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『関ジャム』キリンジ「エイリアンズ」大好きすぎ問題。冨田ラボの“成熟しきっていないものの美”

「キリンジといえば『エイリアンズ』」という風潮に不服

 続いては、お待ちかね「エイリアンズ」だ。それにしても、この番組はこの曲を好き過ぎだと思う。今までに何度取り上げてきた? と言いつつ、多くの視聴者がこの日も「エイリアンズ」を目当てにしていたのだが。同曲で岩崎が注目したのは「アクセントに合わせたメロディー」である。

「合唱曲を作るときに大事なのは、歌詞にある日本語のイントネーション、アクセントをそのままメロディーに乗せてあげること」(岩崎)

「エイリアンズ」の冒頭の歌詞は「遥か空に旅客機(ボーイング)」である。この一文を言語として話す際のイントネーションを、キリンジはそのままメロディーに乗せた。「はるかそーらにボーイング」だと、アクセントは“は”と“ー”にある。これは曲も言語も変わらない。だから、決して「は“る”かそーらに」とは歌わない。そういえば、忌野清志郎も同様のことを言っていた。事実、清志郎の作った曲でおかしなイントネーションの日本語は出てこないはずだ。あと、「蛍の光」歌い出し部分のアクセントがおかしいため、『紅白歌合戦』(NHK)で藤山一郎が「蛍の光」の出だしを歌わなかったという伝説もある。メロディーと言語の関係性は、いつかこの番組でも取り上げてほしい観点だ。

 あと、「エイリアンズ」は「Everything」のように装飾ゴテゴテではない。冨田がキリンジのプロデューサーとして意識したコンセプトは「反マチュア」、即ち“成熟していないもの”だったという。

「たぶん90年代くらいからですけど、“成熟しきっていないものの美”、“でき過ぎちゃうと届かない”のようなコンセプトを僕は持っていました」(冨田)

「反マチュア」なのだから、オートクチュールなアレンジはキリンジにはそぐわない。それはコンセプトと反する。「キリンジの2人とやる場合は全く必要ない、思い浮かびもしないことです」と冨田は断言した。それ以前に、他のミュージシャンとキリンジとではアレンジャーとして向き合う姿勢が全く違うようだ。

「キリンジのアレンジの場合、3人で相談するやり方だったんです。僕が全部作って提出するソロシンガーのやり方とは違う。アレンジャーとしてよりプロデューサーという意識のほうが強かったと思います」(冨田)

 キリンジの楽曲が冨田単独のアレンジではないことは、聴けば薄々わかる事実だ。ただ、キリンジの曲もコードは複雑。この要素は、元々彼らの中にもあったものなのだろう。冨田と同様にキリンジもスティーリー・ダンから強烈な影響を受けたミュージシャンである。

 それにしても、今回は「エイリアンズ」を扱う時間が短かった。ものの10分弱程度だ。「Everything」には30分近くも要していたのに! ただ、冨田は「エイリアンズ」のアレンジにあまり口出ししていなかったと言うし、『関ジャム』もこの曲は何度も取り上げてきた。仕方なかったのかもしれない。
 
 番組放送後、「『エイリアンズ』を扱う時間が短い!」という声をSNSで散見した。でも、彼ら彼女らが本当に言いたいのは「キリンジだけで1時間丸々特集してほしい!」という願いな気がする。キリンジは「エイリアンズ」だけが突出しているわけではない。「双子座グラフィティ」「スウィートソウル」など秀曲は多い。「キリンジといえば『エイリアンズ』」のような昨今の風潮を不満に思うファンは、実は少なくない。

 

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/05/24 17:36
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