スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会【2】

落ち目な今こそアメリカにはアジア系大統領が必要! “マイノリティの代弁者”が自虐ネタに打ち勝つ日

文=Saku Yanagawa(サク・ヤナガワ)

ロニー・チェン『Asian Comedian Destroys America!』邦題『ロニー・チェンのアメリカをぶっ壊す!』)より)

 ロニー・チェンはマレーシア生まれの中華系のコメディアンで、現在はアメリカを拠点に活動している。政治風刺ニュース番組『ザ・デイリー・ショー』で人気に火がつき、一昨年には大ヒット映画『クレイジーリッチ』にも出演を果たした期待の若手だ。そんな今ノリに乗る彼が満を辞してリリースしたスタンダップコメディのスペシャルとあって、アメリカ国内のコメディファンの間でも大きな注目を集めた。

 タイトルからも見て取れるが、本作中ロニーは一貫して「アジア人」の視点からアメリカをジョークにする姿勢を崩さない。それはマレーシア人としてでも、中国人としてでもない広く「アジア人」という枠組みであり、彼が入場曲として用いたのが李香蘭の歌う『夜来香』であったことからも伺える。李香蘭は第二次世界大戦中、満州映画協会の看板女優としてアジア全域で大きな人気を博した、いわば「元祖アジアの歌姫」である。以後アジア中で聴かれてきたこの大ヒット曲を出囃子に用いたことは興味深い。

 劇場を埋め尽くす1300人を超すオーディエンスに向かってロニーは強い口調で語る。

「この国(アメリカ)にはもっとアジア人が必要だ。だって唯一の公正な審判だから」と。

 今、アメリカ社会では過去にないほど分断が進んでいる。それは「宗教」「政治イデオロギー」「人種」などあらゆる面にまで及び、多くの対立が生み出されている。

 とりわけ、ロニーは繰り返し起こる白人警官による黒人への暴力などで高まる白人と黒人の軋轢に触れ「君ら(白人と黒人)が僕ら(アジア人)のことなんて気にも留めないのと同じで、僕らだってどちらのこともどうだっていい。だからなんの偏見もなく公正にジャッジできるんだ。ほら、僕らのことは信頼できるでしょ」と言い放つ。対立を客観視する“アジア人”としての視点が投影されたジョークは多くの人種で混ざり合うだろう観客にも大きな笑いを呼んだ。

 そしてロニーは言う。「この国にはアジア人の大統領が必要だ。僕らがホワイトハウスに入ったら1週間でどんな問題も解決できる。アジア人には物事が順調に進むことが一番だからね」

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