や友人を無断で連れてきて『お土産はないんですか?』と聞いてくる人もいます。写真や動画も好き勝手なタイミングで録るので、メディア側から『撮影の時間を別にしてほしい』とクレームを受けることも多いです。我々も対応は面倒なんですが、マスメディアとは違う層に商品をアピールできるので、彼らを呼ぶことは現在は必須になっています」

 なお発表会に有名YouTuberを呼ぶ際も、やはり100万円単位の費用が発生することはザラ。世間的には無名に近いインスタグラマーでも20~30万円の謝礼が支払われているという。

「その金額を知っていて、数十分で発表会から帰っていく彼らを見ていると、『割の良い商売だし自分もやりたい』と思っちゃいますね(笑)。ただ、テレビ番組とのタイアップなどと比べると、彼らに支払うギャラは全然安いのも事実です」

 1案件で数百万円と聞くと「もらいすぎだ!」と感じてしまうが、テレビのタイアップでは1000万円を超える金額が動くこともごく当たり前にある。YouTuberが発表会でお土産をねだるのも、芸能人が受けてきた接待に比べればかわいらしいものだろう。“YouTuber=一般人に毛の生えたような存在”という認識が根強いゆえ、彼らの稼ぎっぷりは悪目立ちする面もあるが、「マスメディアが一手に引き受けていたおいしいタイアップ案件が、規模が縮小して一般人にまで降りてきた」と考えると、その金額は納得できるものなのかもしれない。

「サイゾー」2020年4・5月合併号【特集:YouTube”新”論/実録・狂気の関西ラップ】より

最終更新:2020/06/07 17:00
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