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エコ志向は本物? スポンサーの影響は?「東京国際映画祭」ウラオモテ

tiff2009.jpg東京国際映画祭オフィシャルページより

 今年で22回目となる国内唯一の国際映画祭「東京国際映画祭」が、この17日から9日間の会期で「TOHOシネマ 六本木ヒルズ」で開催されている。国内外270を超える作品が上映されるアジア最大のシネマフェスティバル。はたしてカンヌやベネチアとどう違うのか。専門家に聞いた。

「チェアマンが昨年から角川さん(角川歴彦・角川グループホールディングス会長)から依田さん(依田巽・ギャガコミュニケーションズCEO)に変わり、これでもかとエコを打ち出しています。名物だったケヤキ坂のレッドカーペットをリサイクル素材100%使用のグリーンカーペットに昨年から変更したり、風力発電を利用して上映したりと、グローバルにエコロジーを考える映画祭として明確に差別化を図っている姿勢がみてとれます」(映画評論家・前田有一氏)

 いわれてみれば、グリーンカーペットの登場でトリを飾ったのは、ハリウッド女優でもヒロスエでも小雪でもなく、先の国連でCO2の25%削減をぶちあげた鳩山首相夫妻。その名が告げられた直後に失笑気味のどよめきが起こったものの、政権交代したばかりの首相夫婦の登場は、たしかにフレッシュなインパクトを観衆に与えたようだ。

「昨年も麻生さんを呼んでいましたし、積極的に政治を巻き込みながら映画祭を大きく羽ばたかせようとしている印象を受けます。経済産業省の『コ・フェスタ』との連携も強めているようですね」(前田氏)

「コ・フェスタ」とは、国内の知的財産を国際的に産業化していくため、経産省の肝いりで昨年から始まった『JAPAN国際コンテンツフェスティバル』の略称。東京ゲームショウや秋葉原エンタまつり、デジタルコンテンツEXPOなど、日本を代表する国際イベントを一定期間に集中して開催する試みで、東京国際映画祭もそうしたコンテンツイベントの一つという位置づけだ。

 さて、その内容。先代の「角川政権」では、それまで韓国の釜山国際映画祭などのライバルに隠れて停滞気味の東京映画祭を盛り上げながら、カンヌなどに並ぶ国際的映画祭へ成長させた実績への一定の評価を得ていたことは事実。その一方で、角川映画作品や関連会社の作品が特別招待作品に目立つなど、「えこひいきすぎる」との指摘も少なくなく、ワーナーブラザーズが出品を拒否するなど”お手盛り映画祭”に嫌気する空気があったとの指摘も聞かれる。政権交代した「依田政権」ではどうなのか。

「コンペ作に選ばれた『ACACIA』(アントニオ猪木主演/辻仁成監督)はトヨタがスポンサードした作品で、映画祭に最も資金提供しているスペシャルパートナーもトヨタ。推して知るべしという気はするけど、イベントもスポンサーあってのもの。ある程度の大人の関係はやむをえないのでは」(映画ライター)

 別の映画ライターも、「たしかに招待作品の中には永ちゃんのドキュメンタリーとかアイドル映画みたいのもあるけど、まぁ主催国だし(笑)。それより<ワールドシネマ部門>を拡充しているのはエライ。この部門は海外で高い評価を得ながら日本での配給先が未決定の、いわば映画祭でしか見られないおもしろい作品が多い。依田体制ではここの充実化が図られている」とのことで、映画祭本来の楽しみを重視する姿勢を評価する声もあるようだ。

 これに反して、「今年からアニメ部門がなくなったことは信じられない。東京でやる意味が5割は減った。日本ならではの個性を出すならアニメ部門を復活させるべし」という、アニメ重視な映画ライターの声も。

 さらに、「グリーンカーペットのイベント仕切りを電通系のイベント会社に任せたら段取りがめちゃくちゃ。おかげで現場は大混乱。そのくせバカみたいに金をとる。しわ寄せの予算不足で人員も減らされボランティアに頼らざるをえず、お客様への十分なアテンドができなくて悲しい」という、予算に絡んだ現場スタッフの切実な叫びも聞こえてきた。

 たしかに、未曾有の不景気で苦戦している国内配給会社は多く、「(株)シネカノン」のように苦しみながら踏みとどまっているところもあれば、「ムービーアイ・エンタテイメント(株)」のように倒産による撤退を余儀なくされた例もある。「(株)ワイズポリシー」が今年の春、6億円の負債で破産したニュースは記憶に新しい。会場も昨年の渋谷会場が丸ごと消滅し、文化村での”オオバコ会場”での開催もなくなった。幕張のゲームショウやモータショーが不況のあおりで縮小を迫られる中、「六本木」だけ例外というわけにはいかないようだ。

 なにはともあれ今年も開幕した映画祭。前田氏に楽しみ方のコツを聞いた。

「映画祭の楽しみは、見たことがない映画、下手したら一生見られない映画を発見、体験すること。コンペ部門もそんな作品がめじろ押しですが、無名な作品が多くてコアな映画ファンでないと敷居が高いかも。お勧めはワールドシネマ部門。既に海外では売れた作品が多くラインナップされています。できるだけ効率的にハズレを見ないで楽しみたいという現代人にとって、この部門がファーストチョイスになると思いますよ」

 前売りチケットなら1000円~1300円で鑑賞可能。公式サイトを綿密にチェックしながら、とりあえず会場へ足を運んでみることをお勧めしたい。運がよければ記者会見に現れた出演者とばったり遭遇することも。実際、この時期に六本木駅周辺では「富士そば」でザルソバ体験をする海外関係者や、SPに囲まれて優雅に散歩を楽しむ出演者らしき外国人もちらほら。六本木が映画一色に染まる空気を体感してみるのも一興かもしれない。
(文=浮島さとし)

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最終更新:2009/10/20 21:00
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