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俳優・高橋一生が演じる「なじめない人間」の抗いがたい引力

文=SYO

俳優・高橋一生が演じる「なじめない人間」の抗いがたい引力の画像1
高橋一生 (写真/Getty Imagesより)

 2021年の“ドラマ締め”、そして2022年の“ドラマ始め”がどちらも高橋一生の主演作という方は、多いのではないか。2021年の12月27日~29日には『岸辺露伴は動かない』(NHK)の新作が3夜連続放送され、2022年の1月10日からは、岸井ゆきのとダブル主演を務めた『恋せぬふたり』(NHK)が放送開始(全8話)。前者は『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ漫画&小説の実写化作品で、後者はアロマンティック・アセクシュアル(他者に恋愛感情や性的感情を抱かない)をテーマにしたコメディ。どちらも他の作品では観られない独自性が際立っている話題作だ。

 その2作品に立て続けに主演する高橋一生は、“なじめない人物”が抜群にハマる役者といえるだろう。『岸辺露伴は動かない』で演じた岸部露伴は唯我独尊を地で行く漫画家(だが根底には正義感と道徳心を備えている)で、『恋せぬふたり』では、恋愛もセックスもしたくない男性に扮する。

 地上波のテレビドラマでいえば『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系・16年)『カルテット』(TBS系・17年)などの坂元裕二脚本作品、そして『東京独身男子』(テレビ朝日系・19年)などでも他者、ひいては社会との間に溝を感じるキャラクターを見事に体現してきた。『凪のお暇』(TBS系・19年)で演じた営業マンは人心掌握術に長けた人物だが、これらはあくまで仕事上のスキル。自分のことになるとコントロールができなくなる、という自己矛盾を抱えたキャラクターであった。

 他者や社会との距離感は、誰しもの心に内在しているもの。ただ、その度合いが強い人物をここまで的確に、かつ哀愁の残り香を漂わせて体現できる役者は、やはり高橋一生をおいて他にはいない。通常、演じる役がマイノリティ(少数派)であればあるほど、相対的に観客や視聴者との接点が減っていくものだが、高橋はその表現力でもって多数を納得・共感させてしまう。今回は、その魅力を映画作品にフォーカスして紹介していきたい。

“閉じた”芝居でも観客に「わかる」と思わせる受け皿の広さ

 まずは、「なじめない」という感覚を最小/最大に振り切った2作品から。2020年に公開された『ロマンスドール』と『スパイの妻〈劇場版〉』だ。くしくも、高橋はどちらの作品でも蒼井優と夫婦役を演じている。

 『ロマンスドール』は、あるラブドール職人を主人公にした物語。彼と“妻”の関係性を軸に、愛の複雑さや様々な嘘を描く。「自分はラブドール職人である」という真実を明かせないまま結婚してしまい、妻との日常に少しずつ嘘や隠し事が増えていく主人公。それは、妻も同じだった。やがて、衝突の日を迎えるふたり。その“事件”以降、“嘘”たちが、ふたりだけでしか紡げない“愛”へと変換されていく点が美しい。

 本作は、自分に最も近い存在である配偶者との間に生じるディスコミュニケーション、ひいては完全には分かり合えない“他者”である、という哀しみを見事に描き切った1本。「ままごとみたいな結婚をして、それでも僕らは夫婦というものを試行錯誤した。でも、永遠に続くものはない。永遠に手に入らないものが、あるばかりだ」といった主人公のモノローグにもあるように、愛情と相互理解の質量は必ずしも一致しないものだ。

 好きでたまらないから結婚したはずなのに、何かが満たされず、心が離れていく――。そうした実情を前にした戸惑いや後ろめたさを、高橋は浮遊する目線や伏し目がちな顔の角度、朴訥とした語りなどで絶妙に表現。最愛の人と家にいながらにしてどこか居心地が悪く、その状況に罪悪感を覚えているというなんとも言語化しづらい(だが我々の日常に必ず訪れる)状況が、高橋の繊細な演技によって具現化されていくさまが見事だ。

 言ってしまえば、本作で高橋が魅せる芝居というのはあくまでクローズドな“閉じた”ものであり、孤独を抱えた個人であることを強く認識させる。それでいて、観客に「わかる」と思わせる受け皿の広さを保っているから驚きだ。ひとりを生きるが、他者を拒絶しない――。高橋一生という役者の卓越したバランス感覚が現れ出た作品といえよう。

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