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売れた芸人の“見た目が良くなっていく”現象はなぜ起きる?お笑いと清潔感の関係性

売れた芸人の見た目が良くなっていく現象はなぜ起きる?お笑いと清潔感の関係性の画像1
檜山豊 公式ツイッターより

 とあるネット記事で現代における「芸人と容姿」について分析しているものを目にした。記事によるとこれまでお笑いの基本とされてきたベタな笑いの取り方に対して論争が起きたり、SNSで炎上騒ぎになることが多くなった。その典型的な例が「容姿」に対するイジリや自虐ネタに関する笑いが、とくに厳しい目で見られており、芸人たちは悩んだり戸惑ったりしているようだ。

 確かに数年前から「容姿イジリ」は問題視されており、お笑い界においても触れづらくなってきている手法であった。その影響もあり、「3時のヒロイン」さんや「尼神インター」の誠子さんなど、今まで「容姿イジリ」で笑いをとっていた芸人たちがこぞって「容姿イジリ」を封印し、時代に合わせた笑いの方法を取り入れるようになりつつあった。

 この「容姿イジリ」についてはあらゆる角度で分析されて、議論されることが多く、基本的な問題点が「イジリ」イコール「イジメ」に直結するか否かという点であり、お笑い芸人がある程度テクニックを持っていれば「イジリ」は「ボケ」の範疇になり問題が無いという意見と、お笑いに「ルッキズム」は必要なく、「イジメ」の可能性がある笑い自体無くなっても問題が無いという意見が常に対立している。

 とまあこのような「容姿イジリ問題」の根本的な話は、お笑い好きやお笑いに興味がある人ならすでに何かしらの記事を読んでおり、今さらと思われる方も多いと思う。なので今回はお笑いにおける「ルッキズム」なのだが、「容姿イジリ」等に注目するのではなく、お笑い芸人にとって「ルッキズム」は必要かどうかを元芸人目線で分析していきたいと思う。

 僕の考えでいうとお笑い芸人に対して「ルッキズム」は間違いなく必要だ。勘違いしないでほしいのは、芸人が見た目で笑いをとったり、他人の容姿を笑いに変えるという話ではなく、芸人全般において売れる為に見た目は重要なファクターであり、売れているもしくは売れる芸人のほとんどがこの芸人ルッキズムをクリアしている。

 芸人が身につけなければいけない見た目の重要ポイント、それは「清潔感」だ。先述した通り、売れている芸人やこれから売れそうな芸人、人気がある芸人のほとんどがこの「清潔感」を持っているといっても過言ではない。

 売れ始めた芸人の見た目が段々と良くなっていくという現象を見たことがあるだろう。もちろん芸人自体が自信に満ち溢れている為に見た目が良く見えるということがあるかもしれないが、ほとんどの場合、売れ始めると着ている服装の値段が上がり洗練されたものになっていったり、今までは自分で散髪したり、1000円カットを利用していた芸人が美容院や専属の美容師さんに髪を切ってもらったりする。そうなるとどことなく汚らしく見えていた容姿が、一定の水準を超えてとても清潔で好感が持てるようになるのだ。

 さらによく見ると何となく肌のトーンがワントーン明るくなったように見えたり、肌自体が綺麗になったように見えることがある。これは美容にお金をかけているわけではなく、芸人が売れ始めると途端にスケジュールが忙しくなり、1日の労働時間が普通では考えられないほどの量になる。文字通り朝から晩まで働くというのは当たり前になっていくのだ。

 そうなるとゆっくり家で寝る暇はなく、移動中の電車やロケバスで寝たり、番組が始まる前の楽屋で寝る事もしばしば。さらにご飯を食べる時間もまちまちになり、仕事が終わった夜中にご飯を食べるなんてこともざらになる。しかも3食ロケ弁なんてことになったら栄養バランスも偏ってしまう。睡眠時間が減少し、栄養管理もずさんになると程なくして肌に影響が表れるのだ。

 それをカバーする為にメイクさんがドーランを駆使し、肌が綺麗に見えるように化粧するのだ。カバー力のあるメイクは、忙しくなる前の肌より綺麗な肌に見せることが出来る。つまり売れる前より肌が綺麗になったように見えるのだ。まさに清潔感がアップする。

 そして世間的に「前よりカッコよくなった」「若いころより綺麗になった」と言われて、より一層美を意識するようになり、皮膚科などに通い始める。お金を手にした芸人たちはある程度高額な治療を施し、男女ともに美しくなっていくのだ。

 これが売れる芸人の見た目が良くなっていくシステムの内情だ。ちなみに最近ベテラン芸人さんがインプラント治療をしている姿をよく見るが、これも間違いなく美を意識し「清潔感」を手に入れようとしているからだ。

 「面白ければ見た目なんて関係ない」と豪語している売れない若手芸人を見かけることがあるが、その考えのままであれば、間違いなく売れないだろう。それほど芸人の見た目は重要であり、売れる要素として面白さと同じくらい大切なのである。

 話をまとめると、芸人にとって大切な見た目は「カッコイイ」でも「かわいい」でもなく、「清潔感」を持つことだ。どれだけ「ブサイク」でも「デブ」でも「ハゲ」でも「チビ」でも「清潔感」さえあれば芸人としてスターになれる可能性があるのだ。

 芸人は元々自分の容姿に自信が無かったり、コンプレックスを持っていたりするパターンが非常に多く、それ故にそのコンプレックスを武器にして自分のニーズを高めるのだ。我々一般人の中でも自分の容姿にコンプレックスを持っている人も多くいるだろう。僕も自分の容姿にコンプレックスを持っていた人間なのでわかるが、コンプレックスという呪縛から解放されるには自分に自信をもつことが重要なのだ。

 もしかしたらこの「清潔感」こそが、自信を持つ為のきっかけであり、コンプレックスから脱出するカギになるかもしれない。まずは自分に似ている売れっ子芸人の真似から始めてみよう。そうすれば簡単に清潔感が出せるはず。「清潔感」は思っているよりも大切なのだ。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/05/29 11:00
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