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偏差値は時代遅れ ― 入試に課題解決能力が求められる時代の“本当にいい大学”とは

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 今年7月、新卒向けの就職情報サイト「就活の教科書」が掲載した「【行く意味ある?】Fランク大学一覧 | Fラン大学の実態,偏差値,女子あるあるも」という記事が炎上した(現在は削除済み)。

 同記事が煽った“Fラン”という言葉はすでに、大学入試の実情にそぐわず、さらにはその後にある企業の採用にも変化が起きている。そこで考えられるのは、すでに偏差値という指標が、機能不全を起こしつつあるという実情だ。

 そもそも、Fラン判定の材料のひとつとなる大学入試の偏差値が少子化や入試の多様化により、多くの受験生の中から優秀な学生を選抜するという機能を徐々に失いつつある、というのは多くの教育関係者の間ですでに共通の認識になりつつある。教育ジャーナリスト&大学コンサルタントの後藤健夫氏は言う。

「今後、模試受験者が限られ、中央大学が偏差値45、明治大学商学部が偏差値50、東京大学文科一類が70というように、ごく一部の大学だけで偏差値は成立するかもしれませんが、ほとんどの大学では意味を消失するでしょう。社会における大学の存在意義や立ち位置も大きく変わります。偏差値が機能しなくなるなかで、高等教育の場において学生の能力をどう、新たに定義し評価していくかが課題です」

 2007年に学校教育法が改正され、文部科学省は「学力の三要素」を掲げている。ひとつは『知識・技能』、ふたつ目は『思考力・判断力・表現力など』、そして最後に『主体的に学習に取り組む態度』だ。こうした国の教育方針を受けて、2021年度から始まった大学入学共通テストでは、従来のように暗記するだけでは答えられない出題が増えているという。

 記憶に新しいところでは、2022年度の大学入学共通テストにおける数学の平均点の低さが、世間の注目を集めた。後藤氏が高校教員たちにヒアリングしたところによると、点数が低かったのは、解法パターンを覚えている生徒たちだったそうだ。例えば、模試では80点取れる生徒が、20~30点しか取れないという事態がそこかしこで起きた。

 というのも、大学入試センター試験ならば大問を解いて終わりだったが、共通テストでは大問を解いた考え方を他の事象に応用することが求められる。つまり、思考を転移する能力を測る問題が課されるようになってきた。

「思考の転移は、思考パターンが多様なため、出題予想が難しく過去問を解いても対応できません。問われているのは“その場で何とかする力”。言い換えれば、知識を総動員して課題解決する能力です。

 思うに教育現場は未だにSociety3.0であり、工場モデルです。一律一斉、正解主義、自前主義、予定調和がその特徴で、「知識注入型」教育が適していました。しかし、Society5.0では、これらの主義や状態を脱して、課題解決やプログラミング教育に象徴される「構造化、抽象化、転移」する能力を求められ、深く考える「探究学習型」教育が適しています。

 一方で、私立大学が行う一般選抜では、探究学習型能力を問うことは難儀です。試験から合格発表の時間が短く、こうした能力を判定しやすい記述式問題では採点が間に合わないからです。今後、一般選抜でいかに探究学習型能力を問う仕組みをつくるかが、私立大学の課題です」(後藤氏)

 文科省が挙げる「主体的に学習に取り組む態度」も、評価・数値化することが非常に難しい要素だ。覚えることを中心とした試験では採点も効率的で能力を計測しやすかったが、不透明な時代に対応するための能力は新たな評価基準が必要になり、定量化も難しく、教育機関側がどう可視化していくかが大きな課題となってくる。

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