白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授「勘違いの地方創生」【3】

新型コロナでの地方移住は限定的!? 東京を中心に関東近県しか進まなかった現実

文=小笠原伸(おがさわら・しん)

新型コロナでの地方移住は限定的!? 東京を中心に関東近県しか進まなかった現実の画像1
※イメージ写真/GettyImagesより

 いま日本の各地で「地方創生」が注目を浴びている。だが、まだ大きな成功例はあまり耳にしない。「まちおこし」の枠を超えて地域経済を根本から立て直すような事例は、どうしたら生まれるのだろうか?

 本企画では、栃木県小山市にある白鴎大学で、都市戦略論やソーシャルデザイン、地域振興を中心とした研究を行う小笠原伸氏と、各地方が抱える問題の根幹には何があるのかを考えていく。

 第3回目は、新型コロナの影響でリモートワークが広がり、その影響もあって「地方への移住が増えている」といわれる昨今。一部いきり立つ事業者や役所関係者もいる中で、その実情について話を聞いた。

◇ ◇ ◇

――新型コロナウイルス感染拡大は、「地方創生」の考え方にも影響を与えたことと思います。リモートワークが進んだことで、都市部に住む理由が薄れて地方に移住する人が増えるのではないか、という期待論も一部で出ていました。緊急事態宣言下だった2020年5月には、7年ぶりに東京都の人口が転出超過となったことも話題になりました。小笠原先生はこうした動向をどう読んでいますか?

小笠原 「東京から地方に人口が移動するのではないか」という期待はあったと思います。地方の自治体の中でも積極的に移住を宣伝するところはありましたが、実際には、大方の人が期待していたのとは、違う方向に進んでいると考えています。結局のところ、埼玉県や神奈川県、千葉県といった東京から交通の利便性が高い地域に移る程度の限定的なものだったのではないか、と。

――実際、その3県は転入超過となっている上に、東京から移ってきた人が多いというデータも出ています。

小笠原 現在のような状況になってから急に何か動き出すのではなく、前々から地域の魅力を高めたり新しい仕事をつくったりと、用意をしていた地域が受け皿になっている。多くの自治体では、地方創生に関しては中長期的な取り組みで臨んできました。でもコロナ禍が急に、5年10年単位で時間のネジを一気に巻いてしまった。厳しい言い方をすると、各自治体の、地方創生に関する取り組みの採点の場が急に生まれてしまったのかな、と見ています。

――それはどういうことでしょうか?

小笠原 人口減が進む2025~2030年頃にこうなっているかもしれない、という状況がすでに立ち現れてしまったということです。たとえば熱海、鎌倉といった地域へ移住を希望する人が増えているという話がありますが、どの街も以前から人気のエリアです。千葉や埼玉への移住もそうで、やはり東京からアクセスが良くて住む環境も整っているところに人が集まるという結果になるなら、「地方創生がんばろう」という方向を選ばない自治体が出てきてもおかしくないですよね。

――「仕事を増やして都市部から人を呼び込もう」という考え方を、諦める自治体が出てくる可能性もある、と?

小笠原 その考え方の実効性が高くないことがわかってきたとしたら、その道には向かわない自治体が出てくる可能性もあります。そもそも地方創生は一歩間違えると”近所迷惑”になる可能性を孕んでいるんですね。大都市から人を引っ張ってこようと思って政策として取り組みを進めた結果、人口は増えたけれど、実は隣の町からの転入者が大半だった、ということが起きかねない。近隣の自治体間での動きは大きいですから。そうすると「地方創生って結局なんなんだ」という議論が出てきても不思議ではありません。各自治体がそれぞれに「私達はなぜこれをやっているのか」「どの方向に向かうのか」を考えてやらないと危ういという状況が、コロナ禍によって急に差し迫ってきています。

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