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ラッパー漢 a.k.a. GAMIが現役小中学生と真面目にドラッグの話をしよう

――MCバトルのブームを経て、幅広い10代を魅了する音楽文化/産業になってきた日本のヒップホップ。ただし、このカルチャーはドラッグと切り離せず、今年、『フリースタイルダンジョン』に出演していたラッパーの漢 a.k.a. GAMIも大麻所持で逮捕された。そこで今回、漢と10代の小中学生がドラッグについて議論する場を設けた――。(月刊サイゾー2020年11月号より)

ラッパー漢 a.k.a. GAMIが現役小中学生と真面目にドラッグの話をしようの画像1
(写真/西村満)

<議論に参加したみんな>
そうたくん(中1)[将来の夢] 司書
MC LIMEくん(中3)[将来の夢] ラッパー
漢くん(42歳)[子ども時代の将来の夢] コック、スタントマン
りんかちゃん(小4)[将来の夢] 声優
ここなちゃん(小5)[将来の夢] パティシエ
いおりくん(中1)[将来の夢] 考え中
ほのちゃん(小5)[将来の夢] ダンサー

 2010年代以降、イベント「高校生RAP選手権(以下、高ラ)」やテレビ番組『フリースタイルダンジョン(以下、FSD)』(テレビ朝日)などによってブームとなったラップのMCバトル。それは、中高生にとってのヒップホップの入口として機能した感があるし、「高ラ」出身のT-PablowとYZERR率いるBAD HOPは商業的に成功を収めて大スターとなった。そして現在も、10代を含む若いラッパーが次から次へと登場し、脚光を浴びている。

 ただ、ヒップホップは大麻をはじめとするドラッグと不可分の関係にある。漢 a.k.a. GAMIもまた裏社会のドラッグを“リアル”にラップし、『FSD』に出演していた人気ラッパーだが、今年5月、大麻所持の容疑で逮捕され、覚醒剤の陽性反応が出たことも報じられた。その後、執行猶予付きの有罪判決が下され、現在はシャバでの音楽活動を再開している。

 そんな漢と純朴な10代の小中学生が、なんとドラッグについて真面目に語り合った。学校や家庭ではあり得ない前代未聞の議論を、大人も子どもも読むべし!

ラッパーはみんなドラッグやってるの?

LIME 漢さん、覚醒剤をやってたの?

 キミ、ラップやってる子だよな? いきなり重めのパンチをかましてきますねぇ……。事件の状況を説明しておくと、ここ(漢が創設したレーベル〈9SARI GROUP〉の事務所、9SARI OFFICE)の前で警察に職務質問されて、大麻を持っていたから逮捕されたんだ。その後、警察署に連れて行かれて、尿検査をしたら覚醒剤の陽性反応が出てしまった。

りんか 刑務所に入ったの?

 いや、刑務所には行かなかった。みんなにはなじみがなさすぎてイメージが湧かないと思うけど、逮捕されると、まずは警察署にある留置場ってところに入れられる。そこで2日間、警察の取り調べを受ける。その後、検察官という人が裁判所に「もっと調べたい」ってお願いして、それが許されると、さらに10日、足りなければ追加でもう10日、つまり計22日間を留置場で過ごすことになるんだ。

いおり ふーん。なんで刑務所に行かなくて済んだの?

 裁判で懲役1年6カ月、執行猶予4年という判決が下ったからだよ。執行猶予とは、社会で生活しながら更生する制度のこと。これから4年間、悪いことをしなければ刑務所に行かなくていい。だけど、4年の間にまた逮捕されて、執行猶予が付かない有罪判決が下されたら、その罪に見合う重さの刑に今回の懲役も加えた期間、刑務所に入れられてしまう。

そうた 裁判って、どんな感じ?

 裁判では検察の人たちが出てくるね。警察が調べたことに加えて、自分たちで調べたこともこっちに確認してくる。で、こっちは弁護士と一緒に自分の言い分を主張する。その両方を裁判官が聞いて、最終的に判断を下すんだ。

ほの 裁判を盗撮してYouTubeに上げたらバズりそう。

 それやったら即、刑務所行きだね(笑)。普通の人も傍聴席から見ることができるよ。オジさんみたいにちょっと名前が知られてると、テレビや新聞の人が取材に来ることもある。

ここな 裁判のシーンはドラマで見たことがあるかも。そういえば、『FSD』のお仕事はどうなったの?

 出れなくなったし、結局、オジさんのせいで番組が終わってしまった……。あと、『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社)という自伝を出してたんだけど、それも販売中止になったよ。

LIME でも、ラッパーは続けられるんでしょ?

 ああ。裁判官にも「(ラッパーの)お仕事は続けるんですか? 辞める選択肢もあると思いますが」と言われたよ。今までドラッグに関することをたくさん歌ってきた。そういう部分が好きなファンがいるのも知ってた。仮に続けるにしても、どんなスタンスでいるべきか。変わらないのか、変えるのか。やっぱりラッパーを辞めるべきか。いろいろ考えたよ。でも、自分にはラップしかない。ラップで社会とつながっていたかった。だから続けることしたよ。

ここな 悩んでたんだね。気になったんだけど、覚醒剤と大麻って何が違うの?

いおり 覚醒剤はアイスとかスピード、大麻はチョコとかハッパって言うんだよね。中学の薬物乱用防止教室で習った。

 オジさんが使ったのは、寝なくても元気でいられる覚醒剤と、リラックスできる大麻の2つ。言い訳にはならないんだけど、仕事と日常生活で嫌なこと、不安になることが多くて、すごくしんどかったんだ。15年前は「シャブが無くても覚醒できる俺のマイク捌き」(「紫煙」より)ってラップしてたけど、結局、生活が捌けなくてシャブに手を出した。

LIME 漢さんはプッシャーやってたの?

 ラップやってると、中学生でもそんな言葉を知ってるのか……。プッシャーは麻薬の売人のことね。確かに、若い頃はそういう世界にいたこともあった。ラップでもそのことを歌ってたしね。〈9SARI GROUP〉という会社を作ってからはやめたけど、買い方は知ってた。それでやってしまった。違法だと知ってたけど、感覚が麻痺してたとしか言いようがない。

ここな 『FSD』に出てたUZIって人も逮捕されたけど、ラッパーはみんなドラッグやってるの? 私とほのはヒップホップ・ダンスをやってて、ラッパーはオシャレだと思ってたのに……。

LIME アーティストは曲作りのために麻薬を使うこともあるのかな。

りんか え、そうなの? ラッパーってコワい……。

 いやいや、やってない人のほうが圧倒的に多いよ。

いおり ラッパーはディスり合うから、負けたのが悔しくて麻薬をやっちゃうのかな?

ほの 確かに、すぐ本音を言っちゃうイメージがある。

 ラッパーはリアルじゃないといけないからね。でも、ヒップホップはディスだけじゃない。ラップ自体は楽しいものだし。ただ、人生を懸けてやる場合、ヒップホップは文字通りの人生ゲームになる。好きなことを仕事にするって難しいんだよ。好きだからこだわってるし、曲げられない。しかも、嘘がつけない。そうすると、ゲームのコマを前に進められない瞬間が出てくるんだ。オジさんはそこで麻薬をやってしまった。

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