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「無駄にデカい」だけじゃない! あの塔の“読み方”を知る『東京スカイツリー論』

skytreeron.jpg『東京スカイツリー論』(光文社新書)

 5月22日、ついに開業した東京スカイツリー。開業から1カ月で、周辺施設を含めた来場者数は550万人を超え、震災と不況に沈む日本に久々に聞こえてきた明るいニュースとなった。しかし、自立式電波塔としては世界一の高さを誇るスカイツリーだが、そもそもの目的だったはずのテレビ地上波デジタル放送は1年早く開始され、これがなくても地デジの視聴にはなんら問題がないことがわかった。ではこの正体不明の馬鹿でかいシロモノはなんなのか。そんな問に対して、さまざまな角度から答えてくれるのが『東京スカイツリー論』(光文社新書)だ。

 本書によると、すべての発端は2001年。国会決議により電波法が改正され、11年7月までにテレビ放送を地上アナログからデジタル完全に切り替えることが決められた。テレビ放送のデータの容量をデジタル化により圧縮することで、空いた部分を携帯電話キャリアの通信事業者などに開放することができる。しかし、デジタルの電磁波は高層ビルなどの背後に回りにくい性質があるため、600メートル級の新タワーが必要になった。つまりスカイツリーは、家のテレビと携帯電話で見るテレビのために建てられることが決まったわけだ。だが前者については、スカイツリー建設前の03年、東京タワーからの地デジ放送が開始されたものの、大きな問題は起きなかった。後者についても、08年のiPhone日本発売以降、ワンセグ機能を搭載したいわゆる「ガラケー」はどんどん淘汰されている。さらに、本書執筆時点では開業前だったドコモ肝いりのスマホ向け有料放送『NOTTV』に対し、著者はニコニコ動画などの双方向性サービスを引き合いに出して、一方通行なこのサービスに懐疑的な目を向けている。実際、始まったサービスの評判の悪さは著者の予言通りだ。こういった問題の原因に対し、著者は日本の産業構造の問題点を指摘する。

「東京スカイツリーが、少なくともその出発点においては、こうした不合理かつ不名誉な日本の社会システムやテクノロジーの在り方の結晶体として登場してしまったという現実は、シビアに直視しなければならないだろう」(本書より)

 しかし、本書がスカイツリー批判本かというと、それはまったく違う。

 世界のタワー史をなぞる2章に書かれた、“先輩塔”東京タワーの変遷が興味深い。70年代後半頃から古くさい観光スポットに成り下がった東京タワーが、89年に始まった夜間ライトアップを皮切りに、05年のリリー・フランキーの小説『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(扶桑社)など、電波塔としてだけではない新しい意味を持つようになったからだ。

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