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『366日』第10話 「切ないフレーズを置きたい」という作り手の欲求がうるさいんです

広瀬アリス

 今期の月9『366日』(フジテレビ系)もラス前の第10話。放送後には「天王寺の発音」というワードがXでトレンド入りしてました。

 ハルト(眞栄田郷敦)が大阪に転勤することになり、ハルトに思いを寄せる看護師さん(夏子)が「大阪のどちらに住まれるんですか?」と尋ねるシーン。

「天王寺にある会社の寮に」

「天王寺……あべのハルカスのそばですね」

「うん」

 ここで看護師さんは、ハルトが「あべのハルカス」を認識していることから記憶が戻っていることに気づくという重要なシーンなんですが、ネット上は「天王寺」を「本能寺」のイントネーションで発音した2人に釘付けだったようです。

 関西弁だと「天王寺」は「戦争に行く」と言うときの「戦争に」、あるいは「返答に困る」と言うときの「返答に」のイントネーションに近いんですかね。でも10年くらい前に流行ったエグスプロージョンの「本能寺の変♪」の歌のときの「本能寺」は本来の「天王寺」に近いイントネーションで歌っているので、話がややこしいね。

 というわけで、今回は返答に困る人たちのお話。振り返りましょう。

■アスカの未練を触発しましょう

 毎回、切なげなシチュエーション、切なげな配置を作ることばかりにご執心なこのドラマですが、今回はハルトと友達に戻ったアスカの未練を大いに触発してみせます。

 まずは、仲良し5人組のうちのリコ(長濱ねる)とトモヤ(坂東龍汰)が結婚することになり、龍ケ崎の高校に戻って披露宴で流す再現ドラマの撮影に。ここでアスカは、友達に戻って以来初めてハルトと再会することになります。

 未練を断ち切れないアスカは、ハルトの担当だった脳外科医(和久井映見)に相談を持ち掛けます。

「(ハルトとは)友達に戻りました。最初からそうすればよかったんですかね。彼女としてかかわったせいで、たくさん苦しめた気がします」

 これ、今さらですかという話なんです。記憶を失った人間に対して「あなたの彼女です」と勝手に宣言して付きまとって、いざ別れるとなっても思い出すのは記憶を失う前のハルトのことばかりだったアスカ。でも、ようやく気付いたんですね。もう以前のハルトではないから、関係がいったん終わるのは仕方がない。今のハルトと向き合うことで、後悔が生まれ、新しい関係を模索し始めている。それは、アスカ自身にとっての成長でもある。いいシーンです。

 と思ったら「いっそ、出会わなければよかったのかなって」とか言い出す。ホントに自分のことしか考えてないんだな、この人。

 好きになった人が好きすぎて、切なくてつい言っちゃう言葉ですよ。「いっそ、出会わなければよかった」。小柳ゆきの声が聞こえてくるところです。このドラマは、アスカという人物を描くことより、「出会わなければよかった」というフレーズをここに置くことのほうを優先してるということです。いいシーンが台無しですよ。

 その後、音楽教室の生徒さんがアホみたいな理由で彼女と破局して、アホみたいに下手なピアノを弾いて(1年前から習ってたよな確か)よりを戻すのを目の当たりにしたアスカは、同じように別れた恋人とやり直したいとの思いを強くして、ハルトを呼び出して告白することにします。

 ずっと連続した時間の中で関係性を築いてきた生徒さんカップルと、アスカとハルトとじゃ、ぜんぜん同じじゃないんだけどな。単に「復縁」という素敵な風景に触発されちゃったんだな。

「ハルトにとって宮辺さん(あの看護師さんね)って、どういう存在なのかな」

 と、まずはこないだ橋の下で寄り添って泣いてた女について問いただすと、「私、ハルトが好き。大好き。ハルトとやり直したい」とむき出しの感情だけをぶつけます。案の定玉砕するわけですが、そりゃそうでしょうって話です。「こういうとこがしんどい」って別れた相手に、ただ「好き、大好き」とか迫られて応じる人がいるでしょうか。そりゃハルトも返答に困るよ。

 これ男女逆で考えたら、すごい怖い告白シーンなんですよね。ここも、作り手の側がアスカとハルトを人と人じゃなく、単に男と女として、女がフラれたら切ないだろという記号としてしか考えていないことが露見してしまっているシーンです。

 その後、LINEでアスカに愚痴られた男友達が自宅に押しかけてきて「アスカが好き」とか言い出して今度はアスカが返答に困ったり、ハルトの家に看護師さんが押しかけてきて「ホントは記憶戻ってますよね?」とか詰めてきてハルトが返答に困ったり、まあみなさん返答に困ってましたね。返答に。天王寺。次回は最終回。カニシュウマイ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/06/11 13:00
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