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全米No.1歌手はセーラームーン推しーーギャルもオタク女子も包括するドージャ・キャットの引力

文=小鉄昇一郎(こてつ・しょういちろう)

全米No.1歌手はセーラームーン推しーーギャルもオタク女子も包括するドージャ・キャットの引力の画像1
Doja Cat(Getty Images)

 
 
 東京オリンピックでの新体操・団体予選でウズベキスタン代表選手らが『美少女戦士セーラームーン』を模したデザインの衣装をまといテレビアニメ版主題歌『ムーンライト伝説』をバックに演技を披露した件は、ネット上でも大きく話題を呼んだ。『セーラームーン』が日本のミレニアル世代にとどまらず、海外でも広く人気を集めていることが認識できる一幕であった。

 そして海外のミュージシャンに目を向けると、『セーラームーン』愛を隠すことなく表現しているのが今回紹介するドージャ・キャットだ。ビルボード・シングルチャートTOP40の常連で、アリアナ・グランデやニッキー・ミナージュともコラボし、今年のグラミー賞にも3部門ノミネートされるなど、今最も人気を集めているアーティストの一人だ。

 ドージャ・キャットことアマラ・ラトナ・ザンディリ・ドラミニは1995年生まれ。11才から音楽を作り始め、2014年に発表した「So High」という曲でレーベルと契約。着々と評価を高めつつ、18年に公開された「Mooo!」では、ドージャが牛柄のコスチュームを着たユーモラスなミュージック・ビデオ(以下、MV)と共にバイラル・ヒット。

 

 そして20年に公開された「Like That」こそ、彼女の『セーラームーン』愛が全編に溢れたMVになっている。

 

 彼女のこのセンスは“e-girl”と呼ばれるサブカルジャンルの影響が大きい。e-girlとは、自撮りやコスプレ画像をアップする等、インターネット上で現実との別人格を装って活動する女性を指すスラングで、以前は(主に男性からの)揶揄的な表現だったが、この数年は一つのトレンドとして認知されているようだ。

 K-POPや日本のオタク文化などアジアのサブカルチャーを好み、アニメから抜け出してきたような髪の色やメイクがe-girlの美学……と言えばそのセンスは伝わるだろうか。単に「オタク女子」と言ってしまえばそれまでだが、ドージャ自らがYouTubeのVogue公式チャンネルでe-girlメイク術を披露する動画や、またTikTokでの“e-girl challenge”といった動画の人気(本邦で言う「地雷メイクやってみた」のような感覚?)を見るに、一種のスタイルとしての確立・受容が見て取れる。

 では、そんなドージャ・キャットと日本の関わりを見てみよう。19年に来日しており、東京・渋谷WWW Xでライブを行った。その際、日本のアンダーグラウンドなラッパーへのインタビュー動画で人気のYouTubeチャンネル「ニートtokyo」にも出演。

 

 また、ドージャの日本での活動はソニーミュージックがサポートしているが、日本独自の楽曲展開も活発だ。ドージャの楽曲「Say So」をインドネシアのYouTuberであるRainych(レイニッチ)が日本語でカバーしたバージョンを、トラックをtofubeatsがリメイク、MVに人気TikTokerの景井ひなを起用してリリースしている。

 Rainychは日本のアニメソングやシティポップをカバーする動画で人気で、ドージャ本人もRainychのカバーにノリノリで反応している。

 そして今年3月にリリースされたドージャの新曲「Kiss Me More」これも先ほどの「Say So」に続き緩やかなテンポにコケティッシュなボーカルが切ない素晴らしいディスコ・ナンバーだが、これをあのギャル雑誌「egg」(2014年に一旦休刊、18年にウェブメディアとして復活し、19年には復刊号を発売)専属モデルたちで結成された音楽ユニット「半熟卵っち」が日本語カバー。これがまた原曲に負けず劣らずユニークな内容になっている。

「Can You Kiss Me More?ウチだって好きぴならchu uh uuuuh♪」というキャッチー過ぎる歌いだしからして最高なこのカバー、リリックをはじめプロデュースをラッパーでZoomgalsのメンバーとしても知られるASOBOiSMが手がけており、MVは梅田サイファーやBASIなどここ数年の日本語ラップの話題作のビデオを手がけるISSEIが監督。

 洋楽~K-POPの日本語カバーというと、どうしても「企画色」ないしイロモノ感が出てしまう(それはそれで面白い例もあるものの……)場合が多い中、新鋭クリエイターによるディレクションと”ギャル”歌唱者本人らの魅力・キャラクターで絶妙な落としどころとなっている。

 ドージャ本人とそのチームが、どこまで日本での展開に携わってるのか?日本側チームの手腕とセンスによるところが多いと思うのだが、ドージャ自身のアーティストとしての魅力が、このようなケミストリーを生み出しているのではないかと筆者は推察する。

 アニメ・漫画、e-girl、ヒップホップ、TikTok、ギャル……インターネットを通じてさまざまなカルチャーやスタイルが並列に消費されるのが当たり前となった昨今でも、ポップで刺激的な存在感を示すドージャ・キャット。単に「日本のアニメ好きの海外アーティスト」の枠に収まらない、多様なカルチャーが入り混じるクロスポイントに立つ彼女の活動に目が離せない。

小鉄昇一郎(こてつ・しょういちろう)

小鉄昇一郎(こてつ・しょういちろう)

1990年生まれ。香川県在住。トラックメイカーとしてラッパーやCM音楽などに多数楽曲提供。ソロ作品として『I MISS YOU』『STUDIO MAV THEME』tofubeatsによるレーベルHIHATTから『Ge’ Down E.P.』などをリリースしている。また、ライターとしてヒップホップや電子音楽、インターネット・カルチャーや西日本のローカル・シーンなどをテーマに執筆活動も行なっており、Quick Japan、ミュージック・マガジン、ユリイカなどの雑誌/メディアに寄稿している。

Twitter:@y0kotetsu

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最終更新:2021/09/01 12:00

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