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今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識⑤

『名探偵コナン』モブキャラから声優のアドリブで準レギュラーになった高木渉刑事

文=しばりやトーマス(しばりや・とーます)

『名探偵コナン』モブキャラから声優のアドリブで準レギュラーになった高木渉刑事の画像1
日本テレビ『金曜ロードショー』公式サイトより

 今週の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は名探偵コナンの劇場版最新作『ハロウィンの花嫁』公開記念として『特別編集版 名探偵コナン 本庁の刑事恋物語~結婚前夜~』を放送。

 劇場最新作では準レギュラーキャラとなっている高木渉刑事と佐藤美和子刑事の結婚式がメインの話になるので、1000話以上(!)に渡るテレビシリーズの中から2人のエピソードをチョイスし再編集した、コナンシリーズ初の特別企画である。

 高木刑事というキャラクターは作品内でも、登場時から準レギュラーキャラとして定着するまで変わった経緯を持つ。

 最初はモブキャラ(群衆の中にいるような、脇役ですらない無名のキャラ)の刑事という扱いで声も、レギュラーである少年探偵団の小嶋元太をアテていた高木渉が兼役で担当。当時まだ元太の出番自体が少なかったため、高木は出番を増やし、元太と刑事の両方で呼ばれたいと考え、劇中で刑事の名前を聞かれた時にアドリブで「高木です」と返したことで役名が本人と同じ「高木渉」に決定。もともとはアニメオリジナルキャラだったのに、原作にも逆輸入の形で登場した。

 その後は年上の佐藤刑事とのなれそめ、やがて恋愛関係に発展していく「本庁の刑事恋物語」シリーズによって人気が定着し、ついには劇場版のメインキャラにまで出世してしまうのだった。まさに本庁刑事の出世物語!

 高木刑事は生真面目でお人よしの性格が災いして、ドジを踏む役回りが多く、「僕みたいな人間は佐藤さんとは釣り合わないよな~」とあと一歩が踏み出せず、コナンをはじめ超人的な活躍をするキャラクターが多い中で読者が親近感を覚えられる人物で、こういう人間の活躍と成長が見られるのが放送開始からまもなく30年を迎える作品の魅力なのだなあと実感。

 またこの特別企画に合わせ2003年のお正月スペシャルとして2時間枠で放送された『揺れる警視庁 1200万人の人質』を、デジタルリマスター化して再放送されている(コナンは長寿番組のため初期の放送は当然アナログ放送であり、わざわざデジタルリマスター化して再放送している回が存在しているのだ)。

 これは警視庁爆発物処理班コンビの萩原研二と松田陣平(モデルは『太陽にほえろ!』の萩原健一と松田優作)が登場する回で、この2人は当初回想シーンでしか登場しなかったり、顔がデザインされていなかったりという高木刑事ばりの端役扱いながら、このシリーズで人気が爆発し、人気投票でレギュラーキャラを差し置いて上位にランクインし、その後は公式スピンオフのメインキャラに昇格するなどし、原作者、読者、視聴者も想像できないほどの広がりを見せるのもコナンシリーズの魅力だろう。

 この回は高木刑事と佐藤刑事の関係が大きく進展するきっかけの回でもあるので、金ローの特別企画でも話の中心に添えられるだろう。

 もしアドリブで「高木です!」とやらなかったら、本作の歴史は変わっていたのかもしれない。

 高木(声優のほう)はアドリブにはそれほど熱心ではないタイプだが、コナンの開始直後に出ていたテレビ東京系列のアニメ『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』では、海外の翻訳作品であるため「子供に伝わるように面白おかしいものにしよう」という方針で千葉繁、子安武人、藤原啓治、飛田展男、中村大樹、長嶋雄一ら中堅、ベテランを交えた声優陣がコメディタッチを強調した演技やアドリブを競い合うように入れていた。

 コナンとビーストウォーズ、作風的にはまったく違うがアドリブとコメディによって、高木渉の世界は大きく開かれたといっても過言ではない。『ハロウィンの花嫁』の舞台挨拶でも人気キャラの安室を演じている古谷徹が、自身のセリフのパロディをやった後で「高木渉じゃない、高木渉だ!」と全力で切り返して会場を沸かせていた。

 アドリブが切り開いたモブキャラからの出世街道。どんな脇役にも物語がある。そんな高木渉の生きざまを僕も見習いたい!

しばりやトーマス(しばりや・とーます)

しばりやトーマス(しばりや・とーます)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

最終更新:2022/04/15 11:00

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