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「美しい甲子園」の裏側

ケガも熱中症も“いい話”に! 美談が隠す甲子園の諸問題とストーリーを作り上げる新聞社

最後に選手が見せる涙で……

 これまで指摘したような報道は、甲子園の“聖地”としての価値を高める一方、高校生たちを時に傷つけ、場合によっては選手生命が危ぶまれる状況へと追いやってきた。

 そんな状況下でも、「ケガのリスクを負ってでも甲子園で投げたい・試合に出たい」と思っている選手が多いのだから、問題は複雑だ。氏原氏の記事でも引かれたエピソードだが、あの菊池雄星(現・シアトル・マリナーズ)も高校時代は、背中の痛みを抱えながら甲子園での登板を志願。「今日で野球人生が終わっていいと思って投げた」とコメントしている。彼の場合は幸いにして大ケガには至らず(だが肋骨は折れていた)、プロでも見事に大成したが、高校野球では無理がたたって再起が難しくなった選手もいる。

「『甲子園で投げたい』という強い気持ちを持つのは悪いことではないですが、しかし、やはり痛みを抱えて投げるのはよくない。そうした状態で選手が『投げたい』と言っても、それを止めるのが大人の指導者の役割のはずです」(氏原氏)

 そして「今日で野球人生が終わっていい」とまで高校球児が言いだす状況は、やはり傍から見れば異常なものだ。そうした球児の悲壮な決意を「美談」として報じることは、現状の問題を放置することにほかならない。

「敗者が涙を流す姿が夏の風物詩になり、その涙が過剰に美化されているのも異常です。あの涙のカタルシスによって、高校野球のさまざまな理不尽がチャラにされているわけですから」(小林氏)

 野球に青春を捧げる高校球児たちのひたむきな姿は美しく、時に感動を誘う。しかし、美談を求めるファンや視聴者の姿勢が、結果的に球児たちを苦しめているのかもしれない……。そう自省することも時には必要だろう。

(取材・文/古澤誠一郎)
※「月刊サイゾー」11月号より転載。関連記事は「サイゾーpremium」でもお読みいただけます。

最終更新:2020/12/20 09:00
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