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『出禁の男』書評

テリー伊藤を世間は本当に捉えきれているのか? 伝説的テレビマンの狂気と情を掘り起こした『出禁の男』

文=徳重龍徳(ライター)

狂ってるだけではない、企画に潜む性善説

 テレビのコメンテーター席に座り、文字通り口角泡を飛ばして叫ぶ姿はすぐに思い浮かぶ。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」など人気番組を手がけた天才テレビマンとのプロフィールは知られている。実際にその狂気については浅草キッドの名著『お笑い男の星座』(文春文庫)などで伝説的に語られるが、本人の口からはあまり出てこない。狂気ばかりでなく「お約束という演出」「タレントによるバンジージャンプ」「素人によるロケバラエティの生みの親」などの功績も語られない。伊藤自身が「自分を語るのはカッコ悪い」とこれまで自分語りを固辞してきたという。

 本著では当時の関係者により伊藤の歴史が語られ、その間に本人の吐露が挟まれる。そこでわかるのは伊藤が狂気をまといつつも情の人であり、性善説の人だということだ。だからこそ一見、無茶で笑えるエピソードの中にも人の悲哀が浮かぶ。終盤「江頭2:50のグランブルー」の章での、江頭の命をかけた挑戦は涙なしには読めない。

 狂気と情で周りを魅了する、天才テレビマンのピカレスクロマン。

 映像化となれば、著者が以前に出版した「全裸監督」に負けない面白さになるのは間違いない。ならばネットフリックスでの映像化を願いたい。地上波ではコンプライアンスに引っかかるだろうし、テレビ東京では予算が足りないだろうから。

徳重龍徳(ライター)

ライター。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラドルを取材。2016年にBuzzFeed Japanに移籍し、俳優、声優などのインタビューやエンタメの分析記事を担当。現在は退社しライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆。

Twitter:@tatsunoritoku

個人メディア:https://outcas2.com

最終更新:2021/10/13 07:00
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