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あのアーティストの知られざる魅力を探る TOMCの<ALT View>ビーイング編

ZARDが確立した“ビーイング・サウンド”と、積み重ねた実験の軌跡

文=TOMC(トムシー)

ZARDが確立した“ビーイング・サウンド”と、積み重ねた実験の軌跡の画像1
ZARD『Brezza di mare ~dedicated to IZUMI SAKAI~』

 ビーイングを出自に持つ音楽家たちを“グルーヴ”やアレンジの観点から語る本連載。第4回(ビーイング編 最終回)はZARDが確立した“ビーイング・サウンド”と、その変遷について語っていきたい。

 >> 前回の記事「DEENはなぜシティポップを歌うのか――R&B/AORと歩んだ28年」はこちら

80年代ポップロックの最良の側面を昇華させた“ビーイング・サウンド”

 ZARDは1990年代のビーイングブームを体現する存在だ。それはチャート実績のみならず、“ビーイング的”な音楽性・方法論を確立したという意味で、非常に大きいものがある。

 デビューシングル「Good-bye My Loneliness」(‘91年2月)、ブレイク作の「負けないで」(‘93年1月)「揺れる想い」(‘93年5月)の作曲はいずれも、ビーイングのみならず90年代を代表するヒットメイカーである織田哲郎が務めている。ZARDの方向性が確立される94年までのシングル表題曲13曲中、9曲が織田の作曲である。

 この時期のZARDは、後期ポリスに通ずるリズムのキレと空間系エフェクトの妙を両立させたバンドサウンド、スターシップを思わせる煌めくシンセ、TOTO(スティーヴ・ルカサー)のようなアンサンブルに溶け込むディストーションギター、ホール&オーツの流れを組汲む鍵盤の16分バッキングなど、1980年代ポップロックの最良の側面を取り込んだスタイルを確立した。織田の強力な楽曲とこうしたサウンドの組合わせは、DEENやFIELD OF VIEWなど後続のバンド/ユニットにも引き継がれ、90年代を席巻する一大ムーヴメントを形作っていく。

 “織田哲郎期”の編曲面で興味深い楽曲としては「この愛に泳ぎ疲れても」(‘94年2月)がある。この曲は、1番サビの後で転調とともにBPMが25以上も上がり、最後までその勢いのまま駆け抜ける2段構造の楽曲となっている。

 作曲という観点では、2つの異なる楽曲をプロデューサー長戸大幸氏が1曲に合体させたという伝説を持つ「マイ フレンド」(‘96年1月)にも触れておきたい。Bメロ終わりからサビへのある意味強引とも呼びうる展開(F#m7→Gbm7/G→C)が、一気に視界が拓けるようなすさまじい爽快感を生み出している点でユニークだ。

 

変化するZARD(1):プログレッシブ・ロックと、坂井泉水の”ロック観”

 ZARDがソロユニットであることの強みは、90年代中盤以降、徐々に作品に表れ始める。

 シングル「サヨナラは今もこの胸に居ます」(‘ 95年8月)のカップリング曲であり、アルバム『TODAY IS ANOTHER DAY』(’96年7月)にも収録された「眠り」は、彼女にしては非常に珍しいレゲエのビートを取り入れた楽曲。セクションごとに複数のドラムの音色を使い分けつつ、“ZARDらしい”クリアなシンセや情感溢れるギタープレイを織り込んだ、池田大介の丁寧な編曲仕事が光っている。

 90年代後半になると、制作面で大きな変化が訪れる。98年前後を境に、織田哲郎をはじめ、ビーイングブームを支えた作編曲家が相次いで同社を離脱し始めたためだ。彼らと共に多くの楽曲を作り上げてきたZARDも当然ながら大きな影響を受け、時代の変化にもアジャストしながら「次の一手」を模索していくことになる。

 そうした中、作曲・栗林誠一郎、編曲・池田大介というお馴染みのふたりがこの時期のひとつの答えとしてまず提示したのが「運命のルーレット廻して」(‘98年9月)だ。

 ’90sテクノ的なサウンドデザインと、ピンク・フロイドの諸作に通ずるシネマティックな展開を持つロックの融合は、これまでのZARDはおろかJ-POP全体においても異色と言えるだろう。池田大介といえば、B’z「LOVE PHANTOM」「CALLING」といった非常に大胆な展開を見せる名曲の編曲にも関与しているが、それらと相通ずるものがある冒険ぶりである。

 なお、ZARDはシングル「MIND GAMES」(‘99年4月)のB面で「Hypnosis」というタイトルの楽曲を発表している。この名前から音楽ファンがまず連想するのは、イギリスのデザイン集団・ヒプノシスではないだろうか。

 1960年代後半以降、プログレッシブ・ロックの金字塔であるピンク・フロイド『狂気(The Dark Side of the Moon)』をはじめ、数々のロックアルバムのアートワークを手がけ、「アルバムジャケットを芸術の域にまで高めた」と称されるヒプノシス。多くの日本人には耳慣れないであろうこの単語をタイトルに冠した楽曲がカップリングにあるがゆえに、一見明るくポップなA面曲「MIND GAMES」についても、ジョン・レノンが精神世界の深みを描いた同名曲(‘73)を想起せずにいられない。これまで坂井泉水のロック観はおろか、リスナーとしての趣味さえ当人から語られたことはほぼ無いと思われるが、その一端を想像せずにはいられない、非常に興味深いシングルだ。

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