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上白石萌音『恋つづ』超えならず? TBSドラマ“胸キュン枠”の方向性に暗雲か

文=東海林かな(しょうじ・かな)

『オー! マイ・ボス! 恋は別冊で』公式サイトより

 TBSの火曜ドラマ枠にとって、2020年はヒットの年だった。『私の家政夫ナギサさん』と並びヒット作のひとつとされるのが、上白石萌音×佐藤健のラブコメディ『恋はつづくよどこまでも』だ。原作は「プチコミック」(小学館)で連載されていた円城寺マキの女性向け漫画。「魔王」と呼ばれるドSドクターの天堂浬(佐藤健)と、仕事にも恋にも一生懸命な看護師・佐倉七瀬(上白石萌音)が繰り広げる胸キュンストーリーは、ドラマ化以前から人気が高かった。

 その成功から約1年経った2021年、『恋つづ』スタッフが再び結集するという触れ込みではじまった『オー! マイ・ボス! 恋は別冊で』(TBS系)が最終回を迎える。『ボス恋』の“顔”として立たされていたのが、短期間でヒロインに再抜擢された上白石萌音だ。しかし残念なことに、『恋つづ』の視聴率に表れていたような、最終回に向けた盛り上がりは見られない。

 今期のドラマ全体で見れば決して悪い成績ではないにもかかわらず、『ボス恋』の視聴率は初回から微増するもののほぼ横ばい。SNSを見ていると視聴者はストーリーを楽しんでいるというよりも、潤之介を演じるKis-My-Ft2の玉森裕太や、間宮祥太朗が演じる“ドS先輩”こと中沢の胸キュンシーンがお目当てという印象だ。上白石の演技が特別悪いわけではないが、繊細な心の機微などを演じたとしても、『ボス恋』の視聴者がそれを求めていないのだろう。

 火曜ドラマは『わたナギ』以前は原作のある作品を映像化することがほとんどだったが、現在はオリジナルストーリーを主体に路線変更している。もちろん、見応えのある脚本なら大歓迎だが、ただ出演俳優の“胸キュン”を楽しむだけに終わってしまうのでは原作モノの劣化版にしかならない。

 前クールの『この恋あたためますか』(TBS系)に出演していた中村倫也もしかり、いわゆる“イケメン俳優”に少女漫画並みのさまざまな王道シーンを演じさせる火曜ドラマのやりかたは「ほどほどの視聴率」にはなっても大ヒットには遠い。事実、火曜ドラマの視聴率上位を占めるのは『わたナギ』や『逃げるは恥だが役に立つ』など、胸キュンと続きが見たくなるストーリー展開の両立がなされた作品だ。オリジナル作品に内容がついてこないのなら、今後はある程度完成されており評判も担保されている『わたナギ』や『逃げ恥』『恋つづ』のような女性向け漫画が原作モノでいいのではという気さえしてくる。

 ドラマの顔として人前に立つことは役者の務めであるし、主演女優の話題性や、俳優陣のきゅんとするしぐさやふるまいを存分に見せることが悪いわけじゃない。ただそうさせるのであれば、上白石をはじめとした出演者のためにも、もっと中身を大事にするべきなのかもしれない。上白石は放映前、公式サイトのインタビューでドラマについて「『そもそも普通って何なんだ?』っていうところから始まる」と答え、普通をひとつのキーワードとして上げている。物語のなかで奈未は成長して夢を手にしたが、それを「普通とは何か」に対する答えとするには微妙だ。第1話で提示した「普通」という価値観に、残り1話でどう答えを出すのか最後まで注目していきたい。

■番組情報
火曜ドラマ『オー! マイ・ボス! 恋は別冊で』
TBS系/毎週火曜日22時~
出演:上白石萌音、菜々緒、玉森裕太、間宮祥太朗、久保田紗友、亜生(ミキ)、秋山ゆずき、太田夢莉ほか
脚本:田辺茂範
演出:田中健太、石井康晴、山本剛義
プロデュース:松本明子
音楽:木村秀彬
主題歌:Kis-My-Ft2 「Luv Bias」(avex trax)
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/BOSSKOI_tbs/

東海林かな(しょうじ・かな)

東海林かな(しょうじ・かな)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

最終更新:2021/03/16 13:30

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