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『不適切にもほどがある!』第3話 作劇とメッセージのアンバランス

第3話 可愛いって言っちゃダメですか? | TVer

 9日に放送された金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)の第3話。今回はテレビとコンプライアンスのお話でした。

 今回の主役はロバート・秋山竜次と八嶋智人。2人のトリックスターの魅力が開放された、ドラマとしては実に楽しい回だったと思います。一方で、昭和のダメおやじとして登場し、令和にタイムスリップして不適切な言動を繰り返すことで周囲を混乱に巻き込んでいく役割で登場したはずのオガワ(阿部サダヲ)は完全に巻き込まれる側に回っており、設定とゲストでクドカンが好きなように遊んでるだけという感じ。その感じ、振り返りましょう。

■ロバート秋山と八嶋智人の最大値

 昭和に戻ったオガワは娘の純子(河合優実)がお色気番組『早く寝ナイト チョメチョメしちゃうぞ』の出演者に当選したことで大慌て。何しろ毎週見てるし、VHSで3倍じゃなく標準で録画してるくらいなので、いかにエロいことが行われるか熟知しているからです。誰かしらポロリしてるんだって。

 一方、令和では渚さん(仲里依紗)が担当している昼のワイド番組『ツツミンの!プレミアムサタデー』のMC・堤(ロバート・山本博)がスキャンダルを報じられることになり、こちらも大慌て。代役に、たまたま舞台の告知で来ていた八嶋智人(本人)にお願いすることになりました。

 この『チョメチョメ』の司会者であるズッキー(秋山)と『プレサタ』の八嶋智人がめちゃくちゃよかった。秋山のケーシー高峰風の憑依芸はいつもやってるコントそのものだし、八嶋智人の八嶋っぷりもすごく八嶋。演者の魅力を最大限に引き出す脚本というのはこういうものだと思うし、クドカンも書いてて楽しかっただろうなという感じがヒシヒシと伝わってきます。

■作劇とメッセージのアンバランス

 楽しそうすぎて、本来ドラマが言いたそうなメッセージ部分とのアンバランスが非常に居心地が悪かった。

 例えば昭和の『チョメチョメ』に出てるアダルト女優たちを見て、ドラマの中で思想的規範を司るはずの社会学者・サカエ(吉田羊)が「立派よね、彼女たちは誇りを持ってやってる」という十把一絡げなレッテルを貼ったところ、すごく気持ち悪かったんです。吉田羊の視点を通して、昭和のお色気番組をジャッジメントしてしまっている。「昭和の時代はエロい仕事してる女性もみんな誇り高くて、被害者なんかひとりもいなかったんですよ」と言っているなら、それは大きな間違いでしょう。

 というか、その意見が正しいとか間違ってるとか以前に、脚本家の中で「ロバート秋山で遊ぼう」「八嶋智人の変な部分をお茶の間にお届けしよう」という作劇にかける情熱と、「時代による文化・風俗の変遷と、その是非を問うことを主題としている」というドラマのメッセージ部分にかける情熱が、あまりにかけ離れているように見える。言葉は悪いけど、「おもしろいものを作りたい」には燃えてるけど、それをやるために仕方なく「説教っぽい」を入れているだけに見える。セクハラにもコンプライアンスにもあんまり興味ないし、真剣に考えてないように見える。

 ミュージカルの「ハラスメントのガイドライン決めてくれ」って問いかけも、そんなのはP兼総合演出のあなたが決めなさいよって話だし、オガワの「みんな自分の娘だと思えばいいんじゃないかな」って回答も、いかにもステレオタイプの家庭像を基にしていて多様性という考え方から逆行しているし、「アダルト女優を娘だと思えばいい」って歌詞もさ、「父娘モノ」のAVが世の中にどんだけあるか知らんのかしらと感じてしまう。

 あくまで今回そう感じさせたのは、秋山と八嶋智人の仕掛けが面白すぎたからバランスが変に見えただけかなと考えたら、たぶんそうなんだと思うんですけど、なんか3話までのミュージカルシーン全部に全然乗れないんですよねえ。ミュージカルやることは楽しいのに、歌詞に乗れない。つまりは、ドラマは楽しいのにメッセージに乗れない。そんな感じです。なんかすいません。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/02/14 03:05
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