『鎌倉殿』の時代における愛人たち――頼朝の愛人「亀の前」と、義経の母の“愛妾説”

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

頼朝を勝利に導いた男・上総広常と「裏切り者」畠山重忠、それぞれの頼朝との関係の画像1
亀(江口のりこ)|ドラマ公式サイトより

 『鎌倉殿の13人』第7回は、源頼朝の運が向いてきたのがわかるお話でしたね。わざと遅刻することで頼朝の大将としての器量を図ろうとした上総広常(佐藤浩市さん)を「帰れ!」と開口一番で叱責して見せるなど、頼朝が武家の棟梁としての器を示し始めた回でもありました。頼朝のもとに各地からの援軍が駆けつける様に「少年漫画みたい」「展開が熱い」とネットも沸き立っていたようです。

 今回は、登場しただけでネットが盛り上がった「亀」こと亀の前(江口のりこさん)と、源義経(菅田将暉さん)についてお話をしましょう。

 鎌倉幕府の公式史である『吾妻鏡』によると、亀の前は流人時代から頼朝の世話をしていた女性で、「妾」だったそうです。同書によると、「良橋太郎入道」なる人物の娘だったとかで、地元の有力者の一族に連なる女性だったと思われます。

 以前、「りく」こと牧の方の実家・牧家と北条家の関係についてこのコラムでお話しましたが、坂東(関東)の有力者たちは、京都の朝廷にコネのある人々と縁故を持つことに必死でした。流刑の身であった頼朝もそのうち許され、京都に戻ると考えられていましたから、亀の前の父・良橋太郎入道は朝廷とのつながりを築くために頼朝の愛人候補者として娘を差し出したのだと考えられます。

 つまり、史実において亀の前は、頼朝が北条政子と出会う前からの“馴染み”でしたが、頼朝との妾関係が抜き差しならないくらいに深まったのが、『吾妻鏡』によると寿永元年(1182年)だったそうです。

 当時、頼朝・政子夫妻は鎌倉に在住していましたが、政子は(後に頼家となる赤子を)妊娠中でした。頼朝と亀の前は(おそらく政子の意思で)すでに離れて住むようになっていたのですが、彼女は頼朝の意向で鎌倉にこっそり呼び寄せられています。亀の前は「顏貌(がんぼう)の濃やかなるにあらず、心操の殊(こと)に柔和なり」……顔だちが美しいだけでなく、性格がとても柔和で、(おそらく政子とは正反対の女性だったことから)頼朝の寵愛が深まったようなのです。しかし、この後、夫と亀の前が復縁したことを知った政子は恐ろしい報復に出ます。まぁそれについては、ドラマで確実に映像化されるでしょうから、またそのときにでもお話しましょう。

 鎌倉時代以前の亀の前は、頼朝の中では、当時の言葉でいう「召人(めしうど)」の一人にすぎなかったと思います。召人というのは、男性より身分がかなり低く、肉体関係はあるけれど、正式にお付き合いをしようとはならなかった程度のお相手だと説明すると、どういう立ち位置かなんとなくわかるでしょうか。以前、当時の北条家のステイタスは低かったため、同時代の人々の感覚では、北条政子は頼朝の正室ではなく「妾」でしかなかった……とお話をしたと思いますが、「召人」は「妾」よりもさらにカジュアルな関係です。

 しかし、かつての召人であり、すでに距離を置いていた亀の前を頼朝が鎌倉に呼び寄せたのは、激しい性格の政子といることで、彼女とは真逆の性質の持ち主だった亀の前がさらに魅力的に思えるようになって関係が再燃した、もしくは以前よりも激しく燃え上がってしまったからでは……と思われます。妊娠中の政子のあれこれについて『吾妻鏡』は沈黙していますが、頼朝に対してキツい言動があったのかなぁ、とも勘繰りたくもなるわけですね。通年の大河ではサラッと流されがちなところではありますが、三谷大河では濃く描きそうなので筆者は今から楽しみです。

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