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歴史・人物・雰囲気……同人誌即売会の原点が一挙に集結!『MGM』が5年ぶりに開催

MGM98_001.jpg歴史を刻んできた会場での開催。
今回初めて同人誌を製作し、初サークル参加がMGMという人もいた

 1月22日、創作系同人誌即売会MGM(まんが ギャラリー&マーケット)が、5年ぶりに開催された。MGMは、コミックマーケットの創設母体ともなった同人サークル「迷宮」が主催するコミックマーケットに次ぐ歴史を持つ即売会だ。いったい、どんな顔ぶれが集まるのか、ワクワクしながら会場へと向かった。

 98回目の開催となった今回のMGMは、創作漫画オンリーの即売会だ。1980年以来、年2回ペースでの開催は続いていたが、2007年に長らく会場としていた川崎市中小企業婦人会館が閉館されたことで開催が中断。11年には、主催者代表の亜庭じゅん氏が死去し、このまま消滅してしまうのではないかと、危惧されていた。

 しかし、昨年8月のコミックマーケットにて、MGM98の開催告知のチラシが配布されたことで心配は期待へと変わった。そして、開催当日を迎えたのである。

MGM98_002.jpgずらっと並んだ見本誌。
これなら、全部見て回ることもできるから安心だ。

 MGMにおいて注目すべきは、初期の同人誌即売会の雰囲気があちこちに残っていることだろう。参加申込みの必要事項を見ると、特に申込書などは付属しておらず「B5サイズの紙に以下の項目をご記入の上」とあったり、「参加確認書の発送は,開催の10日位前」と、よい意味で妙な緩さが感じられる。

 さて、今回の会場は板橋区にある板橋産業連合会館。コミックマーケットの2回目から4回目までが行われた、歴史のある施設である。最寄り駅である地下鉄三田線の板橋区役所前を降りて地上に出ると、早くも「あ、お仲間だな」というにおいをさせている人々の姿が、ちらほらと。ただ、年齢層は高めである。

MGM98_004.jpg伝説の「漫画新批評体系」各号。非売品なのも当たり前だ。残念。

 会場に到着したのは9時50分。サークル参加者は10時集合だったので、早めに到着してよかったなと思っていたら、既に、みんなで机を並べ始めている最中であった……。とりあえず、早めに到着した人は、荷物をそこいらに置いて、みんなで机を並べることに。やっぱり、このイベントには「お客様」は存在しないのだ。なお、準備の時点で筆者が「若手」に属しそうな年齢構成。周囲は、長い歴史を知る人々でいっぱいだ!

■「オタク」以前からの歴史の証人がゴロゴロ

 今回の参加サークル数は、約70サークル。中央に見本誌を読めるコーナーを配置しても、ちょっと広々とした雰囲気。ちなみに、第2回のコミックマーケットでは参加サークル数39で、入場者が550人。サークル数が半分とはいえ、この部屋に550人も入ることができたのだろうかと、原田央男氏(コミックマーケット初代代表)に聞いてみると、「人で溢れかえって大変だった」とのこと。第4回目には参加サークル数が80、入場者が700人と収容できなくなり翌年から大田区産業会館へと移転することになった。

 とにかく、75年の第1回コミックマーケット以来、いわゆる「オタク」がいかにして巨大な文化として成長していったか、その原点を教えてくれる雰囲気や人物に溢れるイベントであることは間違いない。そんな中で袈裟を着たお坊さんが同人誌を売っていたので「コスプレでもなさそうだし、本職かな? 変わった人だな」と思っていたら、知人が「あの人ご存じですか? 蛭児神建さんですよ」と言われてびっくり。先日、筆者が連載記事で紹介した『ヘイ!バディー』最終号(※記事参照)のロリコン座談会以来だという漫画評論家の永山薫氏は「27年ぶりですね……」と、しみじみと語るのであった(失礼だけど、同誌での写真と比べると2人とも完全に別人である)。

 そして、今回の開催にあたって注目を集めていたのは、故・亜庭じゅん氏の執筆した文章を網羅した「迷宮」の30年ぶりの新刊『亜庭じゅん大全 漫画新批評体系vol.16』が発売されたことだ。昨年、冬のコミックマーケットで初売りされたが「重すぎて」少部数しか搬入できなかったので、今回が初売りの本番。亜庭じゅん氏の評論活動を網羅したというだけあって、ハードカバー832ページ。カバーイラストは樹村みのり氏、中表紙には、いしいひさいち氏がイラストを添える同人誌の枠を超えた豪華本である。にもかかわらず、頒価は2,000円だから、かなりの赤字販売だという。ゆえに発行部数は250部程度とかなり少なめ。今後、漫画の歴史を研究する上で欠かせない史料になることは間違いないが、同時にかなり入手困難な史料にもなることだろう。そのためか、購入時に任意ではあるものの、購入者の名前を控えていた。

MGM98_003.jpgこのボリュームで頒価2,000円。
1冊あたり製作単価は5,000円を超えているとか。
MGM98_005.jpg別室には故・亜庭じゅん氏を追悼する間が儲けられて故人を偲んだ。

 午後になると、多くの参加者が詰めかけたので「30分ほど延長します」と、ほかの即売会ではありえない展開も見られたMGM。終了後はみんなで机を片付けて反省会と、きわめてアットホームな雰囲気の中で一日を終えた。「あれを買わなきゃ、これも買わなきゃ」と焦る必要もなく、趣味を同じくする人と交流したり、新たな趣味との出会いも見られるこのイベント。小さいながらも、同人誌即売会の本質を凝縮したイベントであることは、間違いない。
(取材・文=昼間たかし)

<次回開催案内>
・開催日時:2012年6月10(日) 11時~15時30分
・場所:板橋区立グリーンホール1階ホール

詳細はMGM99の公式サイトで
<http://mgm99.anijun.info/news/y5tbwh>

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ふむふむ。

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最終更新:2013/09/09 17:31
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