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『ブルーモーメント』第8話 「災害死は無慈悲である」原作改変の影響と、生じた矛盾

山下智久(GettyImagesより)

 ここにきて伊藤英明をゲストに迎え、話題を振りまいているドラマ『ブルーモーメント』(フジテレビ系)も第8話。気鋭の政治家役、カッコよかったですね。次週以降もカギを握る役柄のようです。

 気象研究官・ハルカン(山下智久)率いる特別災害対策本部「SDM」の活躍を描いたこのドラマ、滑り出しは超おもしろくて「映画化決定やん!」なんて思ったものですが、前回あたりから雲行きが怪しくなってきました。気象ドラマだけにね。雲行きがね。

 振り返りましょう。

■「チーム」って、そういうことじゃなかろう

 前回、自分の盾になってSDM本部長の上野さん(平岩紙)が亡くなってからというもの、ハルカンはあんまり緊急性のない研究ばかりに没頭している様子。その土石流から半年たっても、SDMは活動を休止したままです。その間、ハルカンの助手だった雲田さん(出口夏希)は難関の気象予報士試験に合格し、テレビで天気予報を伝えたりしています。

 そんな折、埼玉県内で危険な雷の兆候を察知した雲田さん。ハルカンに協力を仰ぎますが、にべもなく断られ、独自にSDMメンバーに連絡を取って対策に奔走することに。

 SDMの活動再開を心待ちにしていたメンバーたちは意気揚々と結集していきますが、ハルカンはどうにも気が乗らない。そんなハルカンを再び立ち上がらせたのは、亡くなった上野さんの息子さんでした。

 いろいろあってハルカンも雲田さんたちに加わることになり、メンバーのみなさんが埼玉県内に散って、なにやら最新マシーンで空気中の水蒸気の状態を計測。ハルカンの天才的な計算能力で雷被害が発生する時間帯と地域を正確に弾き出すと、テレビのニュース番組に防災情報をねじ込むことに成功し、無事、住人たちを被害から守ることができました。

 伊藤英明演じる政治家は、防災情報がねじ込まれたことで政策を語るはずだったゲスト出演の出番がなくなってしまいましたが、プロデューサーの英断を支持。事なきを得ています。というのが、今回のお話。

 このドラマはハルカンを孤高のヒーローとして描くのではなく、あくまで「SDM」というチームの中で周囲に刺激を受けながら成長していくハルカンの姿を映し出してきました。

 今回も、やりたいことはハルカンが過去の傷を克服してチームとして再出発するという流れだったと思いますが、ちょっとこれはチームってそういうことじゃないんだよなぁ、と思ってしまったんですね。

 ハルカンの指示で春日部、大宮、川越に最新計測マシーンを持ったメンバーたちが赴くわけですが、彼らがデータを解析しながら専門用語で現状を報告してくるのです。地理オタクとか、運転手兼料理番とか、医者とか、レスキューとか、警察とか、そういう人たちが一致団結して気象データの解析に奮闘している。

 それは気象庁関係者がやんなさいよって話なんです。

 そもそも「SDM」をチームとして描くとき、医者は医者の仕事を、レスキューはレスキューの仕事をまっとうするからこそ戦力となるわけで、彼らの存在意義は「SDMの中でハルカンができないことをする」というところにある。だからこそ、ハルカンにも成長をもたらすことができる。それぞれの部門の統括責任者である彼らには、ほかの仕事があるはずなんです。

 チーム再結集というドラマチックな演出をしようとすることで、逆にチームの性質を描くという目的から離れてしまっている。そんな感じでした。

■まあここらへんで原作との比較も

 あんまり原作コミックとの比較をするのも品がないので控えてきたのですが、ここらへんに来て改変の影響が出てきたなと感じています。

 もっとも大きな改変なんですが、ドラマでは災害で人が死んでないんです。次々と未曾有の大災害が起こっているのに、ハルカンが関わった災害で死んだのは上野さんただひとり。その上野さんの死をもってして「SDMは人的被害を出したから活動休止」という結論に至ろうとしていた。

 一方のコミックでは、普通にバタバタ死んでるんですね。第1話、第2話のモチーフになった雪崩のエピソードでも平気で遭難者の何人かが心肺停止の状態で発見されたりしている。

 スペクタクルの演出としてはドラマのほうに軍配が上がりますが、いわゆる人命救助モノ、ディザスターモノとしてよりシビアなことをやってるのはコミックなんです。

 おそらくはハルカンと直接的に関係のある「上野さんの死」というものを際立たせるために、その瞬間を迎えるまでハルカンを悲しませたくないという演出の都合かと思います。ただ一方でこのドラマはコミックから「災害死は無慈悲である」という考え方を引用してしまっているので、哲学としての矛盾が生じ始めている。

 これも、「ハルカンが仲間の災害死の悲しみを克服する」というドラマチックな演出をしようとすることで、本来ドラマが語ろうとしていた防災意識の描き方から離れていってしまっていると感じさせる部分でした。

 ともあれ、あと2回はコミックでも描かれたスーパー台風が東京にやってくるようです。このドラマにおける災害現場での人命救助シーンはいつだって大興奮ですから、純粋にスペクタクルとして手に汗を握らせてくれたらオッケーかなと思ってます。けっこう楽しみにしてますよ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/06/13 16:00
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