日刊サイゾー トップ > 社会  > 終わらない【ワタミ過労死事件】

参院選出馬の陰で……飛び降り自殺から5年「金なら払う」終わらないワタミ過労死事件の今

watamiint.jpgわたなべ美樹(ワタミグループ創業者)公式サイトより

 ワタミ株式会社取締役会長・渡邉美樹氏が、自らのブログで「『ブラック企業』と呼ばれることについて」というタイトルの記事を投稿したのは先月31日。離職率、給与、時間外労働時間、メンタルヘルス率などの数値をもとに「ブラック企業」の謗りに対して反論を行っている。折しもその2日前には、今夏に予定される参議院議員選挙への出馬を表明した渡邉氏。この記事を投稿した裏には、選挙を前に、なんとしても自身のイメージ改善を図りたいという意図が見え隠れする。

 明確な定義は存在しないものの、「ファーストリテイリング」「ウェザーニューズ」「ゼンショー」など、ブラック企業と目される企業は多い。にもかかわらず、ワタミがその代表格とされるのは、5年前に起こった従業員の過労死自殺事件の記憶が尾を引いている。

 2008年6月、横須賀市内のマンションから、26歳の女性が飛び降り自殺をした。飛び降りたのは、ワタミ京急久里浜店の社員であった森美菜さん。同年4月にワタミに入社し、わずか2カ月あまりで飛び降り自殺を図るまでに追い込まれた。遺書は残されていなかったものの、手帳には「体が痛いです。体が辛いです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」という悲痛な文字が綴られていた。

 1カ月の残業時間は140時間。彼女は国が認定する80時間の過労死ラインを大幅に超えて働かなければならなかった。さらに、家に帰れば課題である渡邉美樹氏の執筆した著書の読書感想文を書かねばならず、休日には介護施設などでの“強制的”なボランティアを強いられる。満足に睡眠を取ることもできないまま、ワタミでの2カ月間は過ぎていった。6月頭には母親と電話のやり取りで、しきりに「眠たい」「疲れた」と口にしていたという。そして6月12日、自宅近くのマンションから飛び降りた。肩掛けのバッグに入っていた財布からは、亡くなる数時間前に購入したシャンプーやリンス、そして「会社に行くため」に必要な目覚まし時計のレシートが見つかった。

 日用品を買っていたということは、おそらく、彼女は「自殺をする」という強い意志を持っていたわけではないだろう。もしかしたら、飛び降りながらも、彼女は「自殺」という意識を持っていなかったかもしれない。睡眠不足の朦朧とした意識の中、正常な判断力を奪われた彼女は、マンションの手すりを越えた。彼女の死から4年を経た2012年、労災認定が下され、彼女の死は正式に「過労死」として認定された。

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