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米軍のアフガン撤退戦が参考にすべきだった!?日本が見せた3大撤退戦

その2. 大東亜戦争・インパール作戦、宮崎繁三郎中将の活躍

 近代の事例はどうだろうか。大東亜戦争におけるインパール作戦は失敗に終わったものの、その徹退戦は見事なところがあった。

 徹退戦を担当したのが、宮崎繁三郎中将である。インドとイギリスの連合軍が追撃してくるなか、宮崎中将は、次のような作戦で退いていく。

 第一陣が敵を防いでいる間に、第二陣が陣地をつくる。第一陣が防ぎきれなくなると、最後尾にいき、第二陣が防戦する。第二陣が耐えきれなくなると、今度は第三陣が防ぐという戦法であった。

 また宮崎中将は、リーダー的存在の人に分隊長を任せ、階級にもこだわらず仲の良い者同士で分隊をつくらせた。「全員戦死する必要はない。一分でもいいから長く食い止めればいい。ダメとなったらすぐ退がれ」(半藤一利・江坂彰『徹退戦の研究』青春出版社、2015)と中将は命令を下してもいる。重い兵器は捨てさせてもいるので、とても合理的判断のもとで徹退戦を敢行したことがわかる。

その3. 山本五十六海軍大将のケ号作戦

 ガダルカナルにおける徹退(いわゆるケ号作戦)も大東亜戦争における徹退戦の成功例と言われているが、これも山本五十六海軍大将の決断が要因の1つとされる。

どのように徹退するかが議論の対象となった時、山本大将は「議論している暇はない」(前掲文献)として駆逐艦を全て投入し、一気に徹退したのである。

 作戦成功の要因としては、ほかには敵の追撃・妨害活動がそれほどなかったこと(アメリカ軍としては日本軍が徹退してしまうとは思わなかったのだろう、日本軍は増援作戦をしていると感じていたようだ)、艦長らがガダルカナル島の地形と沿岸域の状況をよく把握していたことも挙げられよう。

 以上の成功例から、徹退においては、リーダーが合理的な精神を持ち、そして迅速に退却していくことが重要なことがわかる。

 では、今回の米軍によるアフガン徹退はどうであろうか。バイデン大統領はアフガンのガニ政権は、もう少し踏みとどまると考えていたようだが、タリバンの猛攻の前にそれは脆くも崩れた。情勢判断の誤りが、今回の混沌とした徹退につながったのだと思う。

 的確な情報をいかにつかみ、それを直面する事態にいかに活かしていくかも徹退戦には重要なのである。

濱田浩一郎(歴史家・作家・評論家)

兵庫県相生市出身 。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。歴史家・作家・評論家。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員・姫路日ノ本短期大学講師・姫路獨協大学講師を歴任。大阪観光大学観光学研究所客員研究員。著書として『播磨赤松一族』(新人物往来社)『北条義時』(星海社新書)などのほか、共著では『NHK大河ドラマ歴史ハンドブック麒麟がくる』『NHK大河ドラマ歴史ハンドブック軍師官兵衛 』(NHK出版)ほか多数。

はまだこういちろう

最終更新:2021/09/12 13:00
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