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オダウエダ『THE W』優勝で浮き彫りに? “変化球”芸人が結果を出しやすい、お笑い界の内情

オダウエダ『THE W』優勝で浮き彫りに? 変化球芸人が結果を出しやすい、お笑い界の内情の画像1
『女芸人No.1決定戦 THE W 2021』Twitter(@the_w_ntv)より

 12月13日、『女芸人No.1決定戦 THE W 2021』の決勝戦が日本テレビ系で生放送され、2014年結成の吉本興業所属・オダウエダが優勝を飾った。

 今回の『THE W』決勝戦は、決勝進出10組がAブロックとBブロックにわかれ、各ブロックの1位通過者2組に加え、2位以下の8組から国民投票によって選ばれた1組が最終決戦に進出し、2本目のネタを披露。7人の審査員が一番面白かった組に投票し、もっとも多く票を獲得した芸人が優勝するというシステムだった。

 最終決戦にはAブロックからオダウエダ、BブロックからAマッソ、国民投票で天才ピアニストが進出。オダウエダ3票、Aマッソ2票、天才ピアニスト2票と審査員の票がわかれ、オダウエダが僅差で優勝となったが、この結果が物議を呼んでいる。

「ネタの完成度が高いAマッソと、誰が見ても笑えるオーソドックスな面白さがある天才ピアニストに比べて、オダウエダが繰り広げるハイテンションでシュールなコントは、独特すぎて、必ずしも“一般ウケ”するものではない。だからネット上では、天才ピアニストやAマッソが優勝にふさわしかったという声も多かったのでしょう」(お笑い事務所関係者)

 ここ数年盛り上がりを見せているお笑い賞レースだが、実はオダウエダのような変化球の芸人が大きな結果を残すことは案外多い。最近でいえば、昨年の『M−1グランプリ2020』では優勝したマヂカルラブリーのネタについて“漫才かどうか”という議論が勃発したことがあった。

「今年のTHE W決勝に進出したヨネダ2000も、完全に漫才の“型”を壊すタイプのネタです。今年のM−1決勝に進出したランジャタイも、変化球漫才の代表的な存在。さらにいえば、2019年のM-1で優勝したミルクボーイも、一見オーソドックスなしゃべくり漫才ですが、ネタのシステム自体はかなりユニークです」(同)

 変化球の芸人が結果を残すたびにネットでは議論が巻き起こるが、なぜそういった事態になっているのだろうか。

「ここ数年の賞レースの盛り上がりの結果、全芸人のネタのクオリティーが格段に上がっている。そういったなかで、オーソドックスなネタではなかなか勝ち上がれない状況があり、各芸人がそれぞれ個性を爆発させるようになっているんです。審査員の方も、芸人たちの個性をより高く評価する傾向があり、逆にオーソドックスなネタでは“物足りない”という空気がある。バラエティ番組のスタッフや構成作家も、“いかにフレッシュでインパクトがある芸人を見つけるか”という考えがあり、その結果よりコアなお笑いに向くようになっているといえます」(同)

 ネタが進化した結果、どんどんマニアックな方向へ進み始めている昨今のお笑い業界。だが、視聴者が置き去りにされている感は否めない。

「今回の『THE W』の結果を受けて、ネット上では“天才ピアニストのほうがおもしろかった”という声が圧倒的に多いのは間違いない。これはまさに、“一般ウケするネタ”と“お笑い業界で評価されるネタ”に乖離が生じているということでもあります。お笑いファンが集う劇場であれば、コアな芸人が評価されてもなんら問題はないですが、普段あまりお笑いに触れていない層も見るテレビ番組となると、あまりコアなものばかりだと難しい部分があるのも事実。そういう意味では、日テレ『エンタの神様』のような、かなり“マス向け”に作られたネタ番組も必要なのかもしれません」

 賞レースの注目度が高れば高まるほど、ネタが一般向けではない方向へ進化してしまうジレンマを抱えるお笑い業界。果たして、今年のM−1グランプリでも変化球タイプの芸人が活躍するのだろうか。

浜松貴憲(ライター)

1980年生まれ、東京都出身。大学卒業後、出版社に入社。その後、いくつかの出版社を渡り歩いた末に、現在はフリーライターとして、テレビ番組、お笑い、YouTubeなど、エンターテインメント全般について執筆している。

はままつたかのり

最終更新:2021/12/16 13:00
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