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有村架純×中村倫也『石子と羽男』 声を上げることの尊さと「傘」…“らしさ”溢れる最終回

文=東海林かな(しょうじ・かな)

有村架純×中村倫也『石子と羽男』 声を上げることの尊さと「傘」…“らしさ”溢れる最終回の画像
Paravi配信ページより

 有村架純と中村倫也がW主演したTBS系金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』が、9月16日の放送でついに最終回を迎えた。

 「結局ね、騙されるやつは騙され続けるんですよ。力の弱い者には情報が回らない。知らないから負け続ける」というエンジェル投資家・御子神(田中哲司)のセリフからはじまった最終話。小洒落たバーで酒を飲み交わすのは、石子(有村架純)の父・綿郎(さだまさし)だった。「『スイミー』って知ってます? あの弱くて小さな魚がた~くさん集まる話。弱くて小さな魚は、いっぱい集まっても弱いのかな?」と問いかける綿郎に、御子神は「絵本? おもしろいこと言うね、綿郎さん」「集団になろうが、弱い人間は弱いままでしょ」と当然のように返す。冒頭の二人の会話は、まさにドラマの展開を示唆するものだった。

弱い人間ではだめなのか?という問い

 前回、放火殺人事件の容疑者として逮捕されてしまった大庭蒼生(赤楚衛二)。実際に現場に居合わせたのは弟の拓(望月歩)だと気づき、かばおうとして罪を一度は認めた大庭だったが、石子と羽男(中村倫也)の活躍により、亡くなった日向理一郎(平田広明)が焼身自殺を図ろうとしていたことが明らかになり、拓の証言によって大庭は不起訴処分となった。

 拓の証言からさらに、日向はガソリンをかぶったものの、ライターがうまく着火せず、そこに何者かが火のついた「青い」ライターを投げ込んだことで日向が亡くなったということが判明。現場にも確かに2つのライターが残っており、信憑性を感じた警察は“もうひとりの人物”を追うが、捜査は行き詰まっていた。

 日向が自殺をはかった原因となった不動産仲介会社「グリーンエステート」による不動産投資詐欺は、綿郎が追っていた「四つ星ハウジング」による詐欺事件と共通点が多く、同一グループによる一体的な詐欺の疑いが強いため、日向の妻・綾(山本未來)と、「四つ星ハウジング」の被害者・高岡(森下能幸)が共同で訴えることに。そこに、数日留守にしていた綿郎が帰ってくる。綿郎は情報収集のため、素性を隠して「四つ星ハウジング」の社長・榊原(森本のぶ)が経営するバーに通って常連となり、榊原が昨年、石川県と富山県にたびたび出張に行っていたことを掴み、現地に調査に出ていたのだ。そちらは空振りだったが、榊原のバーで御子神と顔見知りになったという。石川での調査で、たまたま御子神の写真を見つけたと綿郎が写真を見せる。榊原が映った写真の奥に確かに御子神が映っている。すると大庭が、御子神と一緒にいるのはグリーンエステートの元代表・刀根(坪倉由幸)だと指摘。御子神は榊原のバーの常連であり、御子神を通して榊原と刀根がつながっていた可能性が浮上する。

 しかし、詐欺事件については法律の抜け穴をうまく突いており、なかなか裁判を有利に進められるような証拠が見当たらない。グリーンエステートと四つ星ハウジングはどちらも同じ石川県のリフォーム会社を使っており、もはやここを攻めるしかない。何度も電話をし、連絡がついたのは口頭弁論前日だった。石子は石川へと行き、必死の説得により、刀根との打ち合わせを録音したボイスレコーダーを手に入れるが、東京へと戻ろうと急ぐ道中、バイクに乗った2人組にバッグをひったくられ、証拠となるボイスレコーダーを奪われてしまう。だが、リフォーム会社を訪れる際、石子は自分を監視するような怪しい人物がいたことを思い出し、それが御子神の付き人であることが判明。御子神が裏で糸を引いている線が濃厚になる。

 さらに大庭のひらめきにより、拓が証言したライターの「青い」色は、兄の名前・蒼生(あお)にある「蒼」、つまり緑色に近いブルーのことを指していたことに気づき、そして刀根が世界で1つしかない緑のライターを持っていたことを思い出す。刀根は、羽男の姉で東京地検の若手エース・羽根岡優乃(MEGUMI)の取り調べを受け、知らぬ存ぜぬを通すが、犯人しか知りようのない「緑のライター」とつい口にしてしまう。起訴される前にすべてを打ち明けたほうが量刑に影響が出ると説得された刀根は、ついに日向を殺したのが自分であることを白状し、さらに不動産投資詐欺についても、御子神の指示に従っただけとしながらも、加担していたことを自白。おかげで詐欺事件の裁判は一転、原告側の要求をすべて飲む方向で進めると被告側の弁護士が降参宣言をすることになった。

 これにて一件落着、刀根の証言で御子神も逮捕……かと思いきや、御子神は刀根の供述は苦し紛れに言ったものだとして事実無根を主張。刀根と榊原への指示はすべて捨てアカウントで行い、発信元もたどれない。マネーロンダリングも徹底しており、詐欺事件に関与している証拠を一切残していなかったため、すぐに釈放されてしまった。諦めかけたその瞬間、羽男は御子神が常習的に行っていた「タバコのポイ捨て」に目を付ける。1カ月の間で53回に渡る御子神のポイ捨ての証拠を集めた石子たちの告発を警察が受理したことにより、御子神は廃棄物処理法違反の現行犯で逮捕されることに。「こんな大したことない罪じゃすぐ釈放される。結局そこまでってことですよ」と鼻で笑う御子神だったが、しかし現行犯逮捕によるイメージダウンの影響は大きく、官邸も関わるカーボンニュートラル施策理事の座を解任され、世間からも叩かれることに。「弱い人間」とあざ笑ってきた一般市民が上げた声に、御子神は足をすくわれたのだった。

『石子と羽男』らしさに溢れたラスト

 一介のマチベン(町の弁護士)でしかない石子と羽男は御子神に敵わないのか……と思いきや、最後に一泡吹かせるという痛快なラストに視聴者たちは大満足だった。金と名声と権力を持ちながら悪事を働く御子神に対し、最後まで不動産投資詐欺の罪を認めさせることはできなかったことは、とても苦いリアルな結末だ。だが、そんなマチベンの限界を描きながら、一矢報いるためにタバコのポイ捨てという一見「そんなコト?」と言いたくなる、御子神のような男がバカにしている“犯罪”で攻めるというのは非常に『石子と羽男』らしい見事な展開だった。

 そして、弱い人間であることは悪いことではない、ただ普通に日常を送りたいと願い人たちこそがこの社会を支えているのだという羽男の言葉はまさに、想定外の事態に弱く、手が震えてしまうマチベンの彼自身の叫びでもあっただろう。弱い自分を認められるようになった羽男の成長は、裁判官である父親・泰助(イッセー尾形)との終着点にも現れていた。不動産投資詐欺の裁判に勝訴した羽男は、父親との確執に決着をつけようと一歩踏み出す。泰助は「自分の家族はみな優秀」と長年に渡り羽男にプレッシャーをかけ続けてきた、いわば「毒親」だ。そんな泰助に、羽男は「私は頼りない弁護士なんです」と訴える。公判で羽男がパニックになるさまを目の当たりにした泰助は「そうだね。君は優秀ではないね」「今後一切、私は手助けしない。いいね?」ときっぱり言い放つ。だが、そんな父親の失望が、羽男にとっては救いだった。「父さんの期待に応えられないのは、申し訳なく思っています。でも、やっと本当の俺を見てくれた。それが嬉しいです」と言う羽男に、泰助は「ああ……。私と理想が違うんだ。まぁ、君には君のやりたいことがあるんだろ」「頑張りなさい」と目をそらしながら声をかける。どこまで羽男の気持ちを理解しているかははっきりしないが、安易に円満解決するわけではない親子関係もまた、ほろ苦くもリアルな結末で、同時に、声を上げ続けた羽男の“勝利”は視聴者たちを大いに感動させた。

 こうして訪れたラストシーン。『石子と羽男』では毎回、ふたりがそれぞれ傘を差すタイトルバックが流れるが、ドラマの最後は、お互いがお互いに傘を差した。このドラマにおける傘は、弱い人に寄り添い、守ろうとすることの象徴だ。「この前の裁判、まだ弁護士として一人前どころか、半人前にもなれてないなって感じてさ。だけど石子さんと一緒だったら、ニ人前どころかそれ以上になれる感じがあってさ。これからも俺の隣にいてください」と、“相棒”としての石子に頭を下げる。そしてラストチャンスの司法試験に向かった石子に傘を差したのは、やはり羽男だった。初めての司法試験で、会場のすぐそばで交通事故を目の当たりにしてしまい、以来、司法試験に挑戦するたびに思い出してしまってずっと合格できずにいた石子。今回も事故の現場まで来て思わず足を止めてしまったが、「何とも絶妙なタイミング」で羽男が現れ、石子に日傘を差す。笑顔を取り戻した石子は、「行ってきます」と言い、足を一歩踏み出すのだった。自分から諦めることをやめた石子はきっと試験に合格し、「相棒弁護士」として羽男の隣に並ぶのだろう。

 弱いことや、弱いと認めることは、恥じることではない。ましてや、声を上げることを諦める理由にはならない。「毎年増えていく法律のほとんどは、力の弱い人に寄り添ってできたものです。その方々が声を上げた歴史なんです」。ドラマで石子たちが訴えてきた「声を上げる」ことの尊さが、この最終回には詰まっていた。そして、「ふたりならニ人前以上の爆盛りになれる」石子と羽男の関係は、弱くて小さな魚も、集まれば強くなるということでもあるのだ。素晴らしいラストに喝采を送りたい。

■番組情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー
TBS系毎週金曜22時~
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし ほか
脚本:西田征史
音楽:得田真裕
主題歌:RADWIMPS「人間ごっこ」(Muzinto Records / EMI)
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山本剛義
編成:中西真央、松岡洋太
製作著作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/

東海林かな(しょうじ・かな)

東海林かな(しょうじ・かな)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

最終更新:2022/09/20 06:00

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