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週刊アニメ時評 第9回

大コケの『機動戦士ガンダムAGE』を徹底検証! 求められる新たな「ガンダム像」とは?

gundamage0331.jpg『機動戦士ガンダムAGE』公式サイトより

 2011年10月、ゲーム界のヒットメーカー「レベルファイブ」とアニメ制作会社「サンライズ」がタッグを組み、鳴り物入りでスタートした『ガンダム』シリーズ最新作『機動戦士ガンダムAGE』(MBS・TBS系)の不振が止まらない。

 『ガンダムAGE』は放送開始当初より、高年齢層のガンダムファンに向けた歴代ガンダムをオマージュしたような設定やストーリーが繰り広げられる一方、子ども向けを狙ったキャラクターとシリアスなキャラが同居するちぐはぐな画面や、ご都合主義な展開や矛盾点が多数。大人向けと子ども向けの“いいとこ取り”を狙いつつも、いまひとつ練り込みの足りない作品の仕上がりに、熱心なガンダムファンから多くの批判と落胆の声が上がっていた。

 しかし、小学生男児向けの漫画雑誌「コロコロコミック」(小学館)とのタイアップを行っていることからもうかがえるように「従来のガンダムファンから子どもまで幅広い層をターゲットとしたガンダム」という路線を打ち出す同作だけに、ネット上では「大人のガンダムファンではなく子どもに受けているはず!」と主張する擁護派と批判派の対立がしばしば発生している。

 ところが実際に量販店や模型店を覗いてみると、どの店頭でも『ガンダムAGE』関連のプラモデルやおもちゃの箱がうず高く積み上げられており、『ガンダムAGE』のプラモデル「アドバンスドグレード」をゲーム筺体にセットすることで対戦が楽しめるゲーム機「ゲイジングバトルベース」は常にガラガラ。子どもに大ヒットしているとは言い難い光景が繰り広げられている。

 だが、1月4日にはフジテレビ系列の情報バラエティ番組『めざにゅ~』にて、「日経トレンディ」誌の編集者・渡辺敦美氏が「2012年にヒットするグッズ」の一つとして、プラモデル「アドバンスドグレード」を挙げていたことから、「もしかして本当は『ガンダムAGE』は売れているのか?」といった戸惑いがネット上で噴出していた。

 また、レベルファイブ社長兼シリーズ構成の日野晃博氏による、ガンダムファンを挑発するようなツイートもしばしば炎上。アニメ放送開始から半年近くが経過しながらも、アニメ本編よりも周辺事情のほうが「面白い」という本末転倒な状況が長らく続いている。

■低迷するソフト売上

 そんな『ガンダムAGE』論争に大きな波紋をもたらしたのが、2月10日に発売された初回限定生産のBlu-ray『機動戦士ガンダムAGE 第1巻 【豪華版】』の売り上げ枚数である。3,000~4,000枚売れればヒットといわれるアニメのBlu-ray&DVD市場において、常に数万枚規模の初動売り上げを記録し続けるドル箱的存在の『ガンダム』テレビシリーズ作品だが、Blu-ray『機動戦士ガンダムAGE 第1巻 【豪華版】』はなんと初動売上枚数1,991枚を記録。累計枚数も2300枚超と見事に大コケしてしまったのだ。

 また、某レンタルチェーン店関係者は、

「通常『ガンダム』シリーズのタイトルは非常に高い回転率を記録するため、かなりの本数を各店舗に入荷しますが、『ガンダムAGE』はあまり入荷しませんでした。ランクとしてはほとんど回転しない、マニア向けアニメと同じくらいですね。それでも商品が足りないという意見は聞きません」

 とコメント。その滑りっぷりは相当深刻なようだ。

■子どもの意見が反映された第2部

 玩具やプラモデルなどのグッズ販促番組としての性格が強い子ども向けアニメは、ソフト売り上げがそのまま作品の人気につながっているとは言い難い。逆にいうと、いくら高い年齢層のアニメファンにソフトが売れたとしても、メインターゲットたる子どもたちに受けて、彼らにグッズを買ってもらえなければ、そのコンテンツが成功したとはいえないのだ。

 しかし『ガンダムAGE』の世代別視聴率を見てみると、4~12歳の男女を対象としたKID層は常に低く、「測定不能」を記録することもしばしば。お世辞にも「『ガンダムAGE』が子どもに受けている」とは言い難い状況である。

 実際のところ、玩具やプラモデルなどグッズの売り上げも不振らしく、メインスポンサーたる株式会社バンダイも『ガンダムAGE』の展開にかなりの危機感を放送開始直後より察知。かなり早い段階でKID層の子どもたちに「『ガンダムAGE』がなぜ面白くないのか」というアンケートを取っていたそうだ。

「メインターゲットである子どもたちに受けていないのは、放送開始直後から感じていました。そこで、実際にアンケートを取ってみたのですが、子どもたちからは『そもそも戦争という題材がよく理解できない』『コロニーや宇宙での生活というものに親しみが持てない』という意見が多く出てきたんです」(『ガンダムAGE』制作関係者)

 この「戦争がわからない」「コロニーや宇宙での生活というものに親しみが持てない」という子どもたちの意見を受けて生まれたのが、第2部冒頭に盛り込まれた学園ドラマだという。

「学園ドラマを描くことで、子どもたちが主人公の生活に親しみを持ってほしい」というスタッフの思惑が、そこにはあったそうだが視聴率は相変わらず低迷。KID層の支持も上向いているとは言い難い状況は続いている。

■求められる「異端のガンダム」

 そもそも「戦争」や「コロニー」「宇宙」というキーワードは「ガンダム」という作品を形成する重要な概念である。

 それらが子どもたちに受け入れられなくなりつつある、ということは「ガンダム」というブランドが今後子どもたちに受け入れられなくなる、という可能性も示唆しているともいえる。

 時代性を取り入れつつ、シーズンごとにドラスティックな変化を続けるゼロ年代以降の『仮面ライダー』シリーズのように、『ガンダム』シリーズも変革をする時が近づいているのではないだろうか。

 これまでも「ガンダム」シリーズが低迷した時、格闘技を取り入れた熱血少年マンガ風なストーリーが展開した『機動武闘伝Gガンダム』、世界名作劇場を思わせる牧歌的な世界観で深い人間ドラマを描いた『ターンエーガンダム』など、異端と呼ばれる「ガンダム」が、ガンダムファンに衝撃をもたらし、新たな「ガンダム像」を提示しシリーズを存続させてきた。

 「ガンダム」というタイトルに思い入れのない子どもたちが増えつつある今、旧態依然とした「ガンダム」を提示する『ガンダムAGE』が彼らに受け入れられないのは当然ともいえる。

 そんな子どもたちに「ガンダム」をアピールするために、そして今後も「ガンダム」ブランドを存続させるためにも、今こそ新たな「異端のガンダム」が求められているのかもしれない。
(文=龍崎珠樹)

機動戦士ガンダムAGE 第1巻

異端のガンダム……?

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最終更新:2012/10/11 13:51
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