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日曜劇場『VIVANT』、異例の制作費と「U-NEXT配信」戦略の関係

日曜劇場『VIVANT』、異例の制作費と「U-NEXT配信」戦略の関係の画像
ドラマ公式サイトより

 堺雅人が主演を務めるTBS系日曜劇場『VIVANT(ヴィヴァン)』の第1話が7月16日に放送され、世帯視聴率11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の好スタートを切った。

 同ドラマは、『半沢直樹』シリーズなどを手がけたTBSの福澤克雄氏が原作・演出を担当するオリジナル作品。堺雅人のほか、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司、そして初回でサプライズ出演した二宮和也といった主演級の俳優陣を擁し、2カ月半にわたるモンゴルロケを行うなど、地上波ドラマとしては異例の豪華さで注目されていた。さらには、事前にストーリーを明かさず、キャストのみを発表するというプロモーションも話題となった。

「単純に出演者のギャラだけでも相当な額になりますし、そのうえ長期の海外ロケをするというのは、昨今の地上波ドラマでは到底考えられない規模の制作費です。初回はアクションシーンも多く、映像のクオリティも映画級。福澤氏は百発百中のヒットメーカーとしてTBS内では絶対的な存在であり、だからこそこんな壮大な企画が通り、映像化できたのでしょう」(テレビ局関係者)

 これほどまでの予算をかけられる背景には無論、配信プラットフォームでも“稼ぐ”というビジネスも見据えてのことだろう。

「TBSは2021年の中期経営計画の中で、コンテンツ価値の最大化を目指す戦略を発表しており、世界水準のコンテンツ企画開発・プロデュースのために300億円規模の制作予算を準備した100%子会社『THE SEVEN』を2022年に設立。Netflixと戦略的提携を結んでいます。また海外戦略の一環として、2021年10月期の日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』を放送開始からNetflixでも配信したり、2021年7月期の日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』や2022年4月期の日曜劇場『マイファミリー』、2022年10月期の日曜劇場『アトムの童(こ)』を同様にDisney+に配信したりと、外資プラットフォームに積極的に作品供給を始めていました」(テレビ誌記者)

 こうした背景には、国内見逃し配信サービスのTVerが右肩上がりで急成長するなど、国内ドラマにおいても配信での視聴習慣が根付き始めた一方で、有料定額制の国産配信プラットフォームの弱さがあるという。となれば、『VIVANT』もNetflixなどに配信するのが筋と思われるが……。

「TBSでは外資プラットフォームに対抗するため、テレビ東京、WOWOW、日本経済新聞社、電通、博報堂との6社で『プレミアム・プラットフォーム・ジャパン』という会社を立ち上げ、『Paravi』という動画配信サービスを2018年4月から始めましたが、今年3月31日付でU-NEXT社とプレミアム・プラットフォーム・ジャパン社が事業統合。7月1日よりParaviはU-NEXT内のレーベルという扱いになりました。

 定額制動画配信の国内規模は前年比16.7%増と拡大中ですが、そのうちParaviの市場シェアは2%程度でした。そのため国内シェア1位のNetflixとの提携がこれまで必要だったわけですが、一方でU-NEXTは昨年度時点で国内2位となる12%強にまでシェアを伸ばしたと見られるなど勢いがある。そこにParaviの会員も加わったわけで、Netflixをさらに猛追する状況。今回の日曜劇場『VIVANT』はU-NEXTで全話配信されることになっていて、これをU-NEXTの目玉コンテンツにしようとしているのではないかと見られています。いうなれば、U-NEXTの加入者増加を見越したうえで、大きな予算をかけているとの見方もできるわけです。『VIVANT』は初回が108分の拡大スペシャル、第2話も79分(25分拡大)となっており、この1話ごとの尺の長さも配信を意識してのものと考えられます」(メディア関係者)

 テレビ各局がネットでの動画配信を行っているが、Paraviは加入者数が低迷し、苦戦を強いられてきた。そんななかの打開策がU-NEXTに吸収される形での統合だった。

「Paraviに限らず、国産配信プラットフォームは加入者数の獲得に苦しんでいる状態。U-NEXTはここ数年成長していますが、その“勝因”のひとつが、とにかくラインナップの拡充に注力したこと。Paraviの吸収もその一環でしょう。中でもTBSの日曜劇場は、より幅広い層に向けてアピールできる目玉となりうる。テレビで日曜劇場を見ている視聴者の中には、有料配信サービスを利用していない層も多いでしょうからね。もしU-NEXTが、そういった“無料で日曜劇場を見ている層”を獲得できたら、かなり大きなアドバンテージになります」(同)

 また、『VIVANT』は配信向きの作品とも言われている。

「ほとんど情報を明かさず初回が放送されたということに加え、とにかく謎が多い物語。当然“伏線”となるシーンも多く、後から見返して『なるほど!』となることが多い。視聴者の考察をうながす作品でもあるため、過去の回を見返していくと、より楽しめる作品というつくりです。TVerでの見逃し配信は以前よりも配信期間が延長されるなどの施策もされるようになりましたが、それでも初回から見返していくとなると不十分。何度も見返すにはU-NEXTに加入する必要があるというわけです」(同)

 過去にParaviでは日曜劇場のスピンオフドラマを配信していたこともある。『VIVANT』についても同様の展開もありそうだ。

「本編が好評であれば、単発のスピンオフだけでなく、U-NEXTオリジナルドラマとして、登場人物を掘り下げるシリーズの制作もありうるでしょう。U-NEXTを巻き込むことで、Paraviではできなかった規模のドラマ制作の可能性も広がっていくと思います」(同)

 U-NEXTの現在の“目玉”となっているのが、『ゲーム・オブ・スローンズ』や『メディア王 ~華麗なる一族~』など、米HBOおよびHBO Maxが制作する海外ドラマだ。しかし、HBO Maxは今年5月、本国アメリカで「Max」として新たなストリーミングサービスを開始、2024年にはヨーロッパとアジアの一部に進出する予定であると発表している。

「現在HBO関連の作品は、日本国内でU-NEXTが独占配信しています。しかし、Maxが日本で独自の配信サービスを始めるのではないかともささやかれています。そうなったら、U-NEXTは目玉であるHBO関連作品を失うわけで、かなりの痛手となる。そういった可能性も含めて、U-NEXTは目玉コンテンツが必要といえるでしょう。そもそもU-NEXTは日本国内向けのサービスなので、日本のドラマを充実させるのは、正しい方法ではあるんですよね。だからこそ、『VIVANT』のような作品は絶対に外せない。そういった背景があるからこそ、地上波ドラマとしては異例の大きな予算をかけられるのではないかと思いますね」(同)

 今後の『VIVANT』の物語の展開はもちろんだが、動画配信プラットフォームにおいてどのような位置づけとなっていくのかにも注目だ。

手山足実(ジャーナリスト)

出版業界歴20年超のベテランジャーナリスト。新聞、週刊誌、カルチャー誌、ギャンブル誌、ファンクラブ会報、企業パンフレット、オウンドメディア、広告など、あらゆる媒体に執筆。趣味はペットの動画を見ること、有名人の出没スポットパトロール。

てやまあしみ

最終更新:2023/07/20 11:00
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