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秋元康作品は“ミステリーもどき”? 『あな番』に批難殺到でも『真犯人フラグ』のヒットは確実か

秋元康作品は“ミステリーもどき”? 『あな番』に批難殺到でも『真犯人フラグ』のヒットは確実かの画像
ドラマ公式サイトより

 2019年に放送され大ヒットした、秋元康企画・原案の『あなたの番です』の制作陣が再集結し話題を呼んでいる『真犯人フラグ』(日本テレビ系)。その第3話が10月24日の夜、放送される。主演は西島秀俊で、妻子が突然失踪した謎を探るが世間からは疑惑の夫として注目され追い詰められていく可哀想な夫・相良凌介を演じている。

 初回のラストでは凌介の元へ、失踪した息子らしき男児の冷凍遺体が送られてくる、という衝撃展開。第2話でそれは別人の遺体だったことがすぐに判明するが、ラストでは娘のものに似た靴が建設中の新居のコンクリートから飛び出ていて、誰か埋まっているのか?という、またも不穏な終わり方だった。登場人物の意味ありげな表情や発言、不可解なシーンなど作中に散りばめられた謎の数々に、視聴者考察班は大いに盛り上がりを見せている。

 だがその一方で、放送スタート当初から「どうせ色々考察しても意味ない」といった辛辣な意見も多く噴出している。大ヒットした『あな番』最終回の評価は最悪だった。先日発売された「週刊女性」10月26日号(主婦と生活社)の特集でも「最終回がっかりドラマランキング」で不名誉な1位を獲得していたほど。2クールに渡り視聴者を惹きつけた伏線の数々が回収されず、真犯人が犯行に至った理由も殺人衝動が抑えられないサイコパスというだけだったというオチは、長期間さまざまな考察合戦を繰り広げてきた視聴者には納得のいかないものだったのだ。

 日本にも数々の名作ミステリードラマはあるが、記憶に新しいところでは2021年1月期のTBS日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』が思い出される。主演の綾瀬はるかと高橋一生の入れ替わりというファンタジー要素がありながらも、ミステリー要素が満載で、次々に出現する多くの謎が最終回まで視聴者を惹きつけていた。骨となる伏線はしっかりと回収され、ところどころ未回収の謎は余韻として残されたが、何よりもラストは隠されたそれぞれの胸の内が露呈され、多くの視聴者の胸を打つヒューマンドラマでもあった。

 ミステリーの醍醐味は、伏線が思いもよらない形で見事に回収される驚きだけでなく、真犯人を犯行へと駆り立てた経緯や背景に隠されたやるせなさや人間らしさ、社会問題などが垣間見えることころにあり、それが作品に深みを与える。そういった意味では『天国と地獄』は深みのある優れたミステリー作品だったと言えるだろう。

 対して、『あな番』や『真犯人フラグ』はどうか。もしかしたら『あな番』は“ミステリーもどき”だったと言えるかもしれない。『真犯人フラグ』は今後の展開次第ではあるが、現時点で言えるのは原案・企画の秋元康はあくまで“プロデューサー”であり、目標は「エンターテイメントをヒットさせること」。そう言った意味では、考察合戦という社会現象まで巻き起こした『あな番』は大成功だったし、ヒットに導く手腕はさすがだ。『真犯人フラグ』も展開は面白いし、最終回に不安を抱きながらもついつい気になって見続ける視聴者も多い。今回も“ミステリーもどき”となるかもしれないが、少なくともラストに行き着くまでは、あの大衆を夢中にさせる見事な手腕で楽しませてくれるのではないだろうか。

 ただ、『天国と地獄』と『真犯人フラグ』にはひとつ共通項がある。前者では犯人役だった迫田孝也が、主人公の友人役で出演している点だ。迫田は、実力派でありながら、派手に目立つことなくうまく馴染む絶妙な立ち位置の俳優。連続して犯人役ということはないかとも思うが、あの胸に迫る怪演が見られることをつい期待してしまうのだ。今回はどうだろうか。

 物語はまだまだ序盤。今回、秋元は視聴者をどう楽しませてくれるのか、今後の展開に期待が高まる。

■番組情報
日曜ドラマ『真犯人フラグ』
日本テレビ系毎週土曜22時30分~
出演:西島秀俊、芳根京子、佐野勇斗、桜井ユキ、生駒里奈、柄本時生、柿澤勇人、長田成哉、坂東龍汰、迫田孝也、田中哲司、宮沢りえ ほか
主題歌:Novelbright「seeker」(UNIVERSAL SIGMA / ZEST)
音楽:林ゆうき、橘麻実
企画・原案:秋元康
脚本:高野水登
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
演出:佐久間紀佳、中島悟(AX-ON)、小室直子
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shinhannin-flag/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2021/10/24 19:00
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