スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会#28

NETFLIX『Mo/モー』湾岸戦争を逃れたパレスチナ人が難民からアメリカ国民になるまで壮絶人生

文=Saku Yanagawa(サク・ヤナガワ)

『Mo/モー』湾岸戦争を逃れたパレスチナ人が難民からアメリカ国民になるまで壮絶人生の画像1
『Mo/モー』NETFLIX 公式サイトより

「驚くべきことに、これはアメリカで初めて、パレスチナ人がパレスチナ人の人生を演じた作品なんだ」

 先日NETFLIXから配信されたドラマ『Mo/モー』が今大きな話題を呼んでいる。共同製作は近年多くの話題作を世に送り出しているA24。パレスチナ系スタンダップコメディアン、モー・アマーの半生をコミカルに描き、主演もモー自身が務めている。

 モー・アマーは高校卒業後にヒューストンのコメディクラブで舞台に立ち始めるとすぐに頭角を現し、19歳にしてテキサス州の大会でファイナリストに。すると大御所コメディアン、デイヴ・シャペルに見出され、オープニングアクトとして多くのツアーにも同行。2006年には、ムスリムのコメディアンのユニット「アッラー・メイド・ミー・ファニー」に参加し、日本を含む27カ国での公演を成功させた。

 近年は俳優としても活躍し、同じくA24制作のドラマ『ラミー 自分探しの旅』に主人公ラミーのいとこ役で出演し、多くの評論家から高評価を得た。そして満を辞して本作で自身の名前を冠した『Mo/モー』の脚本、主演を務めることになったのだ。

 このようにコメディアンとしてのキャリアは極めて順風満帆に見えるのだが、その朗らかな笑顔からは想像だにしえない、壮絶な人生を歩んできている。

 1981年、モーはパレスチナ系のアマー家に6人兄弟の末っ子として、同じく中東に位置するクウェートで生を受けた。1990年に勃発した湾岸戦争により一家は、テキサス州ヒューストンに「難民」として移り住むことを余儀無くされるが、アメリカという慣れない「異国」での暮らし、そして突然の父の死などでモーは不登校に陥る。

 しかし、そんな彼を救ったのは当時の国語の先生だった。シェイクスピアのモノローグをクラスメートの前で披露すれば、それまでの欠席を帳消しにすると持ちかけ、モー自身もそれに応え、情緒的に、そしてコミカルに演じてみせ、クラスメートが自らに送る拍手に喜びを覚えた。そしてやがてはモノローグを発展させ、スタンダップコメディを披露するようになり、クラスメートの笑い声に、初めて自分自身が認められていると感じたと後に回想している

 『Mo/モー』の中でも数々の苦難が描かれる。

 難民申請が通らず、「不法移民」扱いされるがゆえに労働許可証も下りず、仕事を見つけてはクビになる、の繰り返し。偽ブランド品を売り捌いたり、クラブでDJをしたりしながらなんとか食いつなぐが、その暮らし向きは決していいとは言えない。健康保険にも入れないため、怪我をしてもヤミ医者にかかるしかなく、そこで勧められるのはオピオイド。最初はためらいながらも服用するが、次第にオピオイド中毒に陥る始末。そんな中でも彼を支える彼女はメキシコ系。しかし、自身の家族には文化も、そして宗教も異なるため認めてもらえない。

 どれだけ苦難に満ちた人生でも、どこかゆるりと笑い飛ばして生きていく強さと、底抜けの明るさがモーにはある。

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