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 >  >   > グルになって原告をダマす!? 弁護士と裁判官の”不適切な”関係
社員が会社を相手取る民事訴訟の実態

グルになって原告をダマす!? 弁護士と裁判官の”不適切な”関係

minji_bengoshi.jpg東京地方裁判所。裁判官自ら同所内を
ガイドしてくれるツアーも実施している。
(画像はウィキペディアより)

「あなたね、私にこの証拠資料を全部読めって言うんですか? そんな暇ないですよ! 和解って言ったら、和解なんですよ!」

 数年前にA氏(原告)が不当配置転換取り消しを求めて、勤務先である某大手メーカー(被告)を相手に起こしたある民事訴訟。A氏は、第1回と第2回口頭弁論の間に行われた裁判官、原告、弁護士による会議(後述参照)で、裁判官から和解を促されたが、「何とか判決を出してほしい」と嘆願していた。すると裁判官がバンバン机をたたきながら声を荒げ発したのが、冒頭の言葉である。A氏はその姿を見て、それまで抱いていた「冷静かつ公平な裁判官」というイメージが、一気に崩れたという。

 ローソン子会社訴訟(5月判決)【註1】、JR西日本訴訟(7月判決)【註2】、オリンパス訴訟(8月判決)【註3】など、社員が勤務先の会社を相手に起こした民事訴訟で、原告側が勝訴する例が相次いでいる。しかし、これらのように原告の主張が認められ無事勝訴に至ることは未だに少なく、「その裏では、多くの原告が不条理ともいえる裁判の犠牲となり、泣き寝入りを強いられるケースが多い」(労働組合幹部)という。

 その実態を探るため、前述のA氏の民事裁判を取材すると、そこには、裁判官と弁護士の”不適切”ともいえる関係が垣間見えてきた(なお、A氏のプライバシー保護のため、以降、一部曖昧な表現があることをご容赦いただきたい)。

 まず、この裁判が始まって間もなく原告のA氏は、依頼人であるA氏の意向をことごとく無視する弁護士の姿勢に疑念を抱いたという。

 「私の主張は、とにかく会社が私に行った一連の非人道的な行為の非を認めてもらいたい、不当配置転換を取り消して欲しいという点だけでした。ですので、それをA社が認めない限り、和解【編註:原告側と被告側が互いに譲歩し、争いを止める合意をすること。勝訴/敗訴の判決は出ない】などで妥協する気はまったくありませんでした。もちろん弁護士にも、その強い意向を伝えていましたが、弁護士はことあるごとに私に、『訴訟が公になったことで、あらぬ風評被害を会社側へ与え、ブランドを傷つけたことを詫びる』『配置転換を受け入れる』『和解金は受け取らない』という一方的に会社側が有利な内容で和解をするよう促してきました」(A氏)

 こうして、原告と弁護士の意思疎通がぎくしゃくしたまま始まった裁判の途中で、弁護士は原告に対し、「和解は判決で勝訴を得るためのステップですので、戦略的に一旦和解しましょう」と提案してきた。A氏は「判決での勝訴を目指すのであれば」と、弁護士の言葉を信じて、その方向で裁判は進んだが、のちに弁護士は信じられない行為に及んだという。

 「実は弁護士が和解して裁判を終わらせようとしていたことが判明し、弁護士に抗議しましたが、なんと弁護士は私の許可なく勝手に和解案を作成して、裁判官にFAXで送付するという暴挙に出たのです【編註:民事訴訟法上、和解が成立した時点で裁判は終了してしまうため、「和解成立後に再度判決を得るのは、実務上極めて困難」(労働問題に詳しい弁護士)】。正式な和解申し入れではなかったため、結局成立には至りませんでしたが、自分の味方をしてくれるはずの弁護士、裁判官、そしてもちろん被告側の全員が敵だと分かったときは、本気で自殺を考えました」(A氏)

 そしてA氏は裁判を通じて、裁判官の驚くべき実態も知ることになる。

 民事裁判は、原告と被告、及び両者の弁護士が裁判官をはさみ、法廷で主張や事実内容を争う「口頭弁論」が数回行われた後、最後の口頭弁論=結審を経て、通常その1〜2ヵ月後に判決が出される。実際にはその口頭弁論とは別に、法廷外の会議室などで、裁判官、原告、弁護士で裁判の争点や証拠の整理を行う会議(弁論準備手続きなど。通常、原告側と被告側に分けて別々に実施される)が開催される。第1回と第2回口頭弁論の間に実施された最初の会議で、裁判官もA氏に対してしきりに和解を勧めた。しかしその内容は、「配置転換を受け入れる」など到底合意できない内容であったため、A氏は和解ではなく判決を出してもらうよう求めたときの光景は、すでに冒頭で述べたとおりである。

 「弁護士の『一旦和解』という偽りの戦術に乗ってしまったため、原告と被告双方が和解する前提で裁判が進み、結審を迎えようとしていました。しかし、弁護士にだまされていたことに気づいた私は、結審数日後に開かれた最後の会議で、和解を拒否し判決を求めたため、会議は大混乱となりました」(A氏)

 A氏の話をもとに、その混乱模様を以下に再現してみよう。

裁判官(以下、裁)「それで、やはり和解はしないのですか?」

弁護士(以下、弁)「Aさんも十分に言いたいことは言いましたし、反省もしていますので、和解ということで……」

Aさん(以下、A)「ですから、和解はしません。判決を出してください」

「(裏返った声で)わがままを言うのも、いい加減にしなさい!」

「(Aをにらみ、机をたたきながら)ですから、和解! 和解しかないんですよAさん!」

A「裁判官、この人は私のただの代理です! 話を聞く必要はまったくありません! 今ここでクビにします! 私の話だけを聞いてください!」

「結構です。私は代理人を降ろさせていただきます!」

「(弁護士をにらみつける)」

「いや、ですから、そう意味ではなくて、降りるというのは撤回します……」

 その後弁護士は、原告が裁判当初から何度も「払わせてくれ」とお願いしても、なぜか受け取りを拒んでいた着手金を、判決日直前にいきなり請求し、判決日の法廷に姿を現すことはなかった。もちろん判決の結果はいわずもがなであった。

 ちなみに後日、裁判所に提出した証拠資料などを別の弁護士に見せたところ、「和解前提ではなく、判決で勝訴を得るための戦術を立てて普通に戦えば、間違いなく勝てたでしょう」と言われたという。

■大手弁護士事務所は裁判官の”天下り先”!?

 それにしても、なぜ裁判官と弁護士が一緒になって原告に和解を迫るなどという事態が起こるのだろうか? 不当解雇などの労働法関連の裁判に詳しい労働組合幹部と、企業のコンプライアンス制度に詳しい経営コンサルタントに尋ねると、「よくあることですよ」と口をそろえ、その理由を教えてくれた。

「社員対会社というA氏の事例のような労働法関連の裁判は、社員側が勝訴になる確率が低い上、たとえ勝訴しても賠償金は数百万円程度なので、弁護士にとってみればたいしたカネになりません。また、勝訴しても被告が控訴すれば、再びカネにならない裁判が延々続くので、判決まで行かずにさっさと和解で終わらせてしまった方が都合がいいのです。一方の裁判官も、労働法がらみの裁判は、判決を出しても負けた方が控訴するケースが少なくなく、控訴審で自分の判決を覆される可能性も出てくるため、できるだけ判決を出さずに済ませたい。結果として、裁判官と弁護士の利益が一致してしまうのです」(同労働組合幹部)

 これでは、双方の弁護士と裁判官がグルになって、原告の訴えを潰そうとしていると言われてもおかしくない。そもそも、原告の利益を最大限優先するのが弁護士の使命ではないか?

「弁護士も裁判所あっての弁護士ですから。特に経験の浅い弁護士は、裁判官の機嫌を損ねてしまうと、裁判で必要以上に書類提出を求められたり、しつこく書類や手続きの不備をネチネチ指摘されたりといった意地悪をされてしまいます。また、裁判官の間で『アイツは勝たせてやらない』と裏でささやかれ、以降の裁判でなかなか勝てなくなってしまうこともあります」(同経営コンサルタント)

 まるでテレビドラマでよく見る、お局様が新人OLをイジメる風景とまったく変わらないではないか……。

 上記のような実態は果たして本当なのか? 裁判所職員OBのB氏に尋ねてみると「まー裁判官も人間ですからね」と答え、その背景にある現行の司法自体が抱える問題について説明してくれた。

「00〜10年の間、合格者の大幅増を目的のひとつとした新司法試験制度(06年開始)の影響もあり、弁護士の数は1.7倍に増えた一方、裁判官は1.3倍しか増えていません。加えて、06年以降消費者金融への過払い請求訴訟が急増し、扱わなければならない裁判の件数は、完全に裁判所の処理能力を超えています。例えば東京地裁の裁判官は、結論(判決、和解など)を出さなければならない事案が1人あたり月間平均40件もあり、みなさん土日も出勤して判決文を書いたりしています」

 B氏によると、このように裁判官が激務を強いられている現状が、裁判官と大手弁護士事務所の癒着を生み出していると指摘する。

「はっきり言うと、裁判官は証拠資料をすべて読む時間的な余裕がないので、今回のAさんの裁判のように、原告と被告の主張が真っ向から対立する場合、会社側の代理人に大手弁護士事務所の弁護団がつくと、『大手だから信用できるだろう』と、安易に会社側の主張や証拠資料に基づいた事実認定【編註:証拠に基づき、判決を出すための事実を認定すること】を進めてしまいやすい。そして大手弁護士事務所側は、事務所のブランド力を高めるために毎年定年後の裁判官を一定数受け入れていますが、裁判を有利に進めるため、裁判官に定年後の”見返り”をちらつかせることもあります」

 B氏によると、意外とこの方法は効くという。

「定年がない弁護士や、将来ヤメ検弁護士として活躍する道がある検察官と違い、裁判官の定年後の選択肢は狭い。そんな彼らにとって、大手弁護士事務所は、数少ない”おいしい”再就職先のひとつ。恥ずかしい話ですが、”天下り先”に目がくらみ、裁判官が裁判の過程でいろいろな手心を加えてしまうケースがあることは否定できません」

 これから訴訟を起こそうと考えている人たちは、よく肝に命じておかなければならない。野田佳彦総理の大好きな相田みつを氏の言葉を借りるまでもなく、「”裁判官だって”人間だもの」という事実を。
(文=編集部)


【註1】 ローソンの完全子会社、九九プラスが運営する安売りコンビニエンスストア「SHOP99」の元店長が、権限のない「名ばかり管理職」として残業代なしの過酷な長時間労働で健康を壊したとして、未払い残業代と慰謝料の支払いを求めた訴訟。
【註2】 JR西日本が業務でミスをした運転士らを対象に行った「日勤教育(通常勤務から外れ、再発防止を教育する取り組みの通称)」で精神的苦痛を受けたとして、同社の運転士と車掌計258人が、同社に対し、損害賠償を求めた訴訟。
【註3】 社内のコンプライアンス窓口に通報したため不当に配置転換されたとして、オリンパスの社員が配転の無効確認などを求めた訴訟の控訴審。 

サマヨイザクラ裁判員制度の光と闇

お世話になりたくない。

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