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戦力外でもまだ終わらんよ!『プロ野球「戦力外通告」終わらない挑戦編』

proyakyu2.jpg『プロ野球「戦力外通告」終わらない
挑戦編』(洋泉社)

 昨年秋のドラフトは豊作に沸いた年だった。”ハンカチ王子”こと斉藤佑樹(日ハム)に加え、澤村拓一(巨人)、大石達也(西武)と大型新人が数多く揃い、どの選手を指名するか、各球団フロントも頭を悩ませたことだろう。育成選手も合わせ、毎年10人以上の有望新人が入団してくる。だがその一方、選手としてのピークを過ぎ、ひっそりと戦力外を通告されるものもいる。

 そんな戦力外通告を受けた選手の素顔に迫ったのが、『プロ野球「戦力外通告」終わらない挑戦編』(洋泉社)。美山和也氏、加藤慶氏、田口元義氏ら3人のスポーツライターが、戦力外通告を受けたプロ野球選手に取材した新書で、以前、当サイトで紹介した『プロ野球「戦力外通告」』(同)に続く第2弾となる。今回は、堀幸一(元ロッテ)、入来祐作(元巨人、日ハム、NYメッツ、横浜)、三井浩二(元西武)、大越基(元ダイエー)、的場寛一(元阪神)、三浦貴(元巨人、西武)、戦力外通告を受けた6人の選手の数奇な野球人生が綴られている。各選手の歩んできた道のりや、引退までの経緯、トライアウトに賭ける思いなど、試合中継では見ることの出来ない背景を垣間見ることが出来る良書だ。特に、故・木村拓也(元広島、巨人)に励まされたという選手が多く、故人の人徳の篤さが偲ばれる。

 西武の中継ぎ左腕として長年活躍してきた三井浩二は、憧れのメジャーへ挑戦するため、08年オフ、ポスティング申請をする。計2度のポスティングをするも、三井に入札するメジャー球団はなかった。米経済の不況、代理人とのコミュニケーション不足、小林雅、薮田、福盛らの成績不振による日本人選手への低評価、など複数の要因が重なったためである。引き続き西武に留まることになったが、一度出て行こうとした選手に球団は冷たかった。年俸は大幅に減額され、2軍でも登板機会はほとんどなかった。高年俸がネックとなり、09年オフ、戦力外を通告される。

「こちらが『よし、行くぞ』って思っていても『ない』となると、モチベーションが違ってきます。(中略)1回肩を作って、登板なし。2回目作って、なし。もう1回作って、またなし。登板がなくても、そんなふうに体力と精神力を消耗する試合がたくさんありました。その連続ですよね」(本文より)

 章を通じて、中継ぎという仕事の苦労と、その仕事が評価されないことへの憤りが語られており、興味深い。

 上記6人に共通している点は、引退後も野球に携わっていること。戦力外通告を受け、現役生活を終えても、野球人生は終わりじゃない。社会人野球選手、指導者、解説者、球団関係者と、それぞれの野球人生を歩み続けている。寝ても野球、覚めても野球、辞めても野球のことだけ考えている。そんな愚直とまで言える生き方に、ファンでなくとも強~烈に心揺さぶられるのです。
(文=平野遼)

・美山和也(みやま・かずや)
1967年千葉県生まれ。週刊大衆、週刊女性を経てフリーに。プロ野球、少年野球を含むアマチュア組織の取材をしている。近著は「プロ野球スキャンダル事件史」「スーパースター引退劇の真実」「プロ野球代打物語」(以上、宝島社/共著

・加藤慶(かとう・けい)
1972年愛知県生まれ。情報誌編集などを経て、編集プロダクション「sutudioKEIF」の代表に。自身はライター兼フォトグラファーで、スポーツ紙や週刊誌に寄稿する。共著多数あり。

・田口元義(たぐち・げんき)
1977年福島県生まれ。出版社でアシスタント、編集プロダクション勤務を経て03年フリーに。野球を中心にスポーツ総合誌などに寄稿。Number Webにてコラム「野球クロスロード」を連載中。

プロ野球「戦力外通告」終わらない挑戦編

野球バカも悪くない。

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最終更新:2013/02/12 11:40
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