『鎌倉殿』の「ラスボス」後鳥羽上皇は文武に優れ、体力自慢の“超人”だった?

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

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後鳥羽上皇(尾上松也)|ドラマ公式サイトより

 『鎌倉殿の13人』、14日放送の第27回「鎌倉殿と十三人」では、尾上松也さん演じる後鳥羽上皇が登場し、頼朝(大泉洋さん)が「飲水病(いんすいのやまい)」、つまり糖尿病をこじらせて亡くなったのではないかと推理する“名探偵ぶり”を発揮して、ネットで話題を呼びました。

 尾上松也さんによると、『鎌倉殿』における後鳥羽上皇は、主人公・北条義時(小栗旬さん)にとっての「ラスボス(=最後の大敵)」のような存在になるそうです。実際にも、歴代の天皇の中でも傑出した存在感で知られる方だといえるでしょう。日本文学史に残る『新古今和歌集』の編纂を命じただけでなく、後鳥羽上皇自身もこの時代を代表する名歌人でした。天才歌人の藤原定家とも互角以上に渡り合うことができました。管弦(音楽)も達者だったようです。

 上皇が才能を発揮したのは文化系の活動には限らず、運動神経も抜群だったようです。ドラマの登場時には蹴鞠の稽古をしていたようですが、史実でも蹴鞠、相撲、流鏑馬(やぶさめ)などでも際立った才能を見せました。ちなみにこの時代の相撲は、現在我々が目にする相撲よりもレスリングなどの格闘技に近いもので、鎌倉でも武士たちが筋力トレーニングの一貫として行っていたものです。

 後鳥羽上皇はかなりの健脚の持ち主でもありました。平安時代後期(=院政期)の上皇たちはこぞって熊野大社(現在の和歌山県)にお参りしました。これがいわゆる「熊野御幸」ですが、後鳥羽上皇は建久9年(1198年)、19歳の若さで上皇になった年から、「承久の乱」で北条義時との戦に敗れる直前の承久3年(1221年)までの24年間に、なんと29回も「熊野御幸」を行いました。

 都から熊野の本宮大社までは往復600キロもあります。後鳥羽上皇は1000人近くのお供を連れ、往復1カ月に及ぶこの道のりを、多い時には1年に2回というペースで旅したのでした。特に大変なのが熊野の山中に入ってからです。上皇であっても、基本は自分の足で、三昼夜を歩き通さねばならないからです。道中は険しい山道の連続ですが、陰陽師が決めた日程があり、暦上の吉日に熊野の本宮大社に確実にお参りせねばならないので、予定よりも長く休むことは許されません。

 ちなみに歴代の上皇・法皇の中で、後白河法皇だけが熊野詣の「満願」とされる33回(但し諸説あり)の参拝を達成していますが、後鳥羽上皇もかなりのハイペースで「熊野御幸」を繰り返していたので、もし北条義時に承久の乱で敗れ、隠岐島に流刑されたりしなければ、おそらく後白河以上の早さで満願を達成できたのではないかと思われます。

 建仁元年(1201年)10月の「熊野御幸」の記録を、後鳥羽上皇にお供した藤原定家が書き残しています。当時40歳だった彼は「咳病、殊(ことさら)に起こり、なす方なし。心神無きがごとし」……持病の気管支炎がひどくなって、死にそうになった、などとつらい本音を漏らしていますが、一方で、上皇がへばったというような情報はありません。定家よりも20歳近く後鳥羽上皇は若かったのですが、それでも毎年、これだけのハードな旅をこなしつづけられた後鳥羽上皇は“超人”だったといえるでしょう。

 後鳥羽上皇がこれほど熱心に「熊野御幸」を繰り返した理由は、ひとつに、中世において政治と宗教は現在以上に深く結びついており、神仏のお導きや当地で得られる巫女の託宣などが目当てだったからです。

 しかしこれは、表向きの理由といってもよいでしょう。少なくともある時期からは、鎌倉幕府倒幕にむけての布石でもあったとも言われていますね。後鳥羽上皇は、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の総称)の関係者たちと交流し、とりわけ、熊野三山の統括者で、「熊野別当」と呼ばれる役職の人々と懇意になっていました。信徒たちや当地の水軍とも絆を深め、きたるべき鎌倉との交戦時には彼らを自分の味方に付けようとしていたとか……。『承久記』によれば、承久の乱の際は熊野三山から数千名の僧兵が派遣され、上皇の味方をしたそうです。そのため承久の乱が上皇側の敗戦で終わると、熊野三山にも厳しい裁きが下されることになりました。具体的には、領地の没収や、関係者が晒し首になるなどしています。(1/2 P2はこちら

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