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フジ月9『366日』、前クールに続いて“ネトフリ『First Love 初恋』インスパイア”路線の背景

フジ月9『366日』、前クールに続いてネトフリ『First Love 初恋』インスパイア路線の背景の画像1
広瀬アリス

 フジテレビの“月9”枠の新ドラマ『366日』が4月8日にスタートした。HYの名曲『366日』をモチーフにしたオリジナルストーリーで、高校時代に互いに片思いをしていた男女が、社会人になってから再会し12年越しの恋を叶えるも、悲劇に見舞われるという物語。主人公・雪平明日香を広瀬アリス、その相手役・水野遥斗を眞栄田郷敦が演じる。

 名曲をモチーフとした恋愛ドラマといえば、2022年にNetflixで配信された『First Love 初恋』が記憶に新しい。同作は宇多田ヒカルの『First Love』『初恋』という2曲にインスパイアされた作品で、2曲の間の20年間を也英(満島ひかり)と晴道(佐藤健)という2人の男女の物語として描いている。

 名曲をモチーフとしている点、そして10代から始まる恋愛ドラマという点で、『First Love 初恋』と似ている部分がある『366日』。ちなみに、前クールの月9で放送された『君が心をくれたから』についても『First Love 初恋』と類似点がある。

『君が心をくれたから』は、唯一心を通わせていた高校の先輩・朝野太陽(山田裕貴)と10年ぶりに再会した逢原雨(永野芽郁)が、自分の五感と引き換えに交通事故に遭った太陽を救うというストーリー。ファンタジー要素が含まれているものの、やはり『First Love 初恋』と同じく、10代の頃から始まる恋愛ドラマだ。

 また、『First Love 初恋』は北海道、『君が心をくれたから』は長崎と、地方都市が舞台になっており、現地で撮影が行われている点も共通。さらに、『君が心をくれたから』の主題歌は宇多田ヒカルが担当しており、『First Love 初恋』を意識している様子が垣間見える。

月9が「配信ドラマ」に勝つ唯一の方法

 いわば“『First Love 初恋』インスパイア”が2作続いている月9。“恋愛ドラマの月9”に回帰したという見方もできるが、同時に“地上波ドラマが配信ドラマに立ち向かう方法”として、この路線を選んでいると解釈することもできるだろう。

 地上波ドラマよりも多額の予算をかけて制作されている現在の配信ドラマ。VFXのクオリティーやセットの豪華さ、撮影期間などでは、地上波は太刀打ちできない。地上波ではありえない1話1億円といわれる大きな予算をかけたTBS系日曜劇場『VIVANT』も、地上波ドラマとしては異色だったが、Netflixなどで配信されているスパイアクション系ドラマに比べるとかなり見劣りする、というのが実際の評価だった。

 地上波ドラマが、アクションものやサスペンスもので配信ドラマのクオリティーを発揮するのはほぼ不可能だ。しかし恋愛ドラマであれば、大きな予算をかけずとも、脚本次第では高く評価される作品を制作することが可能になる。そこで、フジテレビが配信作品としてヒットした恋愛ドラマである『First Love 初恋』にヒントを得て、月9をその路線に進めていったとしても不思議ではない。

 さらに、小説や漫画を原作にするのではなく、“名曲”から着想を得るという点のメリットもある。小説・漫画の実写ドラマの場合、その原作のファンを少なからず意識しなくてはならないのは言うまでもなく、内容次第では原作ファンからバッシングされるリスクもある。逆に、「原作を知らないから、別に見る必要がないな」と、“非原作ファン”から避けられてしまうケースもあるのだ。

 一方の“名曲モチーフ”であれば、あくまでもオリジナルストーリーとなるので、楽曲とのギャップはある程度許容される。そして、小説や漫画に比べれば、その楽曲自体を知っている人も多く、ドラマを見る前にその楽曲を聞けば“原作に触れた”ことにもなるので、間口が広い。より幅広い層へと向けられる地上波ドラマにおいては、“名曲モチーフ”は手軽でリスクの低い手法なのだ。

それでも拭えない月9の“不安要素”

 昨年10月期の日本テレビ系『セクシー田中さん』では、原作を大きく改変された脚本が用意されたことに原作者の芦原妃名子さんが不信感を抱き、ラスト2話の脚本を芦原さん自身が担当。一連の経緯を発表した後に、芦原さんが亡くなるという出来事があった。テレビ局側としても、原作の扱いにはこれまで以上に誠実かつ慎重にしなくてはならない現状のなか、さまざまなリスクを伴う小説・漫画原作ではなく、よりライトに扱える“名曲モチーフ”に向いていくのも自然な流れなのかもしれない。

 なお、8日に放送された『366日』第1話では、12年越しの交際に発展した明日香と遥斗だが、最初のデートの直前に遥斗が大怪我を負って救急車で運ばれてしまう。『君が心をくれたから』の第1話でも太陽が交通事故で大怪我を負う展開があり、2作続いて同じような第1話となった。まさに、現在の月9が進もうとしている路線を確定させるかのような『366日』の第1話だったが、『君が心をくれたから』は視聴率も評価もイマイチだったことを考えると、『366日』についても少々不安が残る滑り出しとも言えるだろう。

 いずれにしろ、2作連続の“『First Love 初恋』インスパイア”となった月9。『366日』の評価によってあっという間に軌道修正される可能性もあるが、少なくとも『366日』が今後の月9の方向性を左右する、重要な作品となるのは間違いなさそうだ。

田井じゅん(エンタメウォッチャー)

1985年生まれ。神奈川県出身。専門学校在学中より、ミニコミ誌やフリーペーパーなどでライター活動を開始。一般企業への就職を経て、週刊誌の芸能記者に転身。アイドル業界や音楽業界を中心に、その裏側を取材中。

たいじゅん

最終更新:2024/04/15 09:00
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