日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 現代版『トムとジェリー』!? 蚊とハゲ親父が繰り広げるドタバタ劇『ちーすい丸』
『やわらか戦車』ラレコ氏の最新作

現代版『トムとジェリー』!? 蚊とハゲ親父が繰り広げるドタバタ劇『ちーすい丸』

chisui01.jpg(c)ラレコ/ファンワークス

 蚊をモチーフにしたアニメ『ちーすい丸』(キングレコード)のDVDが9月21日に発売された。このアニメは、日本テレビ系で先月まで放送されていた同作の1stシーズンをまとめたもの。作者は、シュールかわいいネットアニメとして話題になった『やわらか戦車』を手掛けたラレコ氏。本作も『やわらか戦車』の作風は健在で、丸っこくてかわいらしいキャラクターたちがシュールな行動を起こす、1話あたり1分程度のショートアニメである。

 本作は蚊の「ちーすい丸」が、ハゲ上がったサラリーマン「ノブオ」の血をあの手この手で吸い尽くすドタバタ劇。ノブオの血を吸うためならば、いかなる無茶や苦労も厭わないちーすい丸。ときにはノブオの働くオフィスで、ときにはガールフレンドとデート中のノブオを狙い、ノブオがいくら逃げようとも最後には必ず全身の血を吸う。

 しかし、なぜ蚊が主人公なのか。そしてなぜ、頭髪の寂しいおじさんに付きまとうのか。尽きない疑問を作者のラレコ氏にぶつけるべく取材現場に赴くと、出てきたのは中年男性! まさか、こんなにかわいらしいイラストを描いているのが男性だったとは……。

***

――なぜ蚊をモチーフにしたんですか?

rareko02.jpg

ラレコ氏(以下、ラレコ) ちーすい丸は、ボンヤリとラクガキをしていて生まれたキャラクターなんです。蚊のキャラクターを作ろうと思って描いたわけではなく、適当に描いてみたら蚊になった(笑)。キティちゃんやリラックマのような正統派キャラクターを作ろうと思っても、そう簡単には敵わない。だから、普通はこんなものをキャラクターにしない、というのを作りたかったんです。戦車をモチーフにした『やわらか戦車』では世界初の戦車のぬいぐるみを出すことができたので、今回も世界初の蚊のぬいぐるみを出すことをひとつの目標にしています。

――血を吸われる人間キャラのノブオも丸々としていて愛くるしいですよね。でも、なぜおじさんなんですか? 

ラレコ パイロット版を作ったときに、「おじさんじゃなくて、子どものキャラクターにした方がいいのでは?」と周りから言われたんですが、僕は「ノブオじゃなきゃ絶対ダメだ」と言い張ったんです。なぜなら、ちーすい丸が血を吸うときに「全身の血を吸い尽くす」感を出すためにも、頭のてっぺんから吸う絵にしたかった。だから、髪の毛があったら都合が悪いんです。そうすると、ちーすい丸に血を吸われる人間は必然的にハゲでなければならなくなるわけです。

rareko.jpgラレコ氏。

―― なるほど(笑)。さて、イラスト、ストーリー、そして音楽まですべてひとりで作っているそうですが、1本作るのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか?

ラレコ 徹夜して作り続けて、丸2日くらいですね。放送中は週に1本作って、制作会社とやり取りして微調整して……と、作ってからの諸作業も多かったので、1週間ほぼ休みなく『ちーすい丸』につきっきりでした。

――蚊といえば嫌われもののイメージですが、制作に没頭しているうちに愛着も湧いてきましたか?

ラレコ いえ、今でも蚊は大嫌いです(笑)。でも、蚊のいない夏って、それはそれで寂しいような気がするんです。夏の風物詩が1つなくなるというか。もし蚊がいなくなったら、蚊がプーンと周囲を飛んで、「ええい! もう!」とか言いながらバチンと潰す、という蚊とのコミュニケーションがひとつなくなってしまいますから。

chisui00.jpg(c)ラレコ/ファンワークス

 ちーすい丸って赤ちゃんに似てるなって思うんですよね。1stシーズンの制作当時、ちょうど僕の息子が2歳だったんですが、制作しながらも子育てにも追われ……。赤ん坊というのは悪気なく人を踏みつけてきたり、夜泣きして大騒ぎしたり。でも、なにげないしぐさがかわいくて憎めないんですよね。ノブオもちーすい丸に対してそんな気持ちを抱いていると思います。腹は立つけどかわいい相手と、ケンカしながら寄り添って生きていく『トムとジェリー』のような関係性を、蚊というモチーフを通して描いているんです。みなさんが今後、蚊を見たときに、「あ、ちーすい丸だ!」って一瞬だけでも思ってくれたらうれしいですね。もちろん、その後はパチッと潰していただいて全然構わないです(笑)。少々多く潰したところで、絶滅するようなタマではないですしね。

***

 ちーすい丸とノブオも、容赦なく吸ったり潰したりとやり合いつつも、ときには一緒に花火をして遊んだり(28話「夏の終わりに」)、お互いの風邪の看病をしたり(40話「風邪」)するほほえましいシーンも描かれている。初めて見る花火に感動するちーすい丸のキラキラした目や、風邪をひいたノブオにそっと布団をかけるちーすい丸の姿を見ると、憎くてたまらなかった蚊も少しかわいく見えてこなくもない。と思いつつも、目の前にプンプン飛んでたら結局潰すのでしょうけれども。人類と蚊のせめぎ合いは終わらない……。
(取材・文=朝井麻由美)

●『ちーすい丸』公式サイト
<http://www.chisuimaru.com/>

ちーすい丸 1st season DVD
2010年2~11月まで日本テレビ系で放映されていたものを収録。DVD特典に、「ちーすい絵描き歌 2ver.」、「オリジナルエピソード ちーすいライフ」、「TVスポット」、「未公開 パンダ蚊」が収録されている。特に、「オリジナルエピソード ちーすいライフ」はノブオとちーすい丸の幼少期から老年期までが描かれていて、作者のラレコ氏もイチオシ。
定価 2,625円(税込)/本編 46分+映像特典/発売・販売元 キングレコード
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最終更新:2013/09/11 12:38
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