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今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識⑦

『魔女の宅急便』タイトルをヤマト運輸が問題視!? 実はトラブル続きだった!

飛行機オタクが作る多様な飛行シーン

 鈴木プロデューサーの宣伝戦略によって火をつけられた『魔女宅』は、約43億円の興行で平成元年の国内興行ランキング3位を記録。スタジオジブリにとって初めての大ヒットとなり、この成功を受けて翌年の『おもひでぽろぽろ』以降は、日本テレビ‐東宝とのトライアングル体制が確立する。日本テレビのCMと金曜ロードショーで繰り返し放映され、都市部に多くの劇場を持つ東宝の配給力によってヒットは確立し、スタジオジブリの名前はブランド化した。

 もちろん『魔女宅』のヒットは宣伝が巧みだったというだけではない。『魔女宅』の見どころは魔女である少女キキが、箒で空を飛ぶときの浮遊感だ。空高く舞い上がったかと思えば、人が行き交う雑踏の中を貫くように飛んで行く。建築物との対比で空を飛ぶ爽快感を表現するのは、監督が手掛けた『未来少年コナン』や『天空の城ラピュタ』でも見受けられ、ダイナミックな飛行シーンの数々はさすが航空機マニアでもある宮崎監督の演出が冴えわたっている。

 そういえば『魔女宅』は実写版もつくられたけど、作品の見どころが飛行シーンにあることを全く理解していないスタッフによってつくられたキキが飛ぶシーンは、グリーンバックの前で吊った役者を真横から撮ってふらふら揺らしているだけという、爽快感も何もあったもんじゃない!

 ちなみにアニメ版は原作の絵本とは完全に別物になってしまい、原作者が苦言を呈するほど宮崎監督のオリジナルになってしまったが、延々と語り継がれる傑作となった。原作を基に作られた実写版と比較しても、宮崎駿の漲る才気との違いが露になってしまったことが災いしたか、興行収入は約5億円に留まった。そして実写版を配給したのは東映だった……。

 東映はジブリ作品を配給停止したことを、後に血の涙を流すほど悔やんだと思われる。だから実写版の配給で取り戻そうとしたのかもしれないけど、残念な結果に……。

 おちこんだりもしたけれど、私はげんきです(アニメ版に糸井重里がつけた名キャッチコピー)。

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2022/04/29 20:01
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