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空飛ぶ豪華客船で富裕層を! カジノ船で中国人を! 

HISとスカイマークが”貧乏人”相手の商売から脱却!

his01.jpgHISに買収された後、経営改善化が進むハウ
ステンボス。営業利益の黒字化も近いと見られ
ている。

 
 国内線格安航空会社のスカイマークと、その大株主である旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)の両社が、ここ最近興味深い動きを見せている。

 まずは昨年2月、経営再建問題で揺れていた長崎県佐世保市の大型リゾート施設「ハウステンボス」を、HISが約20億円を出資して支援すると発表。続いて11月には、国内線限定で展開してきたスカイマーク社が、2014年を目処に国際線への参入を表明。これへ向けて「空飛ぶ豪華客船」と呼ばれる1機280億円の超大型旅客機「A380」の6機購入も明らかにした。「つぶれそうなテーマパークをなんで今!?」「スカイマークの経営規模を考えたら6機購入は無謀すぎ」と、一部業界やネット上では物議を醸した。

 そして昨年12月、HISは保有するスカイマーク株300万株を売却し、約31億円の売却益を特別損益として計上したことが今年になって明るみに。さらに、再建に取り組んできたハウステンボスが、長崎~上海を結ぶカジノ船の購入へ向けて動いていたことも分かり、すでに船の所有会社「テンボスクルーズ パナマ」を、昨年12月に設立済みであることも明らかになった。

 社名に「パナマ」とあるのは船籍をパナマに置き、公海上でカジノ営業を行うことで日中両国の法的問題をクリアするため。同社では「船は2~3万トン級の予定」「年間50万人の利用を目指す」(HIS広報)と鼻息は荒い。

 潰れそうな大型テーマパークの買収→国内線から国際線への参入→大型旅客機の購入表明→カジノビジネスへの参入……。

 これらの点を結ぶことで浮かび上がる両社の狙いとは何なのか?

「HISがハウステンボスを支援すると聞いたときは『なぜ?』という声が業界内でも多数でしたが、カジノ船を運行するとなれば話が通じます」

 そう語るのは、航空専門誌「エアワールド」編集長の竹内修氏だ。竹内氏は、HISがこれまで格安旅行の薄利多売で利益を上げてきたビジネスモデルから、中流層から富裕層を睨んだ国際観光ビジネスへの転換を図ろうとしているのでは、と推測する。

「航空ビジネスって派手に見えますけど、原油価格が高騰すれば燃料サーチャージが上乗せされてチケット価格が上昇したり、『9.11』のようなテロが起これば利用客は大幅に落ち込んだりと、不確かな要素が大きいんです。そんな水商売的事情でスカイマークの利用客が減れば、海外旅行をビジネスの柱とする大株主のHISも当然苦しくなるわけです」

 つまり、航空会社(スカイマーク)も旅行会社(HIS)も、構造的には水商売的な要素が大きい業態であり、両社がその構造から脱却を試みているというのだ。

「しかも日本国内では若年層の海外旅行離れが進んでいて、これまでこうした層をターゲットに格安航空券を売って成長してきたHISにとって、市場の将来性は期待できなくなりつつあります。そんな中で、勢いのある中国の富裕層を狙って確実に利益が出るギャンブル船を運航し、その流れでハウステンボスに団体客を継続して運び込む。ハウステンボスは事実上、HISの独壇場ですから、宿泊から食事、物販までほぼ独占できる。今も湯布院(大分県)などは中国人観光客が多く、すでに下地はある。形になれば大きなビジネスになるでしょう」

his02.jpg世界のポルシェ代理店で最も売り上げ成績が
いいと言われる上海支店。写真のパノラマターボ
は249万元(約3,100万円)と日本の販売価
格の1.5倍近いが、「よく売れてます」(現地
コンサル)とのこと。中国の勢いを感じさせる。

 では、スカイマークによるA380の購入表明と、HISによるスカイマーク株売却についてはどう見るのか。実はスカイマークは当初、導入を決めたA380をドル箱路線に集約させ、これまで通り薄利多売で利益を出す(記事参照)と見られていたが、最近はやや事情が変わりつつあるという。竹内氏が続ける。

「A380は二階建ての大型旅客機で、全席エコノミーにすれば700席以上を設置できます。ところが、どうやらスカイマークの西久保社長は、座席をビジネスクラスとプレミアム・エコノミーのみに絞った高級路線で展開する意向を持っているとの話もあります。そもそも、エアバスの営業担当者は当初、スカイマーク向けに別の旅客機の営業をかけに行ったらしいのですが、西久保社長はなぜか超大型のA380に食いついたので驚いたというんです。しかもそれからすぐに、西久保社長は他のエアラインのA380にお忍びで乗ってみたらしく、同機の快適さに大満足して導入を決めたようです」

 スカイマークの西久保社長はA380の持つ広さや静かさなどを体感し、これを活かしてランクアップしたビジネス客などをターゲットに、新たなビジネスモデルを模索している可能性があるというのだ。しかし、もしそうならば、同じ高価格ビジネスを狙う両社はさらなるシナジー効果が期待できるのでは?

「スカイマークはすべてのビジネススタイルを高価格層に移行するわけではありませんから。格安運行はこれまで通り続けるでしょう。また、これもあくまでも予想ですが、スカイマークは他社のビジネスクラスやプレミアム・エコノミーよりは安い価格設定とするために、チケットは主にネットでの直販でさばくことになりそうです。そうなればHISは関与の余地が少なくなります。さらにスカイマークは近い将来、東証に上場する構想を持っていますが、その際には増資を行う可能性が高く、一時的とはいえ株価は下がります。こうした観点からHISがスカイマーク株を今が売り時として、ある程度の量までなら手放しても問題ないと考えたとしても不思議ではありません」(注:持ち株比率は14.33%から10.05%に下がったが、売却後も売却前と変わらず第2位株主)

 つまり、国内市場に限界を感じたHISは、中国人富裕層などの獲得へ向けてビジネスモデルを方向転換し、スカイマークとは一定の距離感を保ちつつも、シナジー効果が薄れた同社株を一部売却し、そこで得た資金をカジノ船の運営などの新規ビジネスに投入。さらに、日本人にとっては距離感のある長崎のハウステンボスへ中国人観光客を大量に運び込み、宿泊や外食、物品販売などへお金を落とさせる――。

 思えばHISの平林社長は08年の就任会見で、「これまで成功してきたビジネスモデルをすべて見直し、ゼロベースから新たに形を作り上げる」と発言。今にして思えば意味深なコメントと言えなくもない。

 いずれにせよ、石原東京都知事や橋本大阪府知事が熱望しながらいまだに実現の糸口も見えない国内のカジノビジネス。しちめんどくさい許認可権や業界のしがらみがいっさい及ばない公海上で、早ければ今年の夏にはさっさと運行を開始するというHIS。「天下り経営者たちが寄ってたかって会社を潰してしまったJALでは逆立ちしても真似できないプラン」(某旅行代理店)であることは間違いない。

 1980年に格安航空券の販売からスタートし、JTBとも肩を並べる総合旅行会社へと成長を続けてきたHIS。かたやHISが株式公開で得た資金で96年に子会社として設立したスカイマーク(現在は売却)。不況と好機が混沌とするこの時代に、両社は新たな局面を迎えているようだ。
(文=浮島さとし)

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最終更新:2011/01/31 15:00
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