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ハリポタのクィディッチを元にしたスポーツ、日本代表がW杯初出場!

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日本代表集合写真(写真/水越陸太、以下同)

 今、ハリー・ポッターに登場する「クィディッチ」に着想を得たスポーツ「クアッドボール( https://quadball.jp )」が世界中で人気を呼んでいる。7月15~16日にはアメリカ、バージニア州でワールドカップが開催され、日本代表が初出場を果たした。

 クアッドボールは2005年、アメリカのミドルベリー大学の学生らが考案したスポーツで、その競技人口は現在、世界中でのべ2万人を超えるとも言われている。

『ハリー・ポッター』作中のクィディッチでは、魔法使いたちが箒にまたがり空を飛びながらプレーするが、クアッドボールでは選手たちがアクリル製のスティックにまたがりながら、フットサル・コート3面分のフィールドを走り回り、バレーボールをパスし合い相手の陣地に攻め入り、ゴールを狙う。

 またディフェンスでは、ブラッジャーと呼ばれる別のボール(ドッジボール)を当てることで相手を妨害し、得点を阻止する。

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がむしゃらにすにっちを取りに行くシーカー

 各チーム7人制、20分間で行われる本競技では、男女混合でプレーすることがルールとして定められていることも大きな特徴だ。原作同様、激しいタックルも見どころのひとつで、プレーヤーたちはスピード、パワー、そしてとっさの判断力を含めた頭脳も要求される。

 日本では、日本クアッドボール協会の理事を務める水越陸太さんを中心とするメンバーが、その普及に尽力してきた。

 2017年、学生時代は野球に打ち込み、何かしらのスポーツで日本代表としてプレーする密かな野望を抱いていた水越さんと、アメリカ留学時にクアッドボールの強豪チームで腕を磨いていた小山耕平さん(現日本クアッドボール協会代表理事)の出会いから、その活動が始まった。

 まず、水越さんの自宅で、友人らと英語で書かれた200ページ以上のルールブックを日本語に翻訳。ルールブックが完成すると、すぐに箒にまたがり本格的な練習が始まった。練習会を行うと、アメリカやノルウェーなどで既にプレー経験のあった選手たちも加わり、次第にプレーヤーも増えていき、国内でクラブチームも誕生した。

 大学内にもサークルができるなど、徐々にその裾野は広がりを見せ、現在では国内だけで、東京から沖縄まで8チーム、およそ200人の選手たちがプレーしている。

 国際大会にも積極的に出場し、2019年のアジア環太平洋選手権に初出場で準優勝を果たすと、2022年のクラブ選手権では1位から3位までを日本のクラブチームが独占する快進撃を見せた。今年の香港トーナメントでも優勝を果たすなど、アジア・チャンピオンに成長した通称「箒星JAPAN」は満を辞してワールドカップに初出場を果たした。

 今回のワールドカップは第5回目。バージニア州リッチモンドで開かれ、世界から15カ国が出場した。

 当日は30度を超える炎天下となったが、各国のユニフォームに身を包んだサポーターも数多く詰めかけ、選手たちに熱い声援を送った。ESPNなどのテレビ局も試合の模様を中継し、あらためてメディアの注目度の高さも伺えた。

 日本の初戦は第一回大会から三回大会までベスト4入りを果たした強豪、カナダ。序盤からゴールを奪われる厳しい戦いとなったが、4分、清水真玲選手が初ゴールを決めると、中継のアナウンサーは、

「That is the first goal for Japan! This is a historical moment here!(日本代表の初ゴールです。まさに歴史的瞬間です!)」

と絶叫した。

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清水選手

 そんな歴史的ゴールを決めた清水選手は、他の多くのプレイヤーと同様に、普段は会社員として働く。今大会には有給休暇を取って出場していた。

「上司に『日本代表としてワールドカップに出てくるので休ませてください』と告げたら、最初はぽかんとされました」

と笑う。

「それでも、ちゃんと説明したら、会社の皆さんも応援してくれました。だから絶対にゴールを決めたかったんです」

 試合には敗れたが、清水選手は力強く語った。

 チームの指揮を執る金子照生さんは、まさにクアッドボールに人生を捧げてきた。京都大学でアメフトに打ち込んだのちに大学院に進学。そこでクアッドボールと出会った。すぐにその魅力に取り憑かれ、クアッドボールのための時間を作るため、企業の内定を断り、スポーツ関連の会社を起業した。

 クアッドボールへの熱量や、チームを勝たせるための明確なビジョンが評価され、今年監督に就任。海外チームの映像を日夜見漁り、戦術をとことん研究した。日本代表としてワールドカップでの勝利を目指し、一からチームを作り上げてきた。

「とにかく、世界でも戦えることを証明したいと考えて、日本の強みであるスピードを最大限に発揮できる戦術を練ってきました」

 そしてついにその瞬間は訪れた。4連敗で迎え、負ければ敗退が決まるノルウェー戦。降りしきるゲリラ豪雨の中、序盤から箒星JAPANは積極的に相手陣地へ攻め入る。キャプテンの小山耕平選手を中心に、相手のボールを積極的に奪いに行くハイプレス戦術を敢行。相手の攻撃の芽を早めに摘み取り、そのまま日本の得意とする速攻で試合を支配する。

 多国籍のサポーターで埋まる客席も日本のプレースタイルに魅了されていく。客席からは自然と、「ニッポン」コールが起こった。

 そして、日本が120対50で迎えた18分、金のスニッチ(マジックテープで取り付けられた尻尾)をつけた中立のプレイヤーがピッチに放たれる。このスニッチを、両チームの「シーカー」と呼ばれる『ハリー・ポッター』で主人公のハリーが務めたポジションの選手が奪い合う。

 激しい攻防戦の末、井出大輝選手が見事スニッチをキャッチし、日本代表は初勝利を収めた。ピッチ上で抱き合う選手たち。リザーブを含めた25人の選手、そしてスタッフたちに、会場からは大きな拍手が送られた。

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初勝利に喜ぶ日本代表

 次戦のブラジル戦には敗れ、1勝5敗となり惜しくも11位で幕を閉じた日本代表の初ワールドカップ。それでも国際舞台で示したその実力は、さながら箒星のように確かに鮮烈なインパクトを残した。優勝を果たしたアメリカ・チームの選手が語る。

「今大会の一番のサプライズは日本チームだったね。素晴らしいチームだよ! 僕たちは20年近くこのスポーツをやってきた。日本はまだ歴史の浅いチーム。きっとこれからもっと強くなるさ」

 大会直後、キャプテンの小山選手は

「今大会、世界との実力差も見えたけど、自分たちは世界と互角に戦えるとわかった。自信にもなったし、課題も見えた。次の大会でもっといい結果を残すために、日本に帰って実力をつけたい」

と語った。その目は2年後のワールドカップを見据えていた。

 なお、クアッドボール日本代表は現在、クラウドファンディングを実施中。代表活動のスポンサーを募り、リターンとしては試合体験や箒星をモチーフにした代表ユニフォームのレプリカなどが用意されている。法人プランも。

https://camp-fire.jp/projects/view/653019

Saku Yanagawa(コメディアン)

アメリカ、シカゴを拠点に活動するスタンダップコメディアン。これまでヨーロッパ、アフリカなど10カ国以上で公演を行う。シアトルやボストン、ロサンゼルスのコメディ大会に出場し、日本人初の入賞を果たしたほか、全米でヘッドライナーとしてツアー公演。日本ではフジロックにも出演。2021年フォーブス・アジアの選ぶ「世界を変える30歳以下の30人」に選出。アメリカの新聞で“Rising Star of Comedy”と称される。大阪大学文学部、演劇学・音楽学専修卒業。自著『Get Up Stand Up! たたかうために立ち上がれ!』(産業編集センター)が発売中。

Instagram:@saku_yanagawa

【Saku YanagawaのYouTubeチャンネル】

さくやながわ

最終更新:2023/07/25 00:20
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