日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界
アジア・ポップカルチャーNOW!【vol.13】

昼間はOL、夜は寡黙なアーティスト ソン・ニが描く秘密の快楽の世界

soni6.jpg©Son Ni

 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』……子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。

第13回
作家・イラストレーター

Son Ni (兒子/ ソン・ニ)

 台北市に住むSon Ni(ソン・ニ)は、昼間は特許の登録会社で経理として働くOLだ。会社がひけると家に帰り、イラストや漫画を描いたり、コラージュ作品やzine作りに時間を費やす。

youkaihant.jpg『妖怪ハンター 天の巻』
(集英社)

 自分の好きなことを黙々と続けるのが好きなだけだから、周りが面白がって、彼女の作品に関するいろんなことを聞いたとしても、返ってくる答えはそっけない。でもそれは、「自分の作ったものについて話すということに、どうしても一生懸命になれないから。ごめんなさい」とソン。自分のことに饒舌にはなれない彼女の作品からは、しかし、決して寡黙ではない彼女の内的世界がはっきりと伝わってくる。

 自分の子どもの頃の環境や、影響を受けたジャパニーズ・カルチャーのことを聞くと、ポツポツと話してくれた。

「子どもの頃、同級生の筆箱にあったHello Kittyの鉛筆は、燦然と輝いていました。日本の商品は、いつも宝物のように思えました」

「好きなのは、漫画家だと諸星大二郎さん、作家だと澁澤龍彦さん。理由ですか? 彼らの作品からは、秘密の快楽が享受できるから」

soni2s.jpg<画像をクリックすると拡大されます>©Son Ni
soni5s.jpg<画像をクリックすると拡大されます>©Son Ni

 でも、日本語が分からないので、選ぶものは、どうしても「みんなが見ているもの=流行っているもの」になってしまうというジレンマもあった。

「日本の漫画は、作家が描きたいものを描いている。これを描いてはいけない、というタブーもない。そもそも”何故描くのか”なんて聞かれない。私が日本のカルチャーから一番影響を受けたのは、そういうところです」

 アートを見るのは好きだが、自分が特に詳しいとは思わない。今台湾で流行っていることも、「あまりよく知らないんです。あ、でも3Dはめちゃくちゃ流行ってるみたいです……」。

 今後の予定は、特にないという。

soni1s.jpg soni3s.jpg soni4s.jpg<画像をクリックすると拡大されます>©Son Ni

「毎日会社に行きます。そして、空いた時間で絵を描きます」

 どこまでも寡黙なOLアーティスト、ソン。作る理由や、決まりことから解き放たれた彼女の想像力が行き着く先を、是非見たいと思う。
(取材・文=中西多香[ASHU])
soniportrait.jpg
●ソン・ニ
作家、イラストレーター。台湾生まれ。昼間は会社勤めをしながら、作品制作、zine制作も行う。これまで参加した展覧会(いずれもグループ展)は「樂而不雅淫畫展 Lustfully Yours」展( Hulahoop Gallery, Hong Kong 2009年)、「DRAWN from TAIWAN」展( Domy Books, Houston, USA. 2010年)。作品集に『Mermaid, Foufa 』(Nos Books, Taipei 発行 2009年)、『人體盆栽栽培』(Nos Books, Taipei 発行 2010年)。
<http://www.deadtreeopenflower.com/>
<http://www.flickr.com/photos/yourson/>
<http://www.nosbooks.com>

なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>

妖怪ハンター 天の巻

怪異。

amazon_associate_logo.jpg

■バックナンバー
【vol.12】まるで初期アニメ ローテクを駆使する南国のアート・ユニット「トロマラマ」
【vol.11】「造形師・竹谷隆之に憧れて……」 1000の触手を持つ、マレーシアのモンスター
【vol.10】“中国のガロ系”!? 80年代以降を代表するコミック・リーダー ヤン・コン
【vol.9】大のラーメンおたく!? シンガポールデザイン界を率いる兄貴、クリス・リー
【vol.8】メイド・イン・ジャパンに憧れて…… 香港の文学系コミック作家・智海
【vol.7】「血眼になってマンガを追いかけた」海賊版文化が育んだ中国の新しい才能
【vol.6】裸人間がわらわら 香港ピクセル・アートティストが放つ”アナログデジタル”な世界
【vol.5】ダメでも笑い飛ばせ! 香港の国民性を体現したグラフィック・ノベリスト
【vol.4】「教科書はガンダムの落書きだらけだった」 香港・原色の魔術師の意外な原点
【vol.3】「懐かしいのに、新しい」 読むほどにクセになる”タイ初の日本漫画家”タムくん
【vol.2】 マイブームはBL!? 香港の腐女子が描きとめる、消えゆく都市の記憶
【vol.1】「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

最終更新:2012/04/08 23:19
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

山崎製パンで特大スキャンダル

今週の注目記事・1「『売上1兆円超』『山崎製パ...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真